<ホンダLPGAタイランド 最終日◇22日◇サイアムCC オールドC(タイ)◇6649ヤード・パー72>
大会冠スポンサーを務めるホンダに所属する岩井千怜が、4度目の出場で初めて優勝争いを演じた。首位に1打差の3位タイで最終日を迎え、2イーグル・2バーディの「66」をマーク。猛追もあと1打届かず、トータル23アンダーの2位で大会を終えた。
「今週こんなにいいプレーができると思っていなかった。上位で戦えて自信になったし、気持ちの持ち方も学べて大人になった。きっと今後につながると思います」。そう語った岩井は、悔しさを胸の奥にそっとしまい込み、報道陣の前では清々しい笑顔。ラウンド後の涙も見る者の心を打つものだった。
この日は、タイ出身で首位に立つジーノ・ティティクルの1組前でティオフ。地元のスターがトップにいることもあり、会場には多くのギャラリーが詰めかけた。ティティクルのスタートホールは、フェアウェイの一角まで埋め尽くされるほど。熱気に包まれていた。
岩井の組にも多くの観客が詰めかけたが、後続組から沸き起こる歓声は、少なからずプレッシャーにもなったはずだ。プレー中は落ち着いているように見えたが、内心は「緊張はしましたね。ずっとしていました。最後、あがるまで緊張していました」というのが正直な想いだった。
「そのなかでプレーできるのは上位争いをしている時にしか感じられない。それも勉強になった。いい週でした」。大きく崩れることなく4日間を戦い抜いた姿に、確かな成長がにじんだ。
日本ツアーを含め、これまで何度も優勝争いを経験してきたが、ホステスプロとして臨んだ今回は「重圧みたいなものはすごかったですね」と明かす。そんな極限の戦いの中で、これまでには見せなかった一面があった。それは、待ち時間に歌を口ずさんだり、歩きながら手でリズムを刻むといった姿だ。「ずっと歌いながらプレーして、ゴルフ以外のことも考えながら自分の世界観を作っていました」。いわば集中力を保つための行動だった。
今大会ではメンタル面にも変化があった。2日目に「62」をマークした際、「完璧じゃなくていいよ」と自分に言い聞かせ、無意識のうちに背負っていた“こだわり”を手放した。初日を終えたあとに、「知らず知らずのうちに、完璧なショットを求めてしまう自分がいる」ことに気づけたのが大きかったとも話す。そしてこれは、今後も“テーマ”として掲げられる考え方になるかもしれない。
ティティクルに1打差のまま終えた最終18番。パーパットを沈めると、敗戦を覚悟したように、目を潤ませた。アテストへ向かう途中、姉の明愛らに声をかけられると、それまで張り詰めていた緊張がほどけたかのように両手で目を拭う姿も。アテスト後はクラブハウス前で待機し、優勝を決めたティティクルが戻るとハグを交わし、互いの健闘を称え合う。周囲からは温かな拍手が送られた。
この4日間を振り返る。「周りを一切気にせず自分に集中した。自分の世界に集中していました。必ず成長したと実感した。次につながる週です」。来週はシンガポールで行われる「HSBC女子世界選手権」(2月26日~3月1日)に出場する。「今週で体も慣れたと思う。また優勝争い目指して気持ちを切り替えて頑張ります。自分のペースで、また日本のみなさんにいいプレーを届けられるように」。すっかり涙は乾き、笑顔で締めくくった。
悔しさと確かな手応えを胸に刻んだ4日間。今回の“変化”は、米ツアー2勝目へとつながる大きな糧になるはずだ。(文・高木彩音)

