ザラザラに仕上げたフェースと独自の水を弾く仕上げが安定した「強スピン」を生む
ツアープロが打つような強烈なスピンでギュギュッと止まるアプローチは、多くのゴルファーが憧れるものだ。そのため、ウェッジの開発において、スピン性能の向上は重要なポイントの一つになっている。
PINGも長年に渡って、ウェッジのスピン性能を追求してきたメーカーだが、開発のコンセプトが他と少し異なる。コースにおける「リアルコンディション」でのスピン性能を重視し、インパクト時にフェースとボールの間に、芝やドロ、水分が絡んだとしても、ドライな条件と同等か、それ以上のスピンが利く設計を目指して、新製品の開発を進めてきたのだ。
その中でPINGが2月5日から発売をスタートした新ウェッジ『s259』は、そんな悪条件におけるスピン性能が大幅強化されたモデルだ。独自の「新サンドブラスト」によってフェース面を粗くザラザラに仕上げることでインパクト時のボールとフェースの接触時間を長くし、スピン性能を高めることに成功したという。
さらに、従来モデルで培ってきた精密な「削り出し溝」や水分を弾く「ハイドロパールクローム仕上げ」によって、『s259』は「いつでも強スピン」の性能を手にしたのだ。PINGが実施したテストでは、ドライな条件よりもボールを濡らした悪条件の「リアルコンディション」の方が、スピン量が増える結果が出たという。
通常であれば、フェースとボールの間に大量の水分が絡んだら、スピン量は大きく減少するはずだ。『s259』の悪条件におけるスピン性能の真偽が気になるところだ。そこで今回は、最新ギアに精通するクラフトマン兼スイングコーチの関浩太郎に、『s259』のスピン性能をコースでチェックしてもらった。
濡れても同等のスピン量を記録!関「フィーリングが全然変わらない」
まずはフェアウェイの平らなライからフルスイングでボールを打って、スピン量を計測。ドライなボールと水で濡らしたボールを5球ずつ打ち、弾道の平均値を算出した。ウェッジは『s259』の『Sグラインド』でロフト角58度のものを使用している。
基準となる数値を出すために、ドライ条件のボールからテストをスタートした関。
「ボールをとらえたときのしっかりとした打感が特徴的ですね。ウェッジの打感は軟らか過ぎてもインパクトの強弱が手に伝わってきません。『s259』はボールの重さが感じられて、当たった瞬間にどれくらいの距離を打てたか、感じ取ることができます。そして、『Sグラインド』はソールの抜けが抜群に良いですね。抵抗なくスルッと抜けてくれるので、打っていてとても気持ちいいですよ」
続いては、ウェット条件のテスト。ドライと同じフェアウェイの平らなライにボールをセットし、スプレーで2プッシュずつ水を塗布してからショットを行った。
「ドライの時からフィーリングの変化が全然なくて、驚きました。強いて言えば、ボールを少し軽く感じましたが、ほとんど差はないと言って良いでしょう。フェースの処理に加えて、ソールの抜けの良さでインパクトからフォローにかけてヘッドの“失速量”が少ないことも、『s259』が悪条件に強い理由の一つになっているようです。でも、すごいですね。打ち出し角やスピン量がほぼ同じ数値で再現性が高いです。タテ距離が安定するので、間違いなくショートゲームが向上するはずです」
「雨などでボールが濡れていたら、基本的にすっぽ抜けるように上がってしまい、前に飛びにくくなります。そのため、通常よりも強く打ったり、アドレスでボール位置を右にしたりとスイングに調整を加えます。でも、本来はタテ距離をしっかり合わせる上で、こういった操作をしないで済むなら、それに越したことはありません。『s259』なら悪条件でも、ドライなときと同じように飛んでくれますので、スイングは何も変える必要がありません。ショットに臨むプレッシャーが段違いに少ないですし、距離感が合いやすいので、スコアメイクが楽になるはずです」
さらに関は、『s259』の直進性の高さも強調する。
「ロフト角の大きいウェッジは基本的に、左に引っかけるミスが出やすいクラブです。しかし、『s259』は左に行きそうな感じが全くなく、左右の打ち出しのブレが非常に小さく抑えられます。サイドスピンが少なく、やさしくラインが出ることも『s259』の魅力といえますね」
25ヤードの距離から激スピン! 『s259』の真価は短いアプローチで発揮される
フルスイングで高いスピンの安定性を発揮した『s259』だが、短い距離のアプローチではどうだろう。そこで関にピンまで25ヤードの地点に移動して、再び『s259』のテストをしてもらった。グリーンエッジまで18ヤードほど、そこからピンまでは7ヤードしかなく、寄せるには強いスピンをかける必要がある。
「この距離でもめちゃくちゃ止まってくれますね。ボクの感覚だと、もう15ヤードくらい長い距離で打ったときのスピンのかかり方に近いです。20ヤードキャリーで、ここまで止まる計算は通常しませんが、『s259』なら思い切って打っていけますね。濡れたボールも打ちましたが、打ち出し角、スピンの入り方は全く遜色ありません。むしろ1バウンド目の止まり方がドライよりも強いように感じます。そもそも20ヤードキャリーのスピン量じゃないですし、それが濡れてもキープされるなんて本当に異次元なウェッジですよ」
「これだけ方向性が良くて、スピンで止まってくれるとなるとアプローチで攻めたくなりますね。抜けの良さでダフリやトップを回避してくれる寛容性の高さもあります。こういうショートゲームをやさしくしてくれるウェッジがあれば、アイアンでグリーンを狙うショットも思い切って打てるようになりますね」
すっかり『s259』の魅力にはまった関は、ラフやバンカーでも試打を行った。狙い通りに距離をコントロールし、ギュギュッとスピンがかかって止まる光景を目にして、「アプローチが上手くなったみたい」と目を輝かせる。
さまざまなライからテストをする中で、関が感じたのは、『s259』で採用されたPING独自の新グリップ『360 DYLAWEDGE』の優位性だ。
「スイングコーチの立場からすると、このグリップは非常に便利で実戦的です。通常よりも長めのグリップなので、クラブを短く持ちやすいですし、表面のラインを基準にして、握る長さやフェースの開き具合、シャフトの傾きを調整できるのも嬉しいポイントです。どれくらい開けば、どれくらい飛ばなくなるのか、普段の練習からチェックすることができますし、コースでも応用することができます」
「ボクは常々、50ヤード以内のショートゲームでは、プロアマ問わず正確なキャリーコントロールができることを重視してきました。なぜなら、アマチュアであっても短いアプローチが左右に10ヤード以上ブレることは少ないですが、タテの距離感は平気で10ヤード以上、ズレるからです。タテ距離の克服こそ、ショートゲームの真髄なんです。その意味で『s259』はタテ距離のブレを抑えてくれる心強い武器なのは間違いありません。狙ったところにボールを止められる“実戦力”の高いウェッジですよ」
『s259』のソールは6タイプ! 自分に合ったグラインドを選ぶコツとは?
『s259』ではスイングタイプや苦手なライへの対応で選べる6タイプのソールグラインドが用意されている。関に、自分に合ったソールを選ぶポイントについて聞いてみた。
「アプローチでは、イメージ通りの打ち出し角が出ることでタテ距離をコントロールすることが可能になります。ソールグラインドは、抜けだけでなく、インパクト時のロフトを調整する役割もありますので、自分のイメージ通りの高さに出るものを選ぶことが大切になります。それぞれのソールの特徴と相性の良いスイングを解説していきますので、ぜひウェッジ選びの参考にしてください」
ちなみに『s259』の『Eグラインド』は、国内女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を制したPING契約プロの佐久間朱莉が今季から使用をスタート。「『s259』はヘッドの重さで打てる良いクラブです。『Eグラインド』に替えたことで、距離感の難しいライでも抜けが良くなりましたし、バンカーではバンスがしっかり当たってくれます」と優勝後に賞賛のコメントを寄せている。
まとめると、『Sグラインド』は幅広いゴルファーに合う万能ソールで、よりやさしさを重視するなら『Wグラインド』と『Eグラインド』、操作性を求めるなら『Hグラインド』と『Tグラインド』を選ぶと良いだろう。『Bグラインド』は少し特殊で、ヘッドを低く動かして、シャローに打つスイングのゴルファーにマッチする。
『s259』は、フェースのザラつきや溝、水を弾く仕上げで、悪条件でのスピン量を向上させ、スイングタイプに合わせたさまざまなソールグラインドがラインナップされている。アプローチをやさしくするために、細部にまでこだわって作り込まれたウェッジなのだ。ショートゲームに苦手意識を持つゴルファーにおすすめなのはもちろん、スコアにこだわるゴルファーにもぜひ一度試してほしいウェッジに仕上がっている。
取材協力/上総モナークカントリークラブ 撮影/田中宏幸 構成/田辺直喜