ゴルフで風の影響、あまり気にしてない? 空気を味方に飛距離を伸ばすゴルフボール、5mの逆風で20ヤード飛距離が減
プロゴルファーは雨より風を嫌がるという話をよく聞きます。これは、ゴルフボールに対する風の影響がそれだけ大きいということを意味しています。
配信日時:2023年10月26日 03時23分
先日、習志野CCで開催された米国PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の2ラウンド(10月20日金曜日)は南西の風・最大瞬間風速16.5メートルという強風が吹き、多くの選手がスコアメイクに苦労していました。
世界のトップ選手といえども、風による影響は避けられないことです。ZOZOチャンピオンシップに限りませんが、出場していたプロは芝生をちぎり、風向きを確認する動作を時々見かけます。プロの世界では、1メートルの精度で距離を打ち分けられるかが勝負の分かれ目なので、それだけ風に対して敏感になっています。
ドライバーで200ヤードを打ったときの、ボールが空中を飛ぶ時間は約6秒程度。この6秒間に、例えば向かい風(アゲインスト)が5m/sで吹いていれば、その間ずっと影響を受けて飛距離が落ちてしまうのは当然のことになります。風の影響について、ブリヂストンスポーツに聞いてみると、ヘッドスピード42m/s、ボール初速60 m/s、打出角10度、スピン3000rpmでシュミュレーションすると、飛距離は無風の時は234.3ヤードですが、アゲインスト5m/sの時は216.1ヤード、10m/sの時は191.9ヤードと40ヤード以上飛距離が落ちます。一方、フォロー5m/sの時は245.7ヤード、10m/sの時は250.6ヤードと16.4ヤード飛距離が伸びます。アゲインストの影響が大きいのは、ボールはバックスピンしており、ディンプル効果も合わせ、揚力が増えいわゆる“吹き上がる”傾向になるからです。横方向からの風は当然方向性にも影響するので、左右の曲がり幅を増大させることにも作用します。
そのディンプルの役割は、回転するゴルフボールの空気の流れをスムーズにして上に浮き上がらせる力「揚力」を生み出し、前に進む力を阻害する「抗力」を減らすことです。もしディンプルがないと1/3ぐらいしか飛びません。ディンプルが空気の流れを味方につけるので、風の影響をモロに受けてもまだ飛距離の減少が少ないといえますが、飛距離が伸びる分だけ滞空時間が長くなり、影響を強く受けるともいえます。
実際のゴルフでは、風が一定に吹いているだけでなく斜めに吹いたり、横風だったりして複雑な風速、風向で、それだけ風を読むことが難しくなります。ちなみに風の目安は、気象庁の風力階級表で、「風速5m/s:木の葉や細い枝がたえず動く、旗がはためく」「風速10m/s:葉の茂った樹木がゆれ、池や沼にも波頭がたつ」ことだそうです。どの方向からどれくらいの強さの風が吹いているかを把握することは、ショットの成否に大きく影響するので、たとえ読めなくても、“ゴルフでは風を意識”するというクセをつけておきましょう。
プロは多くの経験を積んで、ボールに対する風の影響の大きさを体感しているので、使用する番手や打つ強さや、風向きによって打つ方向を変えています。また、同伴競技者のボールの風の影響をみて、絶えず参考にしています。一方、アマチュアは、風の影響を軽視する傾向が強いので、何も考えずに通常通り打ってしまうので、予想より飛ばなかったり、曲がったりして残念な結果になってしまいます。
ボールメーカーも風の影響を出来るだけ少なくするディンプルの開発はしていますが、影響を避けられないのが現状です。アマチュアゴルファーも風を読んでみれば、ゴルフの面白さや奥深さをより感じることができるでしょう。特にこれからの時期は強風が吹くことも多くなる季節。自分が思っているより数段影響がある、ということを念頭にプレーしてはいかがでしょうか。
(取材/文・嶋崎平人)