<ニチレイレディス 最終日◇21日◇袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コース(千葉県)◇6590ヤード・パー72>
イ・ミニョン(韓国)、吉﨑マーナと史上最長2時間6分、最多7ホールにわたるプレーオフでミニョンに惜敗した大出瑞月の表情は、どこか晴れやかだった。「ビックリ。長かったですね。体の疲労はマックス。もう今すぐ寝たい」。大出節で振り返った激闘は、最後まで見せ場たっぷりだった。
11位から出た最終日は7バーディ・ボギーなしの「65」。自己ベストスコアタイの猛チャージで優勝争いに加わった。18番パー5で行われたプレーオフでは、2オンを狙いながらチャンスにつけ続けるミニョンに対し、飛距離が出ない大出は一貫して3打目勝負。電光掲示板脇のラフから寄せたり、残り114ヤードから8番アイアンでバーディを奪ったりと、しぶとく粘る勝負強さでくらいついた。
渋野日向子の愛称“シブコ”の名付け親として知られる28歳。QTランク11位で迎えた今季は、4月「KKT杯バンテリンレディス」から6試合連続予選落ちを経験した。「めっちゃ悩んでいました」。そんな時に頼ったのは、同じくピンとクラブ契約を結ぶ先輩・鈴木愛。相談すると、スマホ画面いっぱいの長文で返事をくれた。
距離を把握しているのか、マネジメントが本当に適切なのか、打ちたい球で打ちたい場所にアプローチができているのか、アドレスの向きは合っているのか―。「感覚派なところはあまり変わらないけれど、さすがにちょっと、頭を使って練習をしています」。
気になることがあれば、練習ラウンドで鈴木の組に入るようにする。「見て盗めるものは盗んで、聞けたら聞きます。最近は心配してくれているのか、『いま、めっちゃ右向いてたよ』とか愛ちゃんから言ってくれる」とうれしそうに笑う。鈴木だけでなく、ピンの先輩・一ノ瀬優希は大出の“メンタルコーチ”だ。
最近悩んでいたパッティングもピンに頼った。今週から新パターを投入。『PLD』シリーズの削り出しで、ヘッドはこれまで大出が使用してきた丸い穴が開いたデザインが特徴的な『2023 タインG』を採用。やわらかい樹脂のような「しっとりマイルドさ」を求めて、アルミインサートを組み合わせた。ツアー担当者によれば、「大出選手のためだけに、新たにCADから設計した完全特注品」だという。
「めっちゃいい! となって試合に入りました。初日は『バコバコ入るものでもないか…』と思ったけれど、この2日間は入ってくれた」と大活躍。正規ラウンドでもプレーオフでも、勝負どころの絶妙な距離を決め続けることができた。
初優勝にはあと一歩届かず、「最後に外しちゃったので0点(笑)」とおどけた。それでもツアーの歴史に刻まれた激闘の裏には、尊敬する先輩の存在と、信頼を寄せるクラブがあった。(文・笠井あかり)
