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キャディからの圧とリーダーボードの勘違い 櫻井心那が涙の2年ぶりVを手繰り寄せたワケ

櫻井心那が涙の2年ぶり優勝。それを支えたキャディは有名女子プロゴルファーだ。

所属 ライター
田中宏治 / Koji Tanaka

配信日時:2025年8月24日 18時58分

吉田弓美子(右)に支えられ、櫻井心那が涙の優勝。きっかけは冗談からだった
吉田弓美子(右)に支えられ、櫻井心那が涙の優勝。きっかけは冗談からだった (撮影:上山敬太)

<CAT Ladies 最終日◇24日◇大箱根カントリークラブ(神奈川県)◇6652ヤード・パー72>

初日から首位を走ってきた櫻井心那が、「72」とスコアをまとめ、トータル9アンダーで逃げ切り優勝を果たした。レギュラーツアーフル参戦1年目の2023年にいきなり4勝と大ブレーク。その後は勝利がなく、今大会が2年ぶりの復活の5勝目となった。

【写真】優勝直後に泣く櫻井心那と笑う吉田弓美子

「泣くつもりはなかったのに、涙があふれてきました。初優勝でも泣かなかったのに。恥ずかしいから見たくないです(笑)。うれし涙には違いないんですけど、何の涙か分からないですね」。喜び、緊張からの解放、周囲の期待に応えられた安心感、苦しい状況を乗り越えた達成感…。優勝が決まった直後の涙には、さまざまな思いが入り混じっていた。

試合終盤には、トータル8アンダーの首位に6人が並ぶ大混戦となった。4人はすでにホールアウトしており、結果は最終組の18番パー5のプレー次第。木戸愛がパーで8アンダーグループを抜け出せなかったのに対し、櫻井はグリーン奥のバンカーからの3打目を50センチに寄せてバーディを奪った。

キャディを務めたのは女子プロゴルファーの先輩・吉田弓美子。17番あたりからはっぱをかけられた。「弓美子さんに『早く帰りたいから分かってるよね』って圧をかけられていたので、決めてやろうという気持ちで18番に臨めました」。先輩が背中を強く押してくれたことで、最後まで攻めの姿勢が貫くことができた。

優勝争いのプレッシャーを感じていたが、焦りはなかった。「追い上げてきている選手はいたけど、上位はあまり伸びていなかったので、後半は11アンダーまで行けば勝てるなという気持ちでプレーしていました」。

ただ、これではつじつまが合わないことがある。終盤の6ホールで6つスコアを落とし、優勝争いからは脱落したものの、一時トータル12アンダーまでスコアを伸ばしていた入谷響の存在が、すっかり抜け落ちているのだ。

優勝会見でこの点を問われると、「12番でボードを見た時にいきなり12アンダーになっていた。ちょっと数字が曲がっていたし、ボランティアさんが間違えたんだと思ってました。次に見た時は10アンダーだったのでやっぱり間違いだったんだなって。本当だったというのは今、知りました」と明かす。

リーダーボードをそのまま受け止めていたら、どうなっていたのか? プレッシャーが増す、焦りを生むなど、少なくとも精神面で何らかの変化があったはず。この勘違いも、勝敗を分けるポイントのひとつだったと言っていいだろう。

4勝を挙げた23年を、「あの時は何も考えなくてもうまくいっていました。失敗するイメージもなくてイケイケでしたね」と振り返る。一方、苦しんだ昨年は「何をすれば成長できるのか、いっぱい悩んだし、いっぱい考えました。いろんなことを試す時間だったんだと思います」と思い返す。それらすべてを乗り越えてつかんだ大きな1勝。さらなる飛躍を遂げた数年後に振り返った時、その意味はさらに大きなものになっているはずだ。(文・田中宏治)

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