<ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日◇7日◇東京よみうりカントリークラブ(東京都)◇7002ヤード・パー70>
長いシーズンを締めくくるエリートフィールドの戦いは、28歳・小木曽喬の勝利で幕を閉じた。
首位タイに3人が並ぶ混戦でスタートした最終日、小木曽が一歩抜け出した。5番でバーディを先行させると、続く6番ではチップインイーグルを披露。単独首位のままハーフターンし、後半もバーディを重ねて後続を寄せつけなかった。
名物の18番で叩いたボギーはご愛嬌。最終的には自身の大会最少ストロークを1打更新する「65」でフィニッシュし、昨年の韓国開催「ハナ銀行インビテーショナル」以来となるツアー通算2勝目をつかみ取った。
最終日は14.3度と日差しのぬくもりを感じられる気候で、同組の吉田泰基は半袖でプレー。しかし、祝福のウォーターシャワーを浴びた際は、思わず寒さに身を縮めた。髪を濡らしたまま応じた優勝インタビューでは、「本当にうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
テレビ中継を見たことがきっかけでゴルフを始め、中学3年時に腕を磨くため福井県に移り、すべての環境を捨てて全寮制の生活に飛び込んだ。「あれを超える辛さはない」。歯を食いしばって耐え抜いた経験が、今のメンタルを支えている。
今年は安定感が光った一年。25試合に出場して予選落ちはわずか3回(棄権2回)。「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」での首位発進や、「パナソニックオープン」での2位など好プレーも続いたが、「日本で勝ちたいとずっと思ってた」と語る。
父子家庭で育った小木曽は、韓国開催だった初優勝の瞬間を父に直接見せることができなかった。その分、国内で優勝する姿を見せて恩返しがしたかった。今大会には父・一(はじめ)さんも駆けつけており、「父がきた試合で勝てたのは良かった」と親孝行が果たせたことを何より喜んだ。
また、小木曽のことを兄のように慕っている同郷の金子駆大が、今季の賞金王に輝いた。最終日は蟬川泰果が優勝すれば逆転戴冠もあり得たが、小木曽は「駆大の賞金王が見たいと本当に思っていた」。結果的に自身の優勝が、後輩の戴冠を後押しする形となった。
23歳の新王者・金子について、小木曽はこう語る。
「まだ少年の部分が残っていて、かわいくて大好きです。ゴルフとの向き合い方はいつも上を目指している。何が一番いいか考えてやっている。ゴルフの話をすると深い話ができる。僕が23歳の時にはそんな話はできなかった。リスペクトしていますし、すごい選手だと思います」
後輩としての愛らしさもあり、互いを高め合える関係。小木曽は目を細めながら、金子の栄冠を心から祝福した。
金子は賞金王としてシーズンを終え、米ツアー予選会に挑む。仮に突破できなくても欧州ツアーの出場権があり、主戦場は海外に移す考えだ。
一方、小木曽は「僕は海外に全く興味がなくて、日本ツアー大好き」と語る。金谷拓実、中島啓太、平田憲聖ら次々と海外へ羽ばたく若手達から「刺激はもらっている」としつつ、「ここから少しずつ(海外への)思いが強くなってくるんじゃないかなと思ってます」。その時が来るまで、日本でのさらなる飛躍を目指す。
「子供のころから夢は賞金王」。日本でつかんだツアー2勝目を胸に、28歳は地元の後輩たちに続くべく、「実力を全部底上げ」しながら次のステージへ歩みを進める。(文・齊藤啓介)
