PGAツアー
米国男子
アーノルド・パーマー招待
「圧巻の優勝」と「惜敗の悲哀」【舩越園子コラム】
大会初の連覇を達成したスコッティ・シェフラーと、最後のバーディパットがカップのフチを回ったウィンダム・クラーク。その対比を振り返る。
配信日時:配信日時: 2024年3月18日 03時00分
Round 4 | ||
---|---|---|
順位 | Sc | PLAYER |
1 | -15 | スコッティ・シェフラー |
2 | -10 | ウィンダム・クラーク |
3 | -9 | シェーン・ローリー |
4 | -7 | ラッセル・ヘンリー |
4 | -7 | ウィル・ザラトリス |
6 | -5 | ブレンドン・トッド |
6 | -5 | サヒス・ティーガラ |
8 | -4 | アンドリュー・パットナム |
8 | -4 | マックス・ホーマ |
8 | -4 | アン・ビョンハン |
PGAツアーのフラッグシップ大会であり、賞金総額2500万ドルの「ザ・プレーヤーズ選手権」の最終日は、“第5のメジャー”の呼称にふさわしいエキサイティングな展開になった。
日本のエース、松山英樹はスコアを5つ伸ばしてチャージをかけたが、残念ながら実質的な優勝争いには絡めず、トータル15アンダーで6位タイに終わった。そしてサンデーアフタヌーンの終盤を沸かせたのは、いずれも世界ランキングトップ10につけている4名だった。
トータル20アンダーで先にホールアウトした世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーを、ブライアン・ハーマン、ザンダー・シャウフェレ、ウインダム・クラーク(いずれも米国)が追撃する形になった。3人とも72ホール目をトータル19アンダーで迎えたが、誰一人、バーディーパットを沈めることができず、シェフラーの勝利が決まった。
今週のシェフラーはショットもパットも冴えていた。とりわけ、3パット無し記録を172ホール継続している彼のパットには、自信と安定感がみなぎっていた。それでも最終日は17番でも18番でもバーディーチャンスを決めきれずパーどまりになったことは、大会史上初の連覇を目前にして、プレッシャーを感じたせいだろうと想像された。だが、シェフラーいわく、「今週はフィジカル(肉体)の戦いだった」という。
2日目のラウンド中、突然、首痛を発症した。試合進行中にロープ際でセラピストによる治療を受けて、何とかしのいだ。「土曜日の朝は不思議なことに首の状態がずっと良くなっていた」と振り返ったシェフラー。3日目は、単独首位に浮上したシャウフェレから5打差の6位タイにつけた。
そして最終日のチャージは、4番のチップインイーグルから始まった。その後に6つのバーディーを奪って勝利へと邁進。史上3人目となる最大差(5打)からの逆転を飾った。「フロントナインでスコアを大きく伸ばせばチャンスはあると思い、ベストを尽くした。その結果、優勝できた今の気持ちは最高だ」。
大会史上初の連覇、そして先週の「アーノルド・パーマー招待」に続く2週連続優勝を達成したシェフラーには、世界ランキングでもフェデックスカップ・ランキングでも堂々の1位を維持している王者の貫禄がみなぎっていた。
このようにシェフラーの勝利がまぶしく輝いていた一方で、悔しい敗北を喫したクラークの物語には悲哀が漂った。
優勝すれば、クラークにとってそれは素晴らしい物語になるはずだった。2023年「ウェルズ・ファーゴ選手権」を制し、翌月には海外メジャー「全米オープン」を制した。今季はシグネチャー・イベントに格上げされた「AT&Tペブルビーチ・プロアマで勝利しており、ビッグトーナメントに強いことは証明されていた。
しかし、シェフラーとのプレーオフに持ち込むためには絶対に沈めることが必要だった72ホール目のバーディーパットは、カップフチをぐるりと回り、無情にもグリーン上にとどまった。その瞬間、クラークの優勝は消えてしまった。
初出場だった19年大会はスコアカードの誤記が指摘され、過少申告による失格を食らって涙を飲んだ。5度目の出場となった今年は首位タイの好発進を切り、2日目も首位タイをキープ。3日目にはアイランドグリーンが名物の17番パー3でティショットを池に落としたが、次打はドロップエリアを使わずにティイングエリアから打ち直し、見事、2メートルにつけてナイスボギーセーブ。「明日、優勝したら、このショットが勝利の予兆だったと言えるだろう」と、自信さえ垣間見せていた。
そんなクラークの熱い想いは、勝利の女神にはわずかに届かなかったが、ゴルフファンの心には十分届いていたのではないだろうか。シェフラーの圧巻の優勝とクラークの惜敗の悲哀。その対比が戦いの世界のし烈さを物語り、同時に、ゴルフの面白さを伝えてくれたように思う。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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