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「フォーシーム」で池ポチャを回避!? 宮本勝昌が目指す究極の球筋

国内シニアツアーの第3戦「すまいーだカップ シニアゴルフトーナメント」は、宮本勝昌が今季初勝利でシニアツアー7勝目を挙げた。

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2025年6月1日 11時30分

<すまいーだカップ 最終日◇31日◇イーストウッドカントリークラブ(栃木県)◇6876ヤード・パー72>

国内シニアツアーの第3戦は、宮本勝昌が今季初勝利でシニアツアー7勝目を挙げた。成績だけ見れば、トータル14アンダーで後続に4打差をつける圧勝。だが、春先から続くショットの不調と朝から吹き荒れる強風に苦しみ、いつ逆転されてもおかしくない展開だった。

【連続写真】強弾道で曲がりが少ない! 宮本勝昌のフォーシームスイング

2打差のトップで迎えた最終日、宮本がアイアン型ユーティリティで放った朝イチのティショットは、まさかのダフリ。力なく飛んでいったボールはフェアウェイの入り口付近のラフに止まった。残り230ヤードのセカンドは7番アイアンでレイアップ。3オン2パットのボギー発進となった。

「1番のティショットはちょっと気持ち悪かったんです。230ヤード飛ばしたいんですけど、3Wだと大きいし、3Uだと行かない。雨が降ってランが出ないことも分かっているので、3Uでちょっと右を向いて強い球が出たらいいなといろいろ考えていた」。基本は220ヤードの3Uを握ったことで生じた力み。2位のプラヤド・マークセン(タイ)との差はわずか1打に縮まる。

しかし、「(天候が悪くて)嫌だなと思っているときは、他の選手も嫌だなと思ってやっている。3アンダー、4アンダーで回るのは容易ではないと分かっていた。まずは自分が崩さないというのが大事だと思っていました」と、宮本にまったく焦りはなかった。2番以降は危なげなくパーを積み重ねていく。

3番でマークセンが1つ落として、再び2打差に。勝負の分かれ目は7番パー3で訪れた。グリーン手前から左サイドにかけて池が伸びるホールで、最終日のピン位置は手前から21ヤード、左から7ヤード。風は右からのアゲインストだった。オナーの宮本は安全にグリーンの右サイドに打ち出し、ピンの右8メートルにオン。しかし、同じ最終組で回っていたマークセンと堺谷和将のティショットは風に流され、ともにグリーンの手前で水しぶきを上げた。

途中からはプラヤド・マークセンとの一騎打ちとなった(PGA提供)

途中からはプラヤド・マークセンとの一騎打ちとなった(PGA提供)

追う2人が攻めた結果に見えたが、宮本は「2人ともセーフティにいっています」と振り返る。「風の向きがやっぱり動くんですよね。2時のアゲインストが1時になっていました」。プロたちはホールを俯瞰して見たときに、時計の文字盤で風向きを表現する。フォローなら6時、アゲインストなら12時というように。つまり、2時は横風に近いアゲインストで、1時はアゲインストに近い横からの風となる。

宮本と池に入れた2人を分けたのは、球筋と風向き。「僕が真っすぐで、2人ともドローっぽかった。だから余計に左の遠いところに行っちゃった。僕も見ていてマークセンの池にはビックリしたし、堺谷さんの池はもっとビックリした。あんなに安全なラインに打っていたのに、僕が打ったときよりもアゲインストがきつくなっていた」と分析する。ここで宮本はパー、マークセンはボギー、堺谷はダブルボギー。まさに勝負の風向きが変わった瞬間でもあった。

一日を通して、思い通りにならないショットと、向きを変える強風に手を焼きながらも、「グリーンオーバーも含めて上には行かないように」コースマネジメントを徹底。下りの難しいパットを残さなかったことも勝因の1つだろう。結局、この日のボギーは1番ホールの1つだけ。6番と13番では2メートル強のパーパットを沈めてしのぎ、終盤の15番、16番の連続バーディで後続を突き放して、そのまま逃げ切った。

ショットに苦しみながらも、奥に行かないようにマネジメントを徹底した(PGA提供)

ショットに苦しみながらも、奥に行かないようにマネジメントを徹底した(PGA提供)

そんな宮本のプレーを見ていて気付いたのは、右から左に曲がるドローボールを多用していたこと。宮本がプロデビュー時から師事する芹澤信雄の教えは、『チーピンは出世の妨げ』。左へのミスは大ケガにつながる。飛ばなくても左へのミスが少ないフェードボールがチームセリザワの基本。兄弟子の藤田寛之も宮本も、左から右に曲がるフェードボールで多く勝ち星を重ねてきたのに、だ。

ドローボールについて宮本は、「きょうは右からの風に対してとか、左にリスクがあるところに対してフェードでボールをぶつけていく意識がまったく出ないので、素直に右を向いてドローになっていましたね」と意図を説明する。また、最近では曲がり幅のイメージも変わってきたという。

「昔みたいにシュート、スライダーではないんですよ。解説陣がフォーシームかツーシームか分からないくらいの球で僕はいいと思っていて、ゴルフもそこを目指している」。これは野球の変化球の例えで、右投手が投じたシュートは右に大きく曲がるボールで、スライダーは左に大きく変化するボールとなる。それに対して、フォーシームは真っすぐ、ツーシームは直球に近いスピードで小さく右に曲がる球。つまり、曲がり幅のイメージが、昔よりも薄くなっていると宮本は言いたいのだ。

「基本はフォーシームで真っすぐを打ちたいんだけど、調子がいいときはツーシームっぽくちょっとフェードが強くなる。多少カットボールっぽく(小さく)左に行っても、いいタテ回転が入っていればどっちでもいいと思っている」

7番パー3では、強い弾道の真っすぐ(フォーシーム)を投じたことで、右からのアゲインストに大きく流されることなく池ポチャを回避した。右に曲がるツーシーム、左に曲がるカットボールも直球に近いスピードが出る変化球。それを目指して宮本は練習に取り組んでいる。

次戦はディフェンディングチャンピオンとして迎える2週後の「スターツシニア」(6月13~15日、茨城県・スターツ笠間ゴルフクラブ)。「やっぱり一番いい薬が優勝。またあしたからの練習の励みになりますし、次の試合こそいい状態で迎えられるように、モチベーションがさらに高まります」。この勝利をカンフル剤に、“究極の球筋”を完成に近づけていく。

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