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新スイングへ「近道になったと思う」 渋野日向子の“ベースボールグリップ”挑戦、きっかけや青木翔コーチの見解は?

渋野日向子がホステスプロとして出場する大会で、初日を2アンダーで終えた。その感想は?

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2023年6月8日 18時56分

テンフィンガーグリップなので、左手の親指が外に出ている
テンフィンガーグリップなので、左手の親指が外に出ている (撮影:福田文平)

<宮里藍 サントリーレディス 初日◇8日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6513ヤード・パー72>
 
サントリーと所属契約を結んで初出場となるホステス大会で、渋野日向子のグリップの握り方がこれまでと変わっていた。左手の人差し指と右手の小指を絡める『インターロッキンググリップ』から野球バットを持つように指を絡めずに10本の指で握る『ベースボールグリップ(テンフィンガー)』を取り入れた。

■きっかけは父のひとこと
 
試してみようと思ったのは、『やってみたら?』という父・悟さんからのひとことだった。「最初はこれで振れるんかな?と思ったけど、打ったら意外といいな~って」と気に入った。これは先週の日曜日の話。練習を開始してから、きょうでわずか5日目だ。
 
その翌日の月曜日に渋野に会ったコーチの青木翔氏は、いきなりベースボールグリップで握る渋野に驚いたという。「マジ!?って思って、本人にも聞いちゃった(笑)。そしたら『マジ』って言われましたね」。事の経緯を聞き、まずは試しに打つ姿を見守った。「見ていたら『やめる』って言えないなと思って。違和感なく振っていたので、じゃあ良いかと。もともとハチャメチャですしね(笑)」。渋野の意見を尊重する形で、新しいチャレンジはスタートした。
 
グリップはゴルフおいてクラブと体を結ぶ唯一の接点で、握り方を変えるというのはかなりの大ごと。ましてや、シーズン中。「だいたい変えるのを止めますよね」と青木コーチは笑うが、そう頭で思っていても止めなかった理由とは何だったのか。
 
「やるっていうから、これでどうにかするしかないんだなと。そして、どうにかしていかないといけないのが自分。とりあえずやってみるかと」。渋野の意見を尊重し、チームとして一歩目を踏み出した。
 
■感覚やショットに変化は?
 
ドライバーからアプローチ、そしてバンカーショットまでのパターを除くすべてのクラブをベースボールグリップで握ることになった。初めてわずか5日目ながら、大会初日は2アンダーの「70」でプレー。「自分が思っていたよりはスコアも出ていた」と、渋野は初めての実戦を振り返る。
 
感覚の変化については「左手の感覚は前よりも強くなったような気がする。右手(の感覚)も重要だと思うけど、それはまだちゃんとわかっていない状態」。まだ始めて間もないこともあるが、この細かい感覚についてはこれから研ぎ澄ませていきたいところ。新グリップについて「長い目で見ています」と長期的に取り組んでいきたいと話す。
 
グリップ握り方を変えたことと、グリップの下巻きテープの巻き数を変えて、太くしたことには直接的な結びつきはない。「普通に持っているときから右手が遊んでいるかなと思っていました。太くしようかとコーチと先々週くらいから話はしていたので、グリップの持ち方を変えたからではないです」とした。
 
■新スイングに向けて「近道になったと思う」
 
トップを低くするシャロースイングから、高く立てて下ろすスイングへと改造を行っているが、その完成に向けても「個人的には近道になったと思っている」と明かす。そう断言できる一番の理由は「球筋」。もともと右に出て左に曲がっていくドローが持ち球だったが、スイング改造をしているなかでいまは、右に曲がっていくフェードの球になってしまうことも多かった。「打ちたくて打っているわけではないけど、スイングを変える過程でそれは仕方ないと青木さんにも言われているし、今はそれを利用している」とこれまでは話していたが、ベースボールグリップにしたことで理想とするドローボールが出始めているという。
 
「普通に振って右に出て曲がるというのがない。右にいってもそのまま真っすぐだし、左は若干あるけど、いいボールが出たときはちょっとドロー。いままであまりなかったですね」。イメージする持ち球を打てる回数が増えたことは、自信にもつながっていく。飛距離についても「ほぼほぼ変わらないし、良い当たりをすればちょっといまのほうが伸びた感覚はある」と好感触を得ている。
 
■左手の負担軽減となるか
 
ベースボールグリップは左手の親指を右手で握り込まないため、その部分への負担軽減になるとも言われている。かつて丸山茂樹は左手親指の亜脱臼に苦しみ、2017年には手術を受けた。そして取り入れたのがベースボールグリップ。「これに出会ってなかったら引退していたかも」(丸山)と話すなど、救いの手であったことには間違いがない。渋野は4月から悩まされている左手の痛みとこのグリップ変更について、直接的な関係性は明らかにしていない。それでも負担軽減になることは期待される。
 
前戦の「ブリヂストンレディス」ではつけられていた左手のテーピングは見られず。痛みが少ないなかで、最近は練習ができているという。「練習できるのはすごい幸せなこと。やっぱり練習していると、自信を持って打てるなというのは感じたので、練習が楽しくなっています」と、前向きな言葉も多く飛び出している。
 
■青木コーチの見解は…
 
まずは大会初日を終え、青木コーチは「きょうの感じはいいんじゃないかなと思う」と振り返った。それでも「とりあえずなので。このあとどういう球が出てくるかはわからないので、それが出てるのを見て話を聞いてやっていければと思います」と慎重な見方も示している。
 
青木コーチ自身もベースボールグリップで握ったことはなかったため、まずは自分も試してみるところから始めた。「あれだけできるのはびっくりですよ。打てちゃうからしょうがないですよね。体の動きは伝えているけど、練習でもいい球は打てていたし」と、渋野の器用さには舌を巻く。
 
渋野の新スイング完成にむけては「なにがゴールかわからないけど…」と話しながらも、進捗具合は10%くらい。「クラブが立って入ってくるようになって、こすってきたなという段階。先週会ったときに次の段階のイメージは伝えていたけど、それがベースボールグリップと合ったのかな」と考えている。
 
新グリップでドローが出るということについては「実際は関係ないと思う」と否定するが、「開いて当たる感覚が減るというのはあるんじゃないですかね」と、違和感をぬぐうひとつのきっかけになる可能性はある。今後については「どうなるかわからない。戻るかもしれないし来年まで続けているかもしれないし」と見通しは定かではない。
 
これまでは6月中旬から始まるメジャーシーズンに照準を合わせたいとも話していたが、その直前での変更。これについては「欲をいえばメジャーでピークがきたらいいけど、そうは言ってられない状況。僕のなかではシードを獲ることや、まずはプレーができるようになることが先ですね」と、ケガなくプレーをし続けられるように「焦らずじっくりやろう」というスタンスでいる。
 
「本人は焦るかもしれないけど、そこは制止してあげないといけないかなと思いますね。彼女のゴルフ人生を考えたときに、体に負担をかけないようにしていきたいと思うし、体の変化をみながら取り組んでいきたい」。唐突なグリップチェンジに驚きながらも、その利点を考えながら、長期的な視点とともに二人三脚で取り組んでいる。(文・笠井あかり)

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