2026年、日本のスポーツ界を牽引し続けてきたミズノが、創業120周年の節目にゴルフ界に一石を投じる新作ドライバーを発表した。同社が自ら「バケモノ級」と胸を張る、世界初の“ナノアロイ”フェース搭載の『JPX ONE』シリーズの誕生について、同社の取り組みを深堀りしていきたい。
これまで「アイアンのミズノ」として世界的な地位を確立しながらも、ドライバーシェアでは海外勢の後塵を拝してきた。その悔しさをバネに、総合スポーツメーカーとしての全技術を注ぎ込み、1年の発売延期を経てようやく完成したこのドライバーには、従来のゴルフ界の常識を覆す「素材革命」が宿っている。
■ 1年発売延期した、ミズノの「覚悟」
開発の舞台裏は壮絶だった。当初、新モデルは完成間近にあった。しかし、他社製品との比較テストで出た差はわずか「+0.2ヤード」。社内からは「勝負をかけるには不十分だ」と厳しい声が上がったとか。
ミズノ上層部が下した決断は、異例の「1年の発売延期」。「120周年の看板を背負って世界の頂点を目指すには、圧倒的な数値が必要」。この空白の1年間で、通常の10倍を超す試作品が作られ、ミズノが誇るバットやラケット、シューズなどの開発者までもが合流。競技の枠を超えた「チーム・ミズノ」によるゼロベースの模索もあった。
■ 軟式野球のバット成功例がカギ
結実したのは、世界初となる「NANOALLOY(ナノアロイ)フェーステクノロジー」の搭載だ。東レの革新的技術であるナノアロイは、複数のポリマーをナノスケールで分散させることで、衝撃の強さに応じて素材の性質が変化する。
この素材が使われたのは、テニスラケットの他にも同社の伝説的な軟式野球用バット『ビヨンドマックス』があまりに有名。柔らかいウレタンで軟式ボールの変形を抑え、飛距離を爆増させた。このロジックをゴルフにも応用したのが『JPX ONE』になる。
従来のチタンやカーボンフェースは、インパクトの衝撃で素材自体が変形し、熱や摩擦などのエネルギーロスを生んでいた。しかし、ナノアロイをフェースに組み込むことで、インパクトの瞬間に素材が「動的弾性」を発揮。フェースが柔軟に適応することで、ボールが潰れすぎるのを防ぎ、エネルギーをボール側へ保存・還元する。
また、ナノアロイの優れた耐衝撃性を活かし、耐久性のある鍛造製法を選んでチタン部分を前作比約10%も薄くすることに成功。(センター部分は0.35mmも薄くなった)これにより、反発規制ギリギリのエリアが大幅に拡大。「どこで打っても高初速」という、アマチュアにとって最も恩恵のある進化を遂げた。
■ 薄いチタンフェースが初速に直結!?
日本のメディア向け説明会での試打では、目の肥えたテスターたちが絶句する場面が見られた。「初速が明らかに違う。他社比15ヤード近く伸びたデータもある」「カーボンフェース系の評価が一変してしまうかもしれない」などの声も聞かれたが、一足先に発表した米国市場では、試打したアマチュアからこんな声も。
「私の最初のPGAショーのデモデーでは期待を裏切らなかった」「デモデーは最高でした!」「ただ握手してよくやった!と言いたいです!🙏🤌🏼🤌🏼😮💨 すごくいいです!」「スマッシュファクターはとても良い」「クールクラブのロボットテストでは、セレクトは今年、次点のドライバーよりもボールスピードが2mphも速いことが示されました。素晴らしいクラブですね!」「初期テストではかなり良い結果でした。本当に大きな勝利ですね👏」
記者も試したが、投影面積の大きな方の『JPX ONE』は打点ブレに強く、フェースの“薄さ”を感じさせる高音と弾き感が印象的で、たしかにボール初速が大手海外メーカー各社の2025年モデルより速かった。かたや、小ぶりで締まった見た目の『JPX ONE SELECT』は、音が控えめで残響も短くシブい打感が好印象。
■早くも契約プロが先週勝利!
ナノアロイフェースを触ると、表面が非常にソフトで「これなら低速で鉄球を落下させるテストでもナノアロイが衝撃吸収するだろうな……。でも、高速打撃なら逆に全く影響しないはず」と直感した。が、超ソフトな素材のため「石を噛んだり落としたりして傷つかないか?」と気になったが、有償でフェース面の交換も今後検討中だとか。
なお、契約選手のジョーダン・ダウルが『JPX ONE Select』(9.0° Tour AD VF-6TX)を使って先週開催されたPGAツアー・オブ・オーストレーシア「Webex Players Series Victoria」で早くも勝利を飾っている。発売日は3月6日。税込価格は92,400円と競合他社の新作ドライバーよりも手に取りやすいが、まずは「初速性能が本物かどうか?」ご自身の目で確かめてほしい。(編集部M・K)