渋野が師事する青木翔コーチが年末に言った一つの言葉が印象的だ。「彼女は飛び級をしてしまった。スキップしてしまったところをもう一回やる」。結果だけを見れば最高のシーズンだったが、まだまだ技術不足、経験不足は否めない。だからこそ、飛び越えてしまった箇所にもう一度戻り、基礎を徹底的に行う必要がある。
そんな境遇であることを渋野自身もよく理解している。
「一からやり直していかないといけない。(19年のことを)思い出す機会はあると思うけど、切り替えます。1年目にこんなに成績が出るとは思っていなかった。20年も自分に期待しないで、自分を裏切ることができるように頑張りたい。初心、感謝の気持ちを絶対に忘れない」
人気沸騰、ゴルフ界のみならずスポーツ界でも一目置かれる立場になった。スポーツの枠を越えて、ワイドショーにもバラエティ番組にも出演オファーが殺到した。そんななかでも、“勘違い”することなく素直に成長の必要性を感じ、「自分で分からないところを助けてもらいたい」と、コーチや周囲の協力なくして、進化はないと痛感している。
メジャー制覇という頂上まで登った19年。一度標高を下げて、真価を高め、そこからまた頂上を目指すのも進化。東京五輪出場、そして金メダル獲得という次なる目標に向かうため、渋野が立ち止まることはない。(文・高桑均)
