今週の「ダイキンオーキッドレディス」(沖縄県・琉球ゴルフ倶楽部)で国内女子ツアーが開幕する。注目選手の1人は、昨年のプロテストに現役高校生ながらトップ合格を果たし、ファイナルQTで16位に入った伊藤愛華。開幕前にインタビューを行い、18歳の素顔に迫った。
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■やんちゃだった小学生時代 ひたいにはたんこぶが2つ残る
父・政人さんの影響で4歳からゴルフを始めた伊藤。「幼稚園の時からゴルフを始めて、ほとんどゴルフで育ってきました。この18年間は、ほぼ全部ゴルフでできているぐらいゴルフしかやっていないですね。ゴルフを軸に生きてきました」。小学生の頃から将来の目標はプロゴルファーと口にしていたが、18歳にしてその目標を叶えた。
「ダイキンオーキッドレディス」初日の3月5日に、母校・埼玉栄高では卒業式が行われる。「(高校を)卒業したら髪も染められるようになるから、色を変えてボブにするのもアリかなと思っています」。黒髪のロングヘアが印象的だが「基本は長くてたまにボブ」と過去に2度ほどボブにしたことがあるという。高校を卒業することで校則を守る必要がなくなる。「自分の顔の形に合う眉毛の形とか、色とか。めちゃくちゃやっているわけではないけど、自分に何が合うのか考えてはいます」。人に見られる職業としてプロ意識も芽生えている。
小学生の頃は活発な子どもだったという。「身だしなみとかまったく気にしない感じでした。ずっと外にいて、一緒に遊ぶのも男の子でした」。こんなエピソードもある。「一輪車に乗って鉄棒の下をくぐろうとしたら(棒が)思いのほか低くてぶつかって…。もう1つは、雲ていの柱をくるくる回っていたら柱にぶつけて…」。ひたいに残る2つのたんこぶは、その時の思い出でもある。
やんちゃな女の子は中学生になると陸上部に所属する。「短距離がめちゃめちゃ速いわけではないですし、長距離は毎日何十キロも走るしっかりやっている子には勝てない」と競技種目は800メートルを選んだ。「基礎体力はいまも役立っていると思います」と下地作りには最適だった。ほかにもテニスを少々たしなみ、放課後は球技全般を楽しむスポーツ万能タイプ。細身ながらドライバーで250ヤード以上飛ばす身体能力の高さも納得がいく。
「特にないんです」というのが趣味。長時間の移動中もスマホを触っていることが多い。「休みの日は友達と会うのが楽しみです」とゴルフ関係の仲間とおしゃべりやカラオケでリフレッシュする女子高生らしい一面もある。
■後輩からは“姉さん”と呼ばれていた 大事な試合前は必ず「ウナギ」を食べる
前編でも触れたが中学生までは「ゴルフは好きではなかった」。多くのプロゴルファーを輩出する強豪高に進学してからゴルフと向き合う気持ちが変化した。さらに3年生が引退して最上級生となった高校2年の9月から主将を任されて、さらに意識改革が進んだ。「大きく成長できた」と伊藤の人生において一つの転機となった。
「愛華先輩ではなくて、姉さん、でした」。後輩からは親しみと尊敬を込めて「姉さん」と呼ばれている。高校3年時の団体戦の模様がテレビで放送され、“姉さん”も大きく取り上げられた。テレビを見た人から「姉さん」と呼ばれることもあり、「ルーキーなのに変ですよね」と笑って話すが、まんざらでもなさそう。
高校時代から大事な試合前に必ず食べる“勝負飯”がある。「好きな食べ物というわけではないのですが、いつもウナギを食べています。プロテストの1次、2次、最終、QTも新人戦の前も食べました」。
きっかけはアスリートが栄養価の高いウナギを食べているという情報を知ってから。ある大会前にウナギを食べたところ、いい結果が出た。「そこからはゲン担ぎとして、大事な試合前にはウナギを食べるようになりました」。ただ、どちらかという「好きではない」部類に入る。「ウナギが出てくると、試合が始まるんだなという感じがあります」。食卓に並んだときに目を輝かせるわけではないが、気持ちを高めるルーティンにもなっている。
ちなみに好きな食べ物はトマト料理だ。「トマト煮やトマトソースが好きです。誕生日は母にお願いしてロールキャベツのトマト煮を作ってもらいます」。スポーツ栄養プランナーの資格を持つ母が作る料理は、栄養価を計算しつつ「おいしいです。おいしくないことはないですね」と胃袋を満たしてくれている。
今年は遠征が多くなるため、母の手料理を食べる機会が減ってしまう。「自分でやるしかないので、遠征先では栄養価を考えながら好きなものを食べて、体重を落とさないようにしたいと思っています」と新たな環境にも慣れていくつもりだ。
■伊藤家のパワースポットは練馬区の神社
父・政人さんが子供の頃から参拝する伊藤家のパワースポットがある。東京都練馬区の「高松八幡神社」だ。「神様はめちゃくちゃ信じています。いいことをしたら返ってくるとか、どこかで見ていてくれるだろうなって思っています」。毎年欠かさず参拝しており、ゴルフだけでなく日頃の行動にも気を配っている。昨年はプロテストの1次、2次、最終、そしてQTの前にも足を運んだ。今年も年始に参詣したが、ツアー開幕前もこの1年のあいさつに訪れた。
二拝二拍手一拝。「お参りの際にはしっかりと住所と名前を伝えます。年始めにもご挨拶に来ましたが、開幕戦から頑張るのでお守りくださいとお願いしました」。純粋な目でそう話す伊藤のことは、神様もきっと見ているだろう。
境内の絵馬掛けには、年始に伊藤が書いたモノもある。「ルーキーイヤーでレギュラーツアー初優勝を挙げることと、周囲の人間が幸せで健康にすごせるように」といったことが書かれている。
取材時は2月上旬。「いまは自分の実力に自信が持てていないので、開幕までにもう少し自信が持てるように練習とトレーニングをがんばります。開幕したら連戦など初めてのことばかりだと思う。早く自分のリズム、感覚をつかんでやっていきたいです」。18歳の姉さんは、まずはツアー転戦に慣れることを重要視する。絵馬に書かれた願い事を叶えるために、神頼みだけでなく日頃の努力とウナギを欠かさずに過ごしていく。
■伊藤愛華
いとう・あいか/2007年9月26日生まれ、東京都出身。4歳でゴルフを始め、強豪の埼玉栄高で腕を磨き、主将も務める。高校3年時に受けた25年のプロテストは、現役でトップ合格を果たす。ファイナルQTでは16位に入り、今季前半戦の出場権を獲得。開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」でプロデビュー戦となる。明治安田所属。
