今季「AIG女子オープン」(全英)と国内3勝でメルセデス・ランキングのトップを独走する桑木志帆。惜しくも先週は申ジエにプレーオフで敗れたが、そのウェッジ打痕も興味深い。普段から『GCクワッド』で打点のズレをシビアに見ながらフィッティングとレッスンを行う、ティーチングプロの長谷川ケント氏に、女子プロのウェッジ打痕に学べる点を聞いた。
前回のアイアンの打痕調査では「打痕のバラつきは左右のブレ幅よりもタテ距離に影響が出る」という実態が浮き彫りになったが、ウェッジになるとその打痕の意味合いは「アイアンよりも深みが増して、人それぞれのアプローチスタイルが違うので、一概に真ん中打点が正解とは言えません」と長谷川。
そこで女子プロたちのウェッジ打痕を改めて見てみると、どちらかと言えば「ヒール寄り」に集まる選手と、「トウ寄り」に集まる選手で大きく二分されていることが判明した。そして、桑木の『Bitting Spin2』ウェッジを見ると52度がヒール下で、58度は真ん中ややトウ寄りと、番手によって打痕が違っていた。
■低いスピン球は「ヒール下」、飛び過ぎない死に球は「トウ下」
同じLWで他の選手でも、西村優菜は「ヒール下」寄りに打痕があるのに対し、青木瀬令奈や安田祐香ら多くの選手は真ん中より「トウ下」寄りに斜めの打痕が残っていた。この違いについて長谷川氏は、「アドレス時の構え方と、打ちたい球筋によって打点は分かれます」と語る。
「ヒール下に打痕ができる人は、ハンドファーストを強めにして上から打ち込み、低い球でスピンをキュッと入れて距離感を合わせにいくタイプでしょうね。フェースターンを抑えてライン出しをするイメージです」。一方で、かなり多くの選手に見られた「トウ下」の打痕。ここにはアプローチスタイルが現れているという。
「トウ側で捉えるのは、球の飛び過ぎを防ぎたいとき、いわゆる『死に球』を打ちたいときにすごく使いやすいんです。スピン量も安定しますし。また、ランニングアプローチの際にも少しフェースを閉じてトウ側で打つと、余計なスピンが入りすぎず、距離感をイメージ通りに合わせやすくなります。桑木選手も58度は真ん中よりトウ寄りになっていますが、52度はアイアンと同じややヒール下。58°はフェースを開いて死に球を打つケースが増えるのかもしれませんね」
■「斜め」が無いのはアマが真似すべきシンプル派
「トウ側」打痕の山下美夢有や青木瀬令奈のウェッジには「フェース中央からトウ上にかけて斜めに走る傷」が見られるのに対し、安田祐香や稲垣那奈子のウェッジにはその傷があまり見られない。
「斜めにキズがつく選手は、フェースを開いて柔らかく拾う打ち方をしている証拠ですね。一方で、斜めのキズが無い選手は、フェースをスクエアに構えて開閉を抑えてピッチ&ランでシンプルに寄せるタイプでしょう。これは、フェースの向きが変わらず斜めキズがつきづらい。アマチュアの方にとって真似しやすいのはこちらのシンプルな打ち方です」
また、多くの女子プロがスコアラインの3〜5本目の低い位置で捕らえている中、金澤志奈や吉田姉妹の一部クラブには、5本目より上の「高めの位置」に打痕が残るケースも見られた。
■スコアライン「5本目より上の打痕」の正体
「これはアプローチというよりも、フルショット時の打痕でしょうね。ハンドファーストを強めにして上からしっかり打ち込み、球を上げずに強い球でピンを狙っている証拠です。フェースを開かずにスクエアのまま上から打ち込むため、斜めのキズがつかず、高めの位置に真っすぐな打痕が残ります」
アプローチでスピン量や球筋をコントロールしたいときは、まず自分が「どんな球を打ちたいのか」を整理し、クラブのどこで捕らえているかをチェックしてみると、アプローチの引き出しが一気に広がりそうだ。
■解説:長谷川ケント
ティーチングプロ。東京・市ヶ谷で「4plus Fitting Labo & Golf Salon」のフィッターも務める。動作解析「ギアーズ」や弾道計測器「トラックマン」、「GC Quad」を駆使して、スイングとギアの両面から悩めるゴルファーをサポートしている
