これも「寄せにいくのではなく、3パットのリスクは受け入れて狙った」。フックラインを薄めに読んでしっかり打って決めきると、最近では珍しく右の拳を握って吠える大きなアクションを見せた。このイーグルで一気にトップと1打差まで迫った。
この勢いのまま、最難関の18番パー3のティショットも「普段はあのロケーションでバーディはほぼ狙わないですけど、いいショットが打てればピンの左1メートルにつくイメージで打った」と果敢にピンを狙った。しかし、「集中できていたし、乗れていましたけど、気持ちが前に出てしまった」とピン奥6メートルにオン。これを決めることはできず、1つ後ろの組を回っていた谷原秀人がトータル12アンダーまで伸ばしてホールアウトしたことで、優勝の可能性は潰えた。
この日、石川がみせたアグレッシブなゴルフは、この1年間封印してきたものだ。ボギーやダブルボギーのリスクを避け、ピンを狙うホールとそうでないホールのメリハリをつけて戦ってきた。以前は全ホールで握っていたドライバーも、いまはリスクがあれば握らない。優勝した「三井住友VISA太平洋マスターズ」でも、18番パー5ではプレーオフの2ホールも合わせて、一度もドライバーを打たなかった。
「最後の17番はこの1年間全然やってこなかった攻め方。VISAのときでもやらなかったアグレッシブにリスクを取ってプレーして、すごく楽しかった。いまの自分の力量もわかったので、すごく良かったです」
20年から3年間かけてスイング改造に取り組むとともに、コースマネジメントも変化させてきた。それは石川のパーオン率に表れている。3勝を挙げた19年は65.6%で33位タイだったが、今シーズンは69.1%で22位と数字が上がっている。「ピンばっかり狙うと狭い方に外れるリスクがあるので、それだとパーオン率の数字は下がる。代わりにバーディ率が上がるけど、トラブルでボギーになる確率が増えたり、ダブルボギーの可能性も上がるリスクがある」と話す。
