現代のボールにはないソフトにつぶれる打感
「喰い付き感がすごい。そして、軟らかいのにしっかり初速が出ています。現行のボールの中で一番軟らかいかもしれません。30年前に使っていた糸巻きバラタの『ROYAL MAXFLI』と同じくらいソフトで、芯が感じられる打感がめちゃくちゃ気持ちいいです」
ダンロップが新たに発売したボールの最新モデル『ROYAL MAXFLI(マックスフライ)』の2機種をテストしたツアープロの市原建彦は興奮した様子で話した。糸巻きバラタから2ピースへ、ボールの構造が変化したことで失われた至高の打感が現代に復活したことを確信したからだ。
『ROYAL MAXFLI』は、1986年に初代モデルが発売され、そこから1990年後半まで世界中のツアープロを魅了したボールの名器だ。当時は、液体を封入したコアに引き伸ばしたゴム製の糸を巻きつけ、その上からバラタという樹脂でカバーをする構造が取られ、その製法から「糸巻きバラタ」と呼ばれた。
「中学生でゴルフを始めて、そこから大学生までの7年ほど『ROYAL MAXFLI黒』のボールを愛用していました。当時、とても高価なボールでしたが、性能が高いので周りのゴルフ仲間がみんな使っていました。最新モデルはパッケージが当時のデザインに似ていて、すごく懐かしく感じます。ボールの構造が糸巻きバラタから2ピースに変わり、飛ぶようになりましたが、同時に打感も硬くなってしまったので、対応するのに時間がかかりました。今でも時々『ROYAL MAXFLI』の打感が軟らかくて良かったなと思い出すことがありますよ」
市原のように、糸巻きバラタボール特有のソフトで、大きくつぶれてフェースに乗る打感に想いを馳せるゴルファーは少なくない。そんな中でダンロップが、現代のテクノロジーを駆使して、3ピース構造のままで糸巻きバラタに近いソフトな打感を実現したのが『ROYAL MAXFLI赤』と『ROYAL MAXFLI黒』の2機種だ。打感だけでなく、パッケージやボールのプリントなども当時のデザインが再現されていることも大きな特徴となっている。
では、現代のテクノロジーをまとって復活した名器ボールの性能とはどれほどのものなのか。今回は市原にドライバー、7番アイアン、ウェッジで試打をしてもらい、飛距離や方向性、スピンなどの性能をチェックしてもらった。弾道計測にはインドアスタジオ専用設計の「トラックマンiQ」を使用している。
ソフトなのに初速が出て、スピン少なめの強弾道でぶっ飛ぶ
まずはドライバーを使ったテストを実施。最新モデルの『赤』と『黒』の2 機種に加えて、2022年に発売された前作『ROYAL MAXFLI』でも弾道計測を行い、性能の違いをチェックした。
市原が最初に打ったのは前作の『ROYAL MAXFLI』。ウレタンカバーの3ピースという現代のツアーボールに近い構造のモデルだが、明らかな打感のソフトさが感じられたと言う。
「表面が軟らかくて、心地良い打感に仕上がっています。ソフトな割にボール初速も出ていて、適度にスピンが入ってくれるので操作性の高さも備わっています。ミスヒットでスピンが入ったかと思ったら、2000台後半で収まっていました。フェースにくっつく時間が長いので、インパクトで弾道を操作できる感覚があります」
続いて、新モデルの『ROYAL MAXFLI赤』をテストした市原。
「前作よりもさらに打感がソフトになっていて、めちゃくちゃ気持ちいいです。インパクトでフェースに3秒くらいくっついているイメージで、弾道を操作できる安心感が段違いです。さらに驚いたのは打感が軟らかくなったのにボール初速がアップしていることです。ミート率が1.5に近い数値で安定しますし、しかもスピン量が少なく抑えられて、飛距離も伸びていました。軟らかさと初速性能という相反する要素を高いレベルで両立していて、非常に魅力的なボールに仕上がっています」
最後に『ROYAL MAXFLI黒』を打った市原。
「『赤』に比べるとカバーに少ししっかり感が出ましたが、それでも前作よりソフトな打感になっています。軟らかい中に芯を感じる打感でとても気持ちいいですね。フェースに乗る感覚も強く、『赤』が3秒なら、『黒』は2.5秒という感じです。しっかり感がある分、初速性能も高くなっていて、適正スピンの弾道でボールが前に伸びてくれます。そして、『赤』の試打でも感じましたが、最新の『ROYAL MAXFLI』はミスヒットに対する強さが格段に向上しています。芯を外しても初速が落ちにくいですし、スピンも変に増減しないので、平均飛距離が安定してくれます。打感は過去のボールに近いソフトさに仕上げながら、性能面では現代のボールらしい反発力と寛容性を備えています」
「最新モデルの『ROYAL MAXFLI』は前作と比べても明らかに性能が進化していました。反発性能が高く、ミスヒットでも初速が落ちずに、適正スピンの弾道でキャリーが伸びてくれます。何より打っていて本当に心地よくて気持ちいいです。性能的には『赤』も『黒』もMAXにレベルが高いので、打感の好みで選ぶのが正解だと思います。特にドライバーだとボールがつぶれる心地良いフィーリングを得やすいので、多くのゴルファーに体感して欲しいです」
アイアンはどちらも低スピンの強弾道で楽に飛距離が出る
7番アイアンのテストを始めた市原は、『ROYAL MAXFLI』2機種の飛距離性能の高さに驚きの声を上げる。
「アイアンで打っても分かるくらい、インパクトでボールがつぶれて、フェースに乗ってくれます。どちらもボールを操作できる安心感があって、どんどん振っていけます。驚きなのは7番アイアンで190ヤード近い飛距離が出ていることです。普段は170ヤードほどのイメージなのですが、『ROYAL MAXFLI』はどちらもスピンが少なく抑えられるので、ぐんぐん前に伸びていきます。フェードめにラインを出しても止まる球質でキャリーが出ていますし、この飛びは魅力ですね」
ちなみにアイアンの試打になると、『赤』と『黒』の打感の差はかなり小さくなり、弾道も非常に酷似してくると市原。
「『黒』の方がカバーに少しだけしっかり感がありますが、アイアンの試打では打感の差がかなり小さくなります。スピン少なめの強弾道も共通していますし、ミスショットにも強くなっています。どちらも軽めに振っても高い打ち出しでキャリーが出てくれますし、ヘッドスピードを選ばずアイアンの飛距離を伸ばせるボールなのは間違いありません」
市原にはさらにウェッジでの試打も実施してもらったが、アイアン以上に打感の差が小さかったと言う。
「アプローチを打つと表面のウレタンカバーのしっかり感が手に伝わってきて、打ったときに耳に伝わる音も心地よいですね。どちらもグニュッとフェースに乗ってくれて、インパクトで押す感覚がすごく強いです。『ROYAL MAXFLI』のようなソフトなボールはアプローチで技が使えますし、乗り感が強い分、繊細な距離感を出すこともできます。今まで打感がソフトなボールはアプローチが良くても、ドライバーが飛ばないイメージでした。でも、『ROYAL MAXFLI』は『赤』も『黒』も最新テクノロジーでそんな弱点を完全に克服しています。これだけあらゆるショットでハイレベルな性能を発揮してくれたら、使わない手はないですね」
直進性なら『赤』、操作性重視なら『黒』を選ぼう
『ROYAL MAXFLI』の『赤』と『黒』の比較試打を終えた市原は、性能面で大きな進化を遂げていると話す。
「昔の糸巻きバラタを思い出すフィーリング性能やデザインの『ROYAL MAXFLI』ですが、性能面では別物と言っていいほど進化しています。『赤』と『黒』のどちらもソフトなフェースに喰い付く打感がヤミツキになりますし、それでいて初速がしっかり出て、スピン少なめの強弾道で飛距離が出てくれます。ミスヒットでもスピンが増えない寛容性も備わっていますので、平均飛距離が伸びるボールだと言えるでしょう。その中で、『赤』はより直進性が高くてオートマチックに飛ばせますし、『黒』は弾道をコントロールできる操作性が高くなっています。打感の違いと共に、そういった弾道特性をチェックして、自分に合ったモデルを選ぶと良いでしょう」
さらに市原は季節によって『赤』と『黒』を使い分けることを提案する。
「過去の『ROYAL MAXFLI』では飛びを考えて『黒』を使っていましたが、最新モデルは『赤』も大きく進化していて、高い飛距離性能の魅力的なボールに仕上がっています。私にっても大きな選択肢になるボールです。例えば温かい夏はしっかり感のある『黒』を使い、寒い冬によりソフトな『赤』という使い方もおすすめです。季節に合わせて使い分けることで、より結果が出しやすくなるはずです。『ROYAL MAXFLI』のソフトでボールがつぶれる心地良い打感は、あらゆるゴルファーにぜひ体感していただきたいモノです。昔、糸巻きバラタを使っていた方はもちろん、ゴルフを始めたばかりの初心者でも素晴らしいと思える打感に仕上がっています。ソフトなボールでフェースに乗る感覚を知ることができると、ゴルフのスキルも上達します。さらに打っていて気持ちいいボールはどんどん振れるようになって、飛距離も伸びてくれますので、ぜひ『ROYAL MAXFLI』の2機種を試してみてください」
現代のテクノロジーを駆使することで、圧倒的にソフトな打感とハイレベルな性能を獲得した『ROYAL MAXFLI』。ツアープロも絶賛するそのフィーリング性能は一度使えば、ヤミツキになること間違いなしだ。
取材協力/トラックマン東京ショールーム 撮影/近澤幸司 構成/田辺直喜