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「正しいフィットで足が疲れない」カジュアルなゴルフシューズでも「BOA®」が搭載された理由

秋の新作シューズであるアディダス『STAN SMITH BOA GOLF(スタンスミス ボア ゴルフ)』やニューバランス『574 V4 SL BOA』にはそのモデル名の通り、「BOA®フィットシステム」が搭載されている。定番スニーカーのデザインを継承したカジュアルなゴルフシューズに「BOA®」が搭載された理由とは何なのか。シューズフィッティングの専門家に話を聞いてみた。

所属 ゴルフライター
田辺直喜 / Naoki Tanabe

配信日時:2025年11月19日 12時00分

「BOA®フィットシステム」は普段履きや練習で活用するカジュアルラインのゴルフシューズにも大きなメリットをもたらしてくれる
「BOA®フィットシステム」は普段履きや練習で活用するカジュアルラインのゴルフシューズにも大きなメリットをもたらしてくれる

さまざまなスポーツで活用される「BOA®」がカジュアルシューズに採用


今やゴルフシューズに当たり前のように搭載されるようになった「BOA®」。ラウンドに行けば、ゴルフ場で「ダイヤル」をカチカチと回す音を必ずと言っていいほど耳にする。
 
「BOA®」は正式には「BOA®フィットシステム」という。靴ヒモの代わりに独自に設計した「ダイヤル」や「レース(※金属から化学繊維までさまざまなタイプがある)」「レースガイド」を搭載し、素早く簡単にシューズのフィット感を調整することができる。
 
元々はスノーボードブーツ用のシステムとして2001年に誕生した「BOA®フィットシステム」だが、現在はゴルフを始め、さまざまなスポーツ、分野のシューズで活用されている。近年はスキーブーツに採用され、従来品よりも足の痛みがなく、パフォーマンスが上がるとして大きな変革をもたらした。
 
ゴルフ界では2006年のフットジョイを皮切りに多くのメーカーが「BOA®フィットシステム」を採用。ゴルフショップでは「『BOA®』が付いていないシューズは売れにくい」と言われるほど、ゴルファーの間で定番化している。
 
最近では、アディダス『STAN SMITH BOA GOLF(スタンスミス ボア ゴルフ)』やニューバランス『574 V4 SL BOA』など、定番スニーカーのデザインを継承したカジュアルラインのゴルフシューズにも「BOA®フィットシステム」が搭載されるようになった。

アディダスの新作シューズ『STAN SMITH BOA』。1973年にテニスシューズとして発売され、爆発的な人気を誇った『STAN SMITH』のデザインを継承しながら、素材やアウトソールを改良することでデザインと性能を両立したゴルフシューズに仕上がっている。今作から「BOA®フィットシステム」が採用された

アディダスの新作シューズ『STAN SMITH BOA』。1973年にテニスシューズとして発売され、爆発的な人気を誇った『STAN SMITH』のデザインを継承しながら、素材やアウトソールを改良することでデザインと性能を両立したゴルフシューズに仕上がっている。今作から「BOA®フィットシステム」が採用された

ニューバランスの新作シューズ『574 V4 SL BOA』。大きなNロゴが象徴的な同社の定番スニーカー『574』のデザインを残したまま、ゴルフ用に開発したラスト(足型)やインソール、アウトソール、「BOA®フィットシステム」を搭載することで性能を高めている。女子プロゴルファーの有村智恵が愛用するなど、高く評価されている

ニューバランスの新作シューズ『574 V4 SL BOA』。大きなNロゴが象徴的な同社の定番スニーカー『574』のデザインを残したまま、ゴルフ用に開発したラスト(足型)やインソール、アウトソール、「BOA®フィットシステム」を搭載することで性能を高めている。女子プロゴルファーの有村智恵が愛用するなど、高く評価されている

ここで疑問なのは、運動時のパフォーマンスを上げると言われる「BOA®フィットシステム」をカジュアルシューズに搭載する理由は何なのか、ということだ。今回はスポーツシューフィッターの神谷幸宏と「BOA®フィットシステム」に精通するBOA TECHNOLOGY JAPAN INC.のマーケティングマネージャー・渡辺信吾氏にその理由について聞いてみた。

写真左はスイングコーチ件スポーツシューフィッターの神谷幸宏、右はBOA TECHNOLOGY JAPAN INC.のマーケティングマネージャー渡辺信吾氏

写真左はスイングコーチ件スポーツシューフィッターの神谷幸宏、右はBOA TECHNOLOGY JAPAN INC.のマーケティングマネージャー渡辺信吾氏

どんなシューズも「正しいフィット」で履くことが大切


神谷 ツアープロでも「BOA®」を搭載したシューズを使う選手が増えました。私もさまざまなシューズを試しますが、「BOA®」の搭載されたものは、均一かつちょうど良い締まり具合で、長く履いても緩みにくく、性能の高さを感じます
 
渡辺 「ダイヤル」や「レース」は日々進化していて、より足当たりの良いものになっています。アディダスの『STAN SMITH BOA GOLF』には『TX6』という化学繊維のレースが採用されています。再生ポリエステルやポリエチレンの繊維で構成され、柔軟性、軽量性、強度に優れています。通常の靴ヒモよりも引っ張り強度が高く、水を含みにくく、泥も付着しにくくなっています。
 
神谷 「ダイヤル」自体も軽量化されて、どんどん性能が良くなっていますよね。「BOA®」はレースとレースガイドの摩擦係数が低く、さらにクロスポイントを減らせることでシステム全体での摩擦係数が低くなることが特徴で、履き続ける内に足の甲にかかる圧が分散して均一になります。足の形に合わせてシューズがフィットする感覚で、すごく気持ちいいんです。

靴ヒモが交差する位置が「クロスポイント」。少ないほど、摩擦係数が小さくなる

靴ヒモが交差する位置が「クロスポイント」。少ないほど、摩擦係数が小さくなる

渡辺 「BOA®フィットシステム」では、最初「ダイヤル」の近くが締まって圧がかかりますが、次第に緩い方に圧が分散していく構造になっています。おっしゃる通り足の形に合ったフィット感を得ることができるのです。中足部からカカトにかけて、シューズのヒールポケットに押し付けるように圧がかかりますので、足首をホールドしながら、指がしっかり動いてくれます。
 
神谷 ゴルフのスイングではツマ先側で地面を蹴りますので、足指がフリーなのは絶対有利ですね。スイング中の足圧を計測できる「スイングカタリスト」でデータを取ると、合わないシューズを履いている場合は地面に正しく圧をかけることができません。シューズの中で足がズレることで痛みが出たり、ひどい場合はケガにつながる危険もあります。

カカトから中足部にかけてシューズがしっかりフィットすることで足指が動く。ゴルフのスイングでは地面をしっかり蹴って、パワーを生むことができるようになる
足にフィットするシューズならタテ、ヨコ、回転とあらゆる「フォース」がしっかり出てくれる
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カカトから中足部にかけてシューズがしっかりフィットすることで足指が動く。ゴルフのスイングでは地面をしっかり蹴って、パワーを生むことができるようになる

渡辺 シューズを正しいフィットで履くのは、パフォーマンスを出すための大前提。「BOA®フィットシステム」は足が本来持っているパフォーマンスを出すために非常に有効です。最近では足の甲を覆うようなラップ構造によって、足とシューズが一体化するようなものに進化しています。

「BOA®」の進化について教えてくれた渡辺氏。ただ「ダイヤル」などのパーツを提供するのではなく、メーカー各社とのコラボレーションで日々高性能なシューズ作りに尽力している

「BOA®」の進化について教えてくれた渡辺氏。ただ「ダイヤル」などのパーツを提供するのではなく、メーカー各社とのコラボレーションで日々高性能なシューズ作りに尽力している

神谷 シューズを変えるだけで、スイング中の足圧のかけ方が矯正された例もあります。シューズのフィットを考えることは本当に大切です。ゴルフにおいてはスイングそのものを変える可能性がありますよ。

日常で履くカジュアルシューズこそフィット感を重視したい


神谷 今回STAN SMITH BOA GOLFのようなカジュアルラインのシューズに「BOA®」が搭載されたのはすごく良いことです。シューズがしっかり足にフィットすることで、歩行動作がスムーズになりますし、足も疲れにくくなるからです。合わないシューズを履いているとちょっとした段差でつまずいたりしますし、普段使いするモノだからこそ、正しく足にフィットすることを大事にしてほしいです。
 
渡辺 デザイン性を残しながら、パフォーマンスを上げるという意味で「BOA®」が役に立っていますね。足へのフィット感が高まることはもちろん状況に応じて締め付け具合を変えることもできますので、さまざまなシーンで活用できるはずです。
 
神谷 STAN SMITH BOA GOLFはしっかりした素材が使われていて、適度な重みがあるので履いていて安心感があります。シュータンの下に「BOA®」を隠して、デザイン性を重視しているのも好印象です。そして、シュータン部分がしっかりしているので、「BOA®」を少し締めるだけでフィットして、足がズレません。アウトソールがフラットで、地面が感じやすいこともメリットと言えるでしょう。普段履きしつつ、練習場でそのままボールを打てるのはかなり魅力的です。

見た目はオシャレなスニーカーだが、ゴルフシューズに必要な性能をしっかり備えた『STAN SMITH BOA』
シュータンを持ち上げると中には「BOA®」が隠れている
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見た目はオシャレなスニーカーだが、ゴルフシューズに必要な性能をしっかり備えた『STAN SMITH BOA』

渡辺 「BOA®」では製品を提供するだけでなく、開発チーム同士でやり取りを繰り返して、シューズの性能を追求します。アディダスやニューバランスなど、メーカーの方がそのシューズで目指す性能がどんなもので、それを達成するには「BOA®」をどう活用するべきなのか。それぞれの知見を合わせることで性能の高いシューズが完成するわけです。
 
神谷 ニューバランスの『574 V4 SL BOA』もデザインを損なわずにしっかりとゴルフシューズらしい性能を備えていますよね。カカト部分に安定感があって、自分の足がしっかりはまる感覚があります。インソールやアッパーが柔らかくフィットしてくれて、足当たりが抜群に良いです。アウトソールのグリップ力も高いですし、これなら普段履きだけでなく、ラウンドでも使えそうです。
 

ニューバランスの『574 V4 SL BOA』はラウンドでも使えると高評価。「BOA®」の存在がシューズのパフォーマンスをさらに高めている

ニューバランスの『574 V4 SL BOA』はラウンドでも使えると高評価。「BOA®」の存在がシューズのパフォーマンスをさらに高めている

渡辺 「BOA®」があることで、足にフィットしつつも適度な「遊び」が生まれます。シューズが足に追随するように動いてくれて、フリーに動かせるような状態です。カジュアルなシューズでも快適性が高まり、運動時のパフォーマンスが上がってくれます。
 
神谷 足をガチガチに固めるのとは違った他にはない一体感が「BOA®」にはあります。好みの締め具合に調整できて、脱着も容易です。普段履きするカジュアルなシューズであってもこれは大きなメリット。ぜひ多くの人に「BOA®」の魅力を体感してほしいですね。

シューズ談義が尽きない二人。シューズのカテゴリに関係なく、正しいフィットで履くために「BOA®」は欠かせない存在だ

シューズ談義が尽きない二人。シューズのカテゴリに関係なく、正しいフィットで履くために「BOA®」は欠かせない存在だ

取材協力/越谷ゴルフリンクスプライベートスタジオ 撮影/田中宏幸 構成/田辺直喜


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