昨年までの渋野は、アプローチ時はひたすら58度を握り、基本に忠実といっていい寄せに終始していた。だが、さらなるレベルアップや、将来的な米ツアー参戦を見据えて、そこに幅をもたせることがオフの課題に掲げたことだった。そして、この日のスコアロスは「練習をたくさんしていても試合でできなければ意味がない」という意思を、愚直に貫いたからとも言える。
「58度でもいいかなと思う場面もありましたが、試合でやっていかないと自信もつかないし、課題も見つからない。挑戦しました」。これが記者から出た『58度を握ればいい場面もあったのでは?』という質問への渋野の答えだった。この大会を終えると、また1カ月以上試合がない日が続く。それが「挑戦」し続けた理由の一つとも考えることができる。
ホールアウト時は、まだ他の選手の動向次第では予選通過もあり得たが、「(予選を)通る、通らないではなく、自分の問題。自分がやるべきことを練習しないと」と、結果ではなく内容を自らに問うた。瞬間最大風速15.7mという強風の影響については「風が吹いてる方向は分かる。自分のミス」と否定した。
17番のバーディは、残り10ヤードから52度で放ったアプローチが直接カップに決まったもの。これについては「気持ちよかった」と言うが、ただ試合全体を見ると「ポジティブなものはなかった」。この日続けた挑戦を“先行投資”にし、試合のなかで見つけた課題をここから克服していく。