<宮里藍 サントリーレディス 最終日◇14日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6619ヤード・パー72>
一歩、二歩、三歩…。首位の座を明け渡し、 2打ビハインドで迎えた12番。桑木志帆は表情を引き締めて歩測を開始した。ピンまで30ヤードと確認した3打目。58度のウェッジでピン奥50センチにピタリとつけた。同じ最終組で首位に立っていた永井花奈は痛恨ボギー。1ホールで追いついたバックナイン最初のパー5が、有言実行の優勝への分岐点だった。
「40ヤード以内は結構、前からやっているので、いつもと変わらなかったと思います。ただ、永井選手が左に外していたので、ここはしっかりバーディを取らなきゃいけないホールだと思っていました」
前半はバーディなしの1ボギー。スタート前に3打あった貯金は使い果たしていた。それでも、慌てることはない。「追いつかれて、追い越されたけど、全然動じなかった。自分でもびっくりでした。自分のプレーだけに集中しようと思って、それができました」。ギアを切り替えるための歩測でつかんだ、この日最初のバーディ。流れはここから変わり、1打差でし烈なV争いを制した。
前週の「全米女子オープン」で得たものは大きかった。4度目の海外メジャーで自己最高となる14位。最高峰の舞台で世界のトップたちと互角に戦った。「もっと自信を持っていいんだと思った」。トッププロたちの技術に、埋められないほどの決定的な差はない。ゴルフはメンタル競技。心の強さが最後は勝敗を分けることを、桑木は改めて示して見せた。
全米切符が懸かっていた5月の「Sky RKBレディス」で1年半ぶりとなる通算4勝目を挙げた。そのときも「優勝するくらいの勢いで」と臨んだが、「AIG女子オープン」(全英)の出場権を狙った今回は「自力で決めたい。優勝を狙います」と開幕前にV宣言。「Skyは久しぶりの優勝だったので、ウキウキしていたけど、今回は『勝つために何をするか』をイメージしていた。狙って取れた優勝は初めてで、すごく手応えがあります」。理詰めの勝利で自信はさらに膨らんだ。
19日開幕の「ニチレイレディス」はスキップし、次戦は海外メジャー「KPMG全米女子プロ選手権」(25~28日、ヘイゼルティン・ナショナルGC/米ミネソタ州)に出場する。テキサス州で開催された昨年は、初日に10オーバーの「82」を叩いて150位と大きく出遅れた。2日目は「70」と巻き返したが、79位で予選落ち。心はぽっきり折れた。翌年の米ツアー出場権を争う予選会(Qシリーズ)の挑戦も「まだ早すぎる」と断念した。
リベンジを期す今年の全米女子プロ。表彰式では「しっかり爪あとを残せるように頑張りたい」とギャラリーに宣言した。メジャー帰りの帰国即Vは24年の全英→「ゴルフ5レディス」の竹田麗央以来となる。竹田はその年、8勝して初の年間女王に輝き、翌年から主戦場を米ツアーに移した。
桑木が描く青写真はその再現だ。メルセデス・ランキングは2位に浮上し、1位の佐久間朱莉とは35.87pt差。「女王争いをしたことがないので、最後までやりたい。年間女王になって米ツアーに行けたら、一番いいと思う。今はまだ現実的には考えていないけど、今の状態ならまだ勝てると思う。勝ちにこだわっていきたいです」。
まずは全米女子プロで昨年の借りを返す。リベンジを完了すれば、手に入れた『自信』はちょっとやそっとでは壊れない鋼の鎧(よろい)となる。(文・臼杵孝志)
