<ゴルフ日本シリーズJTカップ 3日目◇6日◇東京よみうりカントリークラブ(東京都)◇7002ヤード・パー70>
泣いても笑っても、あと一日。佳境を迎える賞金王争いで、ランキングトップを走る金子駆大が「66」とスコアを伸ばしたが、この男も負けじと伸ばしてきた。
ランキング3位の蟬川泰果は、5バーディ・1ボギーの「66」をマーク。逆転での賞金王戴冠には優勝が絶対条件という厳しい状況のなか、首位と2打差の5位につけた。
今大会は4年連続4回目の出場で、2023年の優勝を含めすべてトップ10入り。「(相性が)いいのかな」と特別な意識はないようだが、今年もしっかり優勝戦線で最終日を迎える。
初日終了時には首位と6打差があった。ラウンド後には「奇跡が起きて欲しいです」と心情を吐露。まるで“白旗宣言”のようにも聞こえる言葉に、大先輩・谷口徹からは『奇跡は起こるものではなくて、起こすものだ』という有難い鼓舞もあったという。
その言葉に背中を押されるように、日を追うごとに順位を上げていった。ショットに不安はあったものの、応急処置として取り入れた「フェードのイメージ」が奏功し、パーオン率は2日目の61.1%から72.2%へ上昇。あとは「最終日もやりきるだけ」と、運命の一日を待つ。
追う立場で迎えた最終戦だが、逆転賞金王が現実味を帯びる位置に来て緊張感も高まっている。「手汗でびちゃびちゃ」。16番、17番ではティショットが乱れたが、それも緊張の表れ。「しびれました」と、首位を捕らえたい気持ちがやや先走った結果だった。
アマチュア時代の勝利を含めツアー通算5勝。賞金王を争う金子、大岩龍一よりも多い勝利数を誇る。3人の中で勝ち方を最も知る男だが、ビッグタイトルを前に「寝る前も考えてしまう」と、日に日にプレッシャーがのしかかる。
1985年以降、最終戦で逆転賞金王を成し遂げたのは3例。2000年の片山晋呉(優勝)、2017年の宮里優作(優勝)、昨年の金谷拓実(単独3位)で、いずれも賞金ランキング2位からの逆転だった。蟬川が戴冠となれば4例目で、賞金ランキング3位からの逆転は史上最も低い順位からの逆転となる。
大逆転の可能性を残して迎える最終日。あくまで挑戦者の気持ちは忘れない。「ティショットからセカンド、パターまで、自分のアグレッシブさを出していければいいなと思います」。持ち前の爆発力が、冷たい空気に包まれた東京よみうりを熱くするはずだ。(文・齊藤啓介)
