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“バケハの陵”が83試合目で涙の初優勝 薄氷の1打差逃げ切りに「勝手に涙が出ました」

29歳の勝俣陵が念願のツアー初優勝をつかみとった。

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2025年9月28日 19時00分

悲願の初優勝を挙げた勝俣陵
悲願の初優勝を挙げた勝俣陵 (撮影:ALBA)

<パナソニックオープン 最終日◇28日◇泉ヶ丘カントリークラブ(大阪府)◇6993ヤード・パー71>

ゴルフの神様はすんなりと勝俣陵を初Vのゴールに飛び込ませてくれなかった。14番パー4。残り40ヤードの2打目を直接カップに沈めた。すでにホールアウトしていたクラブハウスリーダーの小木曽喬との差は、一気に3打開いた。だが、予想外の“ボーナス”に、心の中にさざ波が立った。

【写真】4年前には石川遼のキャディも務めました

「イーグルで勝てるとは正直思ってはいなかったけど、ちょっと安心してしまった部分があった。それが、そのあとの2ホール連続の3パットになったと思う。あのときはかなりしんどかったです。最後の4ホールはめちゃくちゃ緊張しました」

15番はピン横7メートルにパーオンしたが、バーディパットを打ち切れなかった。1メートルを外してボギー。続くパー3の16番は同じような距離の返しのパーパットがカップ左を抜けた。痛恨の2連続ボギー。さざ波がしぶきをあげる最後の試練だった。

それでも、17番は2パットのパーでイヤな流れを断ち切り、18番もパーセーブ。「最後はカッコいいガッツポーズをしようと思っていたけど、頭が真っ白になってよく覚えていないんです…。僕、ガッツポーズしました? してないんですか」。

イメージしていた初Vの演出には失敗したが、急きょ応援に駆け付けた妻・あやかさんと2023年10月に生まれた第一子の長女が見守るなか、一家の大黒柱としての面目を保った。

日大4年時の2017年12月にプロ転向して9年目。20年「日本オープン」のツアーデビューから83試合目で念願の初優勝を果たした。中2の冬に両ひざの故障で熱中していた野球をあきらめ、父の勧めでクラブを初めて握った。「土日は一日1500球は打っていた。自分で言うのもなんだけど、かなり努力しました」。

中3に上がる前の初ラウンドは「111」だった。100切りは「多分4ラウンド目くらい」。しかも、90台を飛び越える「88」だった。高校ゴルフ界の強豪、埼玉栄では3年時の「関東高校選手権」で個人・団体の2冠に輝いた。

プロ転向当初はなかなか結果を出せなかった。だが、4年ほど前から日大の大先輩で、ツアー通算31勝の片山晋呉にオフの練習に誘ってもらうようになって、めきめきと力をつけてきた。病気療養中の片山から前夜に電話をもらい、この日の朝には激励のLINEも届いた。「うまく言葉で説明できないけど、片山さんに教えてもらったことは勝手に身についている。早く優勝を報告したいです」。12月には30歳の誕生日を迎える。「20代のうちに優勝したかった」という夢をかなえた勝俣は“師”ともいえる恩人に感謝した。

同じ埼玉出身の石川遼とは“りょう”つながりもあって、以前から交流がある。出場機会の少なかった21年には「関西オープン」で石川のキャディを務めたこともある。石川が不在だった大会で、もう一人の“りょう”が勝った。

「すごくうれしい。でも、今はもう次の試合のことを考えています。喜ぶのはきょうまで。またあしたからしっかり練習です」。視線はもう先。「次の『りょう』は自分だと言いたいけど、久常(涼)もいるし、バケハ(バケットハット)の『りょう』で覚えてください」。トレードマークはつばの広いハット。底抜けの笑顔が輝いた。(文・臼杵孝志)

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