非日常感あふれるスーパーカーでゴルフに行ったらどうなるのか⁉ さぞかし気分は上がるだろう、ということで、今回はイタリアの雄、マセラティに松任谷正隆さんが試乗して、その実力をチェック。実際に走ってみるとどんな感じなのだろうか?
編集部(以下、編):ヤッフォーイ‼
松任谷(以下、松):どうしたどうした?
編:やっぱ、こんなクルマだと気分は上がりますよね。
松:若いな。
編:若いですかね?
松:主役はゴルフか? クルマか?
編:どっちもです。もっと言えばここではクルマです。
松:ま、そりゃそうだ……。
編:で、僕が運転でいいんですよね?
松:そうだな、こっちはゴルフに集中するからな……。
編:あ、そう……集中してもねえ。
松:なんだよ、それは。
編:いえ、何でもありません。では出発しますか? クラブは送ってありますよね?
松:一昨日送った。
編:じゃあ大丈夫。行きましょう。さてとさてと。
松:どういうクルマか解説でもするか?
編:いや、スペックなんかはネットですぐにわかるからいいです。それより松任谷さんの印象を聞こうかな。
松:印象?
編:ほら、松任谷さんMC20は世界一美しい、と言っていたでしょ?
松:ああ、そうだったな。
編:このGT2はMC20を研ぎ澄ましたバージョンと言えるでしょ?
松:ま、正確にはその後継のMCプーラを研ぎ澄ましたバージョンかな。
編:このスタイルを、まずはどう思うのかなあって。
松:正直に言えば、真っ先に現行型ポルシェGT3RSを思い浮かべたよ。
編:それは穴だらけだから?
松:まあ、空力を考えると、たぶん現状ではこれがベストなんだろうけど、似たような手法だよね。
編:そうですね。ここから風を入れて、こうやって乱気流を防ぐとか……。
松:でもさあ、そこまでのスピード出すか? アウトバーンもない日本でさあ。
編:あっ、なんだかネガティブ発言!
松:そりゃあ、ゆっくりだって走れるけどさ、欲求不満になるだろ? 踏みたい! でも踏めない……。
編:一瞬なら踏んでもいいんじゃないですか?
松:君、一瞬で満足する? 例えば、ドライバーがぶっ飛べばそれだけでいい?
編:嫌なこと言いますね。例えが全然違うと思います。
松:まあ、それを言い出せば、すべてのクルマがもはや公道ではオーバースペックなんだけどね。
編:そうですよ。過渡特性がポイントなんです。気持ちよさのベクトルね。
松:なんだか生意気なこと言うようになったね。
編:勉強してますからね。
松:あ、そう。じゃあ走ろうぜ。
編:本格的なシートですね。これ、4点式でも3点式でもどっちもいけるやつですか?
松:3点でいいよ。で、どう? 座り心地は?
編:僕にはお尻にスペースが少し余りますかね。もう少しお尻が大きかったらすっぽりって感じかな。でも、これでも充分にホールドはいいと思います。クッションもこの手のクルマとしては似たようなもので、まあ、かなり薄い座布団に座っている感じですよね。
松:やはりレースなんかではお尻の感覚は大事だからね。それを考えるとお尻をリラックスさせるのは危ないんじゃないかね。
編:パワーオンしますね。
松:はいよ。
編:へえ……意外に静かというか、爆音でかかる感じではないんですね。
松:そうだな。それでも普通のクルマよりはでかいけどね。
編:震動もなく、少し肩すかしを食らった感じかな。
松:そう感じるか。では走ろう。まずはデフォルトでもあるGTモードで行こうぜ。
編:はい。走ります。
松:ああ、やっぱりなあ……。
編:ん? やっぱりってなんですか?
松:いや、実を言えばこのあいだランボルギーニ・テメラリオに乗ってね、それがあまりに良くてさ、これが今年一番かな、って思ったんだけど。
編:ふむふむ、それで?
松:走り始めたすぐは、ものすごく硬質な音がしてさ。
編:それはエンジンですか?
松:いや、むしろ足まわりからの硬質音で、まるで電車の金属の車輪がレールの上を滑るような感覚と言ったらいいのかな。
編:それでも良かったんですか?
松:それがスピードを上げるとウソのように消えてさ。コーナーがまるで直線のように走れる訳さ。
編:で?
松:それに比べると、このクルマは足まわりからの感覚もエレガント。もちろん硬いけど、インソールの入った硬さだね。
編:普通ってことですか?
松:MC20もプーラも、まあこれに近いわけだよ。で、コーナーなんかでは結構ロールするわけ。そこがまあ、スーパースポーツとしては若干不安な要素でもあったのさ。ところがこれは……。
編:ふむふむ。
松:まあ、そのうちわかるよ。
編:楽しみです。エンジンやミッションは柔軟ですね。走り始めにギクシャクすることがあまりないです。
松:そうね。MC20の頃は低速で結構ギクシャクがあったよね。
編:高速に乗りますね。合流までは一気に踏みますよ。
松:ウォー。
編:でも、この程度はもはや普通に経験されているでしょ?
松:まあ、そうだな。でもさすがにランクで言えば一番上のクラスの加速感だよな。シートバックに背中が2センチはめり込むぜ。ただ、そのカーブはなだらかだから凶暴さは感じないよね。
編:確かに……。それとやたら安心感がありますね。
松:そこなんだよ。このクルマの一番の魅力はこのスタビリティだと思う。極端な話、手放しでもまっすぐに走ってくれそう。これは高速でも楽だぜ。
編:ハンドルも軽いですしね。
松:あとは適当にスポーツモードとか、コルサモードとか試してみれば?
編:はい。適当にって?
松:俺は眠いからちょっと寝る。高速を降りたら起こして。
編:げっ……。
■質のいい走りで乗りやすいハイパフォーマンス
編:松任谷さん、起きてください。いつもの峠道です。
松:うー、何分くらい寝てた?
編:50分くらいですかね。こんなリクライニングもしないバケットシートでよく寝られますね?
松:特技なんだよ。立ったままでも寝られるぜ。
編:ここからはどうしたらいいですか? 代わりますか?
松:いや、このクルマのすごいところを見たいなら、このまま運転をしてごらん。
編:わかりました。じゃあ登っていきますね。
松:高速コーナーが続くからね。ヤワなクルマはすぐに足を出すぜ。
編:わかりました。では行きます。
松:あーまだ眠い。
編:……。
松:どう?
編:……。
松:どうなんだよ。
編:いや、すごいです。言葉になりません。
松:それじゃあまずいだろ。言葉にしなさいよ。
編:俺ってこんなに運転上手かったかなあって。
松:そう思わせてくれるだけでも価値はあるよな。細かく言っていけば、エンジン音はそんなに線が太いわけでもないし歌う感じでもない。軽々と回る訳でもない。どこかにピークがある訳でもないから感動させるっていう類いのものではない。そうなるとハンドリングの方に必然的に目が行くよね。
編:これ、ロールはしていますよね?
松:ごく軽微にね。そこがプーラなんかと違う。似ているんだけど決定的にどこかが違うよね。それが君の言う過渡特性なんだと思うよ。
編:おお、俺っていいこと言いますよね。
松:今年一番が入れ替わったと思っているよ。
編:テメラリオじゃなく?
松:あちらはロールをまったくしない感じだったんだよね。絶大なる安心感でさ。さっきも言ったとおりコーナーが直線のように感じる。いつもよりずっと速いスピードで安心して飛び込める。それに比べるとこちらはロールはするけれどスタビリティは上だと思う。だからハンドルを切り込んでいった時の気持ちよさが、そのセッティングの良さとも相まって心に響くんだよね。
編:どっちが速いんでしょうかね?
松:うーん、わからん。でも僕が運転するようなレベルだと、たぶん同じだと思うよ。最終的には恐怖には勝てないから。
編:ああ、松任谷さん、いつもバンカーに入れますもんね。バンカーを避けようとしているのにね。
松:その恐怖とは意味が違うの!
MASERATI GT2 Stradale
◆全長全幅全高:4669×1965×1222mm ◆車両重量:1475kg ◆エンジン形式:V8DOHCツインターボ ◆総排気量:2992cc ◆最高出力:471kW(640ps)/7500rpm ◆最大トルク:720N・m(73.4kg-m)/3000〜5500rpm ◆ミッション:8速AT ◆WLTCモード燃費:−km/ℓ ◆定員:2人 ◆価格:4394万円
文・写真/松任谷正隆
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