PGAツアー
米国男子
チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオリンズ
絶妙なコンビネーションを見せたマキロイ&ローリーがペア戦V【舩越園子コラム】
米国男子ツアーのペア戦は大親友のローリー・マキロイとシェーン・ローリーが優勝した。
配信日時: 2024年4月29日 03時00分
Round 4 | ||
---|---|---|
順位 | Sc | PLAYER |
1 | -25 | シェーン・ローリー |
2 | -25 | ローリー・マキロイ |
2 | -25 | マーティン・トレーナー |
2 | -25 | チャド・レイミー |
5 | -24 | ライアン・ブレーム |
5 | -24 | マーク・ハバード |
7 | -23 | サム・スティーブンス |
7 | -23 | パトリック・フィッシュバーン |
7 | -23 | ニコラス・エチャバリア |
7 | -23 | ガリック・ヒーゴ |
米ルイジアナ州で開催された「チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオーリンズ」はPGAツアーで唯一のチーム戦だ。
ひとつのボールを交互に打つフォアサム形式で行われた最終日は大混戦となったが、スコアを一気に9つ伸ばしてクラブハウスリーダーとなったチャド・レイミー(米国)&マーティン・トレーナー(フランス)の組をローリー・マキロイ(北アイルランド)&シェーン・ローリー(アイルランド)組が72ホール目でとらえ、サドンデス・プレーオフへ突入した。
そして、プレーオフ1ホール目の18番(パー5)をパーで収めたマキロイ&ローリー組の勝利で幕を閉じた。
今週、ニューオーリンズのギャラリーを沸かせたのは、初日から最終日まで、マキロイとローリーだった。
「ニューオーリンズに初めて来た」というマキロイは、今大会初出場だった。マキロイとローリーは昨秋、ライダーカップ終了後に「来年のニューオーリンズに一緒に出ようか?」という会話を交わし、クリスマスシーズンを迎えたころ、マキロイの方からローリーに電話をかけて「やっぱり出よう!」と誘ったという。
昨年のライダーカップと言えば、米国チームの言動に怒りを覚えたマキロイが、クラブハウス前の駐車場で米国チーム側のキャディ、ジム・“ボーンズ”・マッケイに突然、激しく詰め寄り、殴り掛かりそうな勢いだったマキロイを親友のローリーが必死に止めて車に押し込んだ「あの出来事」が思い出される。
マキロイとローリーは、あの出来事の直後から今大会出場を考え始めていたと知ったとき、固い友情で結ばれているこの2人なら、きっと優勝するだろうと直感した。
最終日の終盤の2人の戦いぶりは、信頼し合っているからこその絶妙なコンビネーションだった。16番のバーディで首位に追いついたものの、17番はローリーのミスが響いてボギーを喫し、一歩後退。
「大丈夫。心配ない。18番で取ればいい」
すかさず、そう声をかけたマキロイにローリーも頷いた場面は、日ごろのPGAツアーでは目にすることがないチーム戦ならではのシーンだった。そして2人は、その言葉通り、18番でバーディを奪い、サドンデス・プレーオフへ。
マキロイはメジャー4勝を含む通算24勝で世界ランキングは2位で、ローリーはメジャー1勝を含む通算2勝で世界ランキングは39位。対するレイミーとトレーナーは、どちらも1勝ずつを挙げているものの、近年の成績は振るわず、世界ランキングは各々、233位と387位。
さらに言えば、マキロイとローリーが百戦錬磨であるのに対し、ラメイとトレイナーはどちらもプレーオフを戦うのはキャリア初。そんな2人が感じていた緊張とプレッシャーは多大だったようで、どちらもミスを連発。最後は1メートルのパーパットを沈めることができず、すでにバーディーパットを外してパーで収めていたマキロイ&ローリー組に勝利を差し出す形になった。
2人1組でお互いのミスを補い合えるのがチーム戦の特徴ではあるが、ランキングや経験値の差が、とりわけプレーオフでは、これほど如実に表れたことには、あらためて「なるほど」と頷かされた。
優勝が決まった直後のマキロイとローリーの無邪気な喜び方は、眺めていた人々の笑顔を誘ったのではないだろうか。
「いやー、すごい、すごい。優勝できたのは、ボーナスみたいなものだ」とマキロイが興奮気味に語ると、ローリーも「最高のパートナーに助けられ、最高の1週間だ。あっはっはっ!」と、やはり興奮冷めやらぬ様子だった。
かつてマキロイは“アンチ・LIVゴルフ”の急先鋒だったが、最近ではLIVの良さを口にするようになり、同ツアーの競技フォーマットであるチーム戦をPGAツアーでも採り入れるべきだと提唱している。
そんなマキロイの主張を耳にして、「LIVEゴルフの派手なチーム戦は好きになれない」と眉をひそめる人々は少なくない。だが、今大会でマキロイとローリーの厚い友情で結ばれた熱い戦いぶりを目にした結果、「こういうチーム戦なら悪くないかも」と心を動かされたPGAツアーのファンは、きっと数多くいたのではないだろうか。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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