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蝉川泰果が貫いた“守って勝つ”より“攻めて魅せる”ゴルフ「セーフティは面白くない」

蝉川泰果が貫いた“守って勝つ”より“攻めて魅せる”ゴルフ「セーフティは面白くない」

所属 ALBA Net
下村 耕平 / Kohei Shimomura

配信日時:2022年10月24日 08時01分

ところがここでもそれまでの71ホールと同じように、「あれだけのギャラリーが見ているんだったらピタッといきたい」と蝉川は果敢にピンを狙う。しかし、8番アイアンをしっかり振り抜いたセカンドショットは「引っかかってしまった」と左のバンカーへ。3打目のやや左足下がりの難しいバンカーショットは、ピンをオーバーしてエッジまで転がった。

ただ、比嘉がバーディパットを外したため、エッジからの5メートルを2つで沈めれば優勝という状況に変わる。パターで確実に寄せてボギーで良かった。しかし蝉川はこれを沈めてミラクルパーセーブ。大きなガッツポーズで喜びを表現した。優勝がかかったどんな選手でも緊張する場面で、「2パットとは考えていたんですけど、ワンパットでいければいいという気持ちは60%くらいありました。ああいったパーパットが入るということは、自分は持っているなと感じました」と言ってのける。

最終18番のプレーに蝉川のやりたいゴルフが凝縮されていた。そんな彼が意識しているのは「ギャラリー目線」だ。バーディ、ボギーで追いつかれる18番では「バーディを獲ることしか考えていませんでした。普通にセーフティに打って手前に乗せて優勝というかたちよりも、攻めていった結果がダメでもギャラリーの方は絶対評価してくれる」とセカンドショットで果敢にピンを狙った理由を明かす。

さらに、この大事な日本タイトルがかかった最終日に「自分が勝ちに徹するゴルフよりも、観に来てくれている人に、面白いと思ってもらえることを一番に考えてプレーしていました」というのだ。自分よりもギャラリー。優勝インタビューではあまり聞いたことがない。

「あれだけのギャラリーの方が見ているなかで、自分がセーフティに打って面白くない戦いをしたら、やっぱりギャラリーの方は離れていくんだろうなと。ギャラリーの方の目線で考えると、すごいプレーを観に来てくれていると思うので、1打でもアマチュアの方が打てないショットだったり、アプローチだったりを観てもらいたい。それで沸いてもらえると自分自身もすごく楽しい。これからも面白いゴルフをやっていきたいと思います」

地元兵庫の開催ということもあり、蝉川の組には多くのギャラリーがついた。彼自身はまだアマチュアなのだが、一般アマチュアのエンジョイゴルフでは、聞くことのないドライバーのすさまじいインパクト音にボールが風を切り裂く音、見たことのないめくれ上がっていく高い弾道のアイアンショットは、多くのギャラリーを魅了し記憶に残ったに違いない。

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