初日と2日目以降で使用ボールが変わった珍事
実に不思議な勝利だった。
最終日のバックナインで、優勝争いをリードしていたのは昨年の賞金王、今平周吾だった。ショット、パットとも安定感抜群でその充実ぶりを印象づけた。最終18番で風のジャッジを誤らなければ、優勝は今平のものだったかもしれない。
宮本は3日目終わって、2位と健闘していたが、どこか一歩引いたようなプレーぶりだった。昨年は病の影響もあり、ランク74位でシード落ち。気力、体力が充実した若手に比べると、やや迫力に欠けているように見える。口を尖らせるような表情を見せたのも一度や二度ではない。
最終日は、スタートホールでダブルボギーを打つ。打ち下ろしの左ドッグレッグでプロにとっては短いパー4。ほとんどの選手がティショットを刻み、セカンドをウェッジで打っていた。出来ればバーディーでスタートしたいこのホールでのダボは、心理的な影響が小さくないはずだ。早々に、優勝争いから脱落してもおかしくなかった。
パッティングは、ツアー初戦の東建ホームメイトカップ最終日で、アームロック式に変えたという。実際にはガッチリと左腕にパターをロックしているわけではなく、中尺パターを使いつつ、これまでのスタイルのマイナーチェンジといったところだが、それでもベテランにとっては大きな変更だろう。
そして、驚くべきことに大会初日と2日目以降で、使用したボールが異なっていた。優勝した選手がトーナメントの途中で使用ボールを変更したとは、近年では聞いたこともない話だ。
宮本が初日に使用していたのは、タイガー・ウッズも愛用する『TOUR B XS』ボール。軟らかい打感とスピン性能を持ち、宮本もその点を評価して「硬い和合のグリーンに合う」と投入を決めたという。ひょっとしたら、マスターズで復活優勝を果たしたタイガーへのあこがれもあったのかもしれない。