タイトリストのボールラインナップにおいて、『プロV1・プロV1x』にハマらないある特定層のためのCPO(Custom Performance Option)という知る人ぞ知る存在から、いまや欠かせない「第三の選択肢」へと昇り詰めたモデルがある。サイドスタンプの左に刻まれた、小さな「–(ダッシュ)」がその証——。
マサチューセッツ州フェアヘブンから届いたアクシネット社の最新情報と、日本で行われた製品説明会での生々しい証言をもとに、1月21日に世界同時発売となる新しい『プロV1x レフトダッシュ(Pro V1x Left Dash)』についてレポートしていきたい。
■23年に一旦完成するも、設計し直す
「新製品だからといって、ただ新しいというだけで製品を本格導入することはありません。より優れた製品でなければならず、プレーヤーに認められなければならないのです」と語るのは、ゴルフボール研究開発のシニアバイスプレジデント、マイク・マドソン氏だ。今作の開発に実に4年以上もの歳月を費やしたとか。
なぜ時間がかかったのか。実は、開発チームは2023年4月に一度「最終候補」となる『レフトダッシュ』のプロトタイプを完成させていたという。が、ツアー検証プロセスを担うフォーディー・ピッツ氏がPGAツアーに持ち込んでテストを繰り返すと、意外な壁にぶつかった。
「素晴らしい打感で飛距離も出ていましたが、ショートアイアンでスピン量が上がりすぎていました。これではスタンダードな『Pro V1x』に近づきすぎており、『レフトダッシュ』のDNAから逸脱しているように思えたのです」(ピッツ氏)
開発チームは、迷わず設計図を白紙に戻した。全体の数%に過ぎない少数派だが、ターゲットゴルファーが『レフトダッシュ』に求めるのは、あくまで「圧倒的なスピード」と「多過ぎるバックスピンを抑える」こと。この原点に立ち返って設計し直したことで、次世代の『レフトダッシュ』がついに誕生したのである。
■前作より「フェースに乗る」!?
新型の最大の特徴は、新配合の「高勾配デュアルコア」と「より厚いケーシング層」の組み合わせだ。これにより、ボール初速がさらに高まり、ドライバーを中心としたスピン量が抑えられている。(詳しくは画像の幡地隆寛・阿久津未来也・下家秀琉のトラックマンの1Wと7Iの試打計測画面参照)
面白いのはそのフィーリングで、日本でのテストでは理屈では説明のつかない「感覚の逆転」が起きていた。コンプレッション(硬さ)は前作と変わらず、むしろ構造的には「弾き」を強めたはずなのだが、試したプロ(特に幡地隆寛)やアクシネットジャパンインクのプロに近い腕前を持つ社員たちから意外な言葉が漏れた。
「プロV1やプロV1xよりしっかりめの打感だけど、以前のレフトダッシュよりインパクトで食いつきが良くなって感じる。(アプローチで)フェースに乗る時間が少し長くなって、より操作性が上がったんじゃないかな」
昨季初優勝を挙げた阿久津未来也(プロV1x)は「プロV1・プロV1xよりは明らかに硬め」と言い、下家秀琉(プロV1)も「ロングゲームで低スピン」と自身の好みとは異なる様子だったが、一様にアプローチで「スピン量がある程度入る止めやすさ」や「タテの距離感や操作性」を評価。同社のボール担当ディレクターの向井伸吾氏も困惑気味にこう話す。
「アメリカのR&D(研究開発チーム)に問い合わせたのですが、新しい『レフトダッシュ』に構造上『食いつきが増した』と感じる要素は思い当たらないと。ただ、コア、ケース層、カバーのトータルバランスの結果として【そう感じるケースもある】としか、現時点では言えません。いい意味で、我々もその理由を探している最中なんです」
前作の開発時から7年越しとなる正統進化させる過程で、新型には数値化できない「魔法のフィーリング」が宿っていた。これらは打点がブレないプロ領域での話しだが、我々アマチュアにはそれとは異質な「打感」の問題も。それは「重さ」だ。
■トウに外すアマは「重く」感じがち
HS47m/sの記者は、暑い夏は前作の『レフトダッシュ』を好んできたが、その硬めで重い打感に「寒い時季はしんどそう」と敬遠しがちだった。が、幡地・阿久津・下家の3人からは「重い/軽い」との表現が聞かれなかった。向井氏は「トウ側に打点を外す人は、打感を“重い”と表現されがちです」と言う。
かくいう記者もトウ側に打点を大きく外しがちなタイプ。ドライバーで感じた打感は3機種のモデル差よりも、打点ズレによる影響が大きく、芯に当たると当たり負けによる捩れが少ないため、新・旧『レフトダッシュ』『プロV1x』『プロV1』で打感の差をさほど感じなかった。
が、硬めな前作『レフトダッシュ』で激しくトウ側に外した場合はやはり「ずっしり」重く、新型もトウ側だと重めなものの、若干前作よりもマシに感じた。ややヒール寄り打点では一転して、新『レフトダッシュ』の打感に“重さ”を感じず、寒い冬のしんどい硬さは、トップに近い大ミスの時だけだった。(アプローチやアイアンも似た傾向)
■あなたはどの『プロV1』を選ぶ?
「ダッシュプレーヤーなら、新しいダッシュをプレーするのがとても楽しみになるはず。好きなところはすべてそのままに、さらに進化させたからです。ティショットの低スピンはそのままでスピードと飛距離がアップし、風への抵抗も軽減されました」(マドソン氏)
と、前作と不変のポジションをキープする新型『レフトダッシュ』。1月21日から店頭に並ぶが、米国タイトリストのフィッティングアプリでは約6〜8%のゴルファーに「第一候補」と推奨されているとか。ティショットでバックスピンが多過ぎる人が試すと捗りそうだ。(編集部M・K)