特性の違うシャフト使用者たちが、み〜んな『NX』って何故?
ところが、だ。6月頭に新ブランド『スピーダーNX』がツアー投入されてから、いま女子ツアーでは異変が。【ベンタス旋風】ならぬ、【NX巨大台風】、いや【NXブラックホール】と言うと大げさか。まずは、下記の『NX』へ移行した選手が使用していたシャフトを見てほしい。
●テレサ・ルー(Tour AD HD)●ペ・ソンウ(Tour AD GP)●原江里菜(ディアマナTBやPD)●ペ・ヒギョン(ベンタスブラック)●渋野日向子(ベンタスブルー)●永峰咲希(ベンタスブルー)●篠原まりあ(ベンタスブルー)●吉本ここね(デイトナスピーダー)●野澤真央(エボ7)●川満陽香理(エボ7)●セキ・ユウティン(エボ6)●松田鈴英(エボ5)●三ヶ島かな(エボ5)●大出瑞月(エボ5)●松森彩夏(エボ5)●イナリ(エボ4)●竹内美雪(エボ4)●西村優菜(エボ3)
何が起きているのか? を調べるため、『NX』の第一印象を「やさしいベンタス」と例えた、永峰咲希の言葉をヒントにすることにした。『エボ4』を長く愛用する一ノ瀬優希と、『ベンタスブラック』を愛用する谷口拓也のフジクラ愛用夫婦をコースへ呼び、【NXはやさしいベンタスなのか?】を徹底チェックしてもらった。
女子プロが即使う理由に納得!【VTC】で妻・一ノ瀬がいきなり高打ち出しドロー
「適度に手元のトルクが締まっているけど、タイミングの取りやすい中調子だから、誰でもヘッドスピードやミート率を出しやすいと思います。自分の持っている馬力100の内、95以上を再現できるから飛ぶというか、安定の『ベンタス』に走りをプラスしたという感じ。女子プロのヘッドスピード帯だけ結果が出るのではなく、美味しいゾーンが『NX』は幅広い感じがしますよね」。
これにより、トルクを部分的に締めたり緩めたりすることで、狙い通りのインパクトの動きを再現できることに気づいた。今回の『NX』の剛性分布は振りやすいオーソドックスな中調子そのものだが、トルクは手元と先端を締め、自動的にアッパー軌道でつかまえる動きになるよう設計されていたのだ。
マーク金井の【誰でもタイミングが取りやすい】という“切り返し”評に谷口も頷く。「同じ6Xですけど、切り返しのしなり量が『ベンタスBK』より遥かに大きく、間が取れてラク。一般にはハードと言われる『ベンタスBK』の6Xを使うボクでもビッグキャリーの真っすぐ(もっと左が来ると思った…)しか出ませんもん」。
「さすがフジクラというか、動作解析でトルクを部分制御したのは、高打ち出しかつ適度なドローになる動きを自動的に安定させるため。シャフトの使用歴、打ち方、フィーリングがここにいるみんな違うのに、初めて振って誰もが同じフィールを体感できるのは凄いですよね」(マーク金井)
各重量帯、 どのスペックがベスト?
今回の『NX』には、40g台から70g台まで幅広いスペックが用意されている。詳しくは動画を見てほしいが、HS40m/s弱で『エボ4』の569・SRがエースの一ノ瀬は、『NX』の50Sが気に入ったようだ。
「エースは『エボ4』の569SRですが、『NX』なら50Sでちょうどいい感じ。スピンも1700回転でキャリーもランも両方伸ばせるストレードローしか出ません。 18ホールを考えるなら40Sもラクですが、50Sは当たり負けずに分厚く押せる感じ」(一ノ瀬)
また、『ベンタスBK』の6Xを使う谷口は「70Xの方が締まって操作性もいいし初速は出るけど、オートマにアッパーに動く60Xの方がラクだし武器になると感じました。男子プロもかなり使うと思います」と話していた。
『NX』の主要スペックを試し終えた3人は、下記のように振り返っていた。
間が取れ、誰でもOK。力まず方向性も◎
谷口 スピーダーという歴代走るモデルの新作なので、打つ前は「左もあるかな…」と想像してたんですけど、安定して曲がらないのが意外でした。1発目から最後まで、全く球がネジれなかった。
一ノ瀬 私も同じで、つかまるけど、左に行き過ぎない感じでした。右にもすっぽ抜けが1球も出なかったですし、とにかくラクです。
マーク そう、『エボ』の【奇数作は走り系】、【偶数作は叩ける系】だから、『エボ3』を長く使っていた西村優菜プロ、『エボ4』を長く使ってきた一ノ瀬プロ、どちらも『NX』にフィットするのが不思議ですよね。
一ノ瀬 そうなんですよ〜。毎回スピーダーの新作を打つけど、結局『エボ4』から替えられなかったので今回すごく意外で。
マーク ここにいる3人ともシャフト遍歴、スイング、フィーリングが全然違うのに、『NX』を打つとみな同じことを感じますよね。やっぱり【VTC】のトルク制御で、誰が打ってもかなり自動的な【インパクトの動き】になりやすい。剛性分布はタイミングの取りやすい中調子だから、誰でも【切り返しでタイミングが取りやすい】点が大きいかなと。
谷口 ホント、『ベンタスBK』のボクと『エボ4』の優希ちゃんの両方が同じ『NX』なんて、今までなら考えられない。
一ノ瀬 私もシャフトのストライクゾーンが狭いので意外です。
谷口 ボクも意外でしたけど、『NX』の60Xは切り返し以降で、いつも同じ挙動になる。自分で操作するなら締まって重い70Xもいいですが、クラブの動きに任せて振りたい人なら全然同フレックスで行けますよ!
マーク なるほど〜。考えてみれば今時の男子プロも60g台がメインですし、操作一辺倒じゃなく、クラブの動きに任せた方がミスが減ると考えるのも当然だよね。いやぁ〜、勉強になりました!
取材協力・カメリアヒルズカントリークラブ
撮影・山代厚男