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「毎日新人のようにストイックでした」 上田桃子の“一球入魂”支えたエースキャディが語る最終戦

今季限りでツアーの第一線を退く上田桃子は予選落ち。長年、エースキャディを務めた新岡隆三郎氏は何を思った?

所属 ALBA Net編集部
小高 拓 / Hiromu Odaka

配信日時:2024年11月16日 07時30分

上田桃子とともに歩いてきた新岡隆三郎キャディ。“ラストマッチ”を終え何を感じたか?
上田桃子とともに歩いてきた新岡隆三郎キャディ。“ラストマッチ”を終え何を感じたか? (撮影:上山敬太)

<大王製紙エリエールレディス 2日目◇15日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6575ヤード・パー71>

今季限りで一線を退くと発表した上田桃子は、今大会で上位に入れば最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」に出場できる可能性もあったが、2日間トータル4オーバー・88位タイで予選落ち。今大会がラストマッチになった。2018年からエースキャディとして支えてきた新岡隆三郎キャディも、その姿を特別な思いとともに見守った。

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予選落ちが確実な状況で迎えた18番パー4。最後の1打となる1メートルのボギーパットを沈めると同組の小祝さくら、川崎春花とハグをし、両選手のキャディと握手。そして最後に新岡キャディに深々と頭を下げ、握手するとグリーンを降りた。新岡氏にとって、上田がクールな表情でプレーを終えるこの光景は、普段とそう変わらなかった。

「最後だからというのは嫌だから、いつも通りやりたい」。今大会を前に上田からはこう言われていたという。練習日もスタート前も普段通り練習をして、気になる部分を追及する姿があった。「だから何も変えずにいつも通りやりました」と、新岡氏は振り返る。

しかし、いつも通りでないこともあった。2日目のラウンドは「本人の中で『楽しむ』って言っていました。楽しむなんてテーマはなかなかないから…初めてかな。楽しんでプレーしていました」。開幕前日の報道陣の取材に対して上田自身「今まで楽しもうと思ってやったことはない」と話していたが、“最後”のラウンドは特別な思いでのプレーになったのかもしれない。

片山晋呉や岩田寛らのキャディを務めていた新岡氏は、上田のバッグを2018年から年間の出場試合の半分ほどの試合で担ぐように。そして19年の「Tポイントレディス」、22年の「富士フィルム・スタジオアリス」の優勝もサポートした。

一番思い出に残っている試合は、上田の1年半ぶりの優勝となった19年のTポイントレディス。1打差2位タイで3日目を終えた夜、右手中指に原因不明の痛みが襲い、朝になってもそれは引かなかった。最終日、プレーできるかすらわからない状態。それでも右手を使わない意識で“ガマンのゴルフ”を続け、勝利を手繰り寄せた。痛みに耐える姿、あきらめない姿は新岡氏の脳裏に今でも焼き付いている。

プロ生活20年。通算17勝を挙げ、今季もメルセデス・ランキングは先週終了時点で46位とシードを確定させている。それでも一線を退く。「毎日毎日、新人のようにストイックにやって、準備して。あれだけエネルギーをもってやれる人はなかなかいないと思います。一打一打すべて気を抜くショットがなく、本当にすごいです。これからもあんなに長く第一線でやれる選手ってそうそう出ないと思います」。長年トップで活躍できた理由については、常に全力でゴルフと向き合う姿勢を挙げる。

キャディ歴20年以上の新岡氏だが、「選手が引退するのを最後まで見送れるのは、最初で最後じゃないですか。それがめちゃくちゃうれしいです。本当にお疲れ様でした」と“相棒”にメッセージを送った。

大会側と選手有志が準備した最後のセレモニーでは、戦友とも呼べる大勢のプロに囲まれ、ともに涙を流した。若手プロにとって上田は“憧れの存在”でもある。来年以降も“現役”を続ける新岡氏は「上田プロはこういう選手でしたとか、こういうことをやっていたとか細かい部分を伝えていくのも役目かもしれません。上田プロを一言で表すなら、一球入魂です」と、そのイズムを若い選手に伝える役目も担う。(文・小高拓)

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