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苦手な3Wが何故? HS40m/sの識者が惚れた『RMX DD』のヤバい実力「重心設計がやさしく上がる黄金比」

もう「ぶっ飛ぶだけ」とは、言わせない!? ヤマハ『RMX』FWが、重要なターニングポイントを迎えていた!

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2025年11月21日 09時45分

ヤマハ『RMX』FWと言えば、前作まで2代に渡ってチタンフェースを採用、叩けば叩くほど伸びる強弾道のぶっ飛び性能で人気となっていた。ところが、最新作『RMX DD』では「万人の打ちやすさ」を目指して、フェース素材やヘッド構造に変更が加えられた。

「えっ、チタンやめたの!?」と思ったゴルファーもかなり多そうなため、気になる新作の実力を3Wに苦手意識を持つギアコーチの筒康博(HS40m/s)に『RMX DD』を試してもらった。チタンじゃない3Wは、はたしてどう評価されるか!?
 
そもそも、ヤマハの『RMX』FWは、飛びにこだわる層から絶大な支持を受けてきた。チタンフェースの強烈な弾きに、叩けば叩くほど伸びる強弾道など、そのぶっ飛び性能は数多あるFWの中でも間違いなくトップクラスで、特に22年モデルの前々作『VD』は多くの男女プロが契約外で使用した。
 

飛ぶ3Wを好むのは男子プロだけ!?

 
小ぶりになった24年モデルの前作『RMX VD』も飛びが高く評価され、今平周吾がドライバーを抜く“3W二刀流”という奇策で2年前の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で優勝したことも記憶に新しい。このエピソードほど『RMX VD』FWの飛びと実力を証明するものはないだろう。

一方で課題もあった。たしかに『RMX』FWの強弾道はパワーのある人に有利だが、HS40m/s以下の非力な層から「球が上がらない」とネガティブな反応も。男子プロを例に、アスリートゴルファーでなければ「打ちこなせない」と嘆く契約女子プロもいた。
 
そのため26年モデルの『RMX DD』FWは従来よりも幅広い層にやさしく打てる設計になり、上がりやすさや寛容性を引き上げたとか。結果、ルーキーとしてレギュラーツアーに挑んだ高木優奈が『RMX DD』FWとUTをすぐさま投入、好感触をつかんでいた。
 

高木優奈「RMX DDは止めやすい」

 
「私は飛距離が出ないタイプ。グリーンを狙うショットでFWやUTの出番が多くあります。最新の『RMX DD』は適度にスピンが入るので安心して狙えるクラブになりました明らかに弾道が高いですし、グリーンをキャッチしやすいです。左にも行きにくいので、持ち球のフェードが打ちやすいことも気に入っています」(高木)

高木の平均飛距離は236.15ヤード(59位)で距離が出るタイプではないからこそ、『RMX DD FW』の上がりやすさに魅力を感じたよう。また、2度の手術を乗り越えてツアー復帰を目指す、契約プロの植竹希望も『RMX DD』FWの性能を絶賛するひとりで、強弾道が絶賛された前作から一変して、新作について女子プロたちは「球が上がる」と口を揃える。性能面でビッグチェンジが起きたことは間違いなさそうだ。

「『RMX DD』FWはめっちゃ上がります。1Wと変わらない高さが出ることに驚きましたし、くっつくような打感も好き。実はチタンが少し苦手だったので、今回のFWはかなり大好きです。スピンコントロールもできるし、高さも調整しやすいので、止めることもコロがすこともできる。今までで一番何でもできるFWですね」(植竹)
 

『RMX DD』は下めヒットにも強い

 
女子プロは評価しても、FWにシビアな識者はどうか。本誌連載「新・ギア総研」でお馴染みの筒康博HS40m/sで3Wの上がりにくさに悩み、パワーがなくても打てるFWを精力的に研究してきた。当然、歴代『RMX』FWもテスト済みだが「上がりやすい」と言われる新作をどう評価するのか。

筒康博/インドアゴルフKz亀戸店ヘッドコーチとして、日々アマチュアの悩みに応える“ギアコーチ”。最新ギアからクラブの歴史まで豊富過ぎる知識を持つ

筒康博/インドアゴルフKz亀戸店ヘッドコーチとして、日々アマチュアの悩みに応える“ギアコーチ”。最新ギアからクラブの歴史まで豊富過ぎる知識を持つ

早速、ロフト15度の3Wを打つなり「苦手な3Wなのにめちゃくちゃ上がる! マレージングフェースに変わったと聞きましたが、弾きの良さはむしろ高まっていて、スイートエリアはより広く感じます。特に上下の打点ブレに強くなっていて、下めに当たったのにある程度上がってくれますよ」と喜ぶ。
 
チタンからマレージングに変わった理由の一つに、フェースの「薄肉化」があった。『RMX DD』FWは前作比で約25%も薄肉化した「極薄偏肉フェース」を採用し、反発性能が約10%も向上したとか。特にアマチュアのミスで起こりがちな地面から16mm打点の反発が上がったことを筒は体感していた。

『RMX DD FW』の3Wを試打した筒。打ち出し角と最高到達点に明らかな変化があったと分析する

『RMX DD FW』の3Wを試打した筒。打ち出し角と最高到達点に明らかな変化があったと分析する

というのも、弾道計測器「SC4」を使用した筒の数値は、ボール初速60.5m/sで打出角12.3度、スピン量3,290rpmでキャリー210.3ヤード、トータル233.5ヤード。注目なのは、最高到達点が22.3メートルまで出ていたことだと言う。
 
「HS40m/sの人に【使える3W】の性能を考える上で、最高到達点が20メートルを超えるかどうかは一つの基準です。6階建マンションを超える高さですから、3Wの弾道としては十分。特に『RMX DD』の3Wは下めに当たっても16〜18メートルほど最高到達点が出ていて、かなり上がりやすい3Wだと言えます」(筒)

比較用に、前作『RMX VD』の3Wも打ってもらったが、ナイスショットで最高到達点が19メートルほど、下め打点は10メートルを切るケースも……。上がりにくいクラブは無意識に高さを出そうとアオる動きも出やすい。結果、大ダフリやチョロなど【許容できないミス】の連鎖にも繋がりがちだと指摘する。
 
「FWで許容されるミスは“ハーフトップ”だと考えます。左右の曲がりを抑えながらランを含めて距離を稼げますから。その意味で、下めでも上がって初速が落ちにくいことは3Wを選ぶ上で最も重視してほしい部分。『RMX DD』はそこが高レベルです」(筒)

『RMX DD FW』の下めヒットへの強さは、やさしくFWを打ちこなす上で大きなメリットになる

『RMX DD FW』の下めヒットへの強さは、やさしくFWを打ちこなす上で大きなメリットになる

「プロや上級者ほど高さ重視でFWやUTを選ぶのは、ロフトが立つとスピン量より【狙った高さに打ち出せるか】が大切だから。ラクに高さが出ると打ち方の細工も必要なく、ライが悪くても安心して打っていけます」と筒。今回は自身でヘッド計測も実施し、前作とデータを比較した筒は「MAX系になった」と変更点を指摘する。
 

前作までは“LS”で「DDは“MAX”に」

 
「重心深さとも関連する『重心角』を見ると、『RMX DD』の3Wは25度。この度合いは外ブラの“MAX”系でよく見る数値で、深過ぎず・浅過ぎずの絶妙で幅広く安定した弾道を得られそう。かたや前作『RMX VD』は22度で“LS”、つまりロースピン系FWの値で、プロでも使い手を選ぶ“LS”から万人に向けの“MAX”へと進化したイメージです。

シャフトの1点でクラブを支えたときにフェースが上を向く度合いが『重心角』。重心が深いほどフェースが上を向き、『重心角』の数値が大きくなる

シャフトの1点でクラブを支えたときにフェースが上を向く度合いが『重心角』。重心が深いほどフェースが上を向き、『重心角』の数値が大きくなる

『重心角』は大き過ぎても、小さ過ぎても極端な性能になってしまいます。25度は、メーカー各社が開発するうちにたどり着いた『重心角』の“黄金比”と言えるのかも。実際、人気モデルは25度前後の数値に収まることが多く、3Wが苦手なボクも試打して明らかに扱いやすく感じます」(筒)
 
さらに指摘したのは、前作からクラブ長が0.5㌅短くなったことだ。
 
「0.5㌅はアイアンなら1番手分で、振りやすさ・当てやすさに違いが出ます。通常なら、短くすると初速や高さも落ちますが、『RMX DD』はそういった性能がむしろ高まった。短くした分ヘッドを重くでき、その余剰重量を設計に生かせた点が大きそう」(筒)

左が前作『RMX VD FW』の3Wで、右が最新モデル『RMX DD FW』の3W。0.5インチの違いは振り心地に大きく影響する

左が前作『RMX VD FW』の3Wで、右が最新モデル『RMX DD FW』の3W。0.5インチの違いは振り心地に大きく影響する

『RMX DD』はヘッド内部に大量のインナーウェイト配し、左右MOI30%アップに成功。クラブ長を短くしたことによる余剰重量の創出が、万人向けの性能に一役買ったのは間違いなさそうだ。『RMX DD』は女子プロや一般ゴルファーからUTも高く評価されている。そこで、3W同様4Uも計測をしてもらった。
 

UTは“ウッド顔”でつながり◎

 
「シャフト軸線からどれだけ出っ刃かの【FP】を測ると、『RMX DD』の4Uは14.2mmで、3Wが15.2mm、5Wが15.7mmと似ていました。通常、ロフトが寝るほどFPは増えがちですが、顔の流れに統一感を感じます。FWと同じ感覚で構えられて球を拾いやすく、ラクに上がるイメージが湧きます。

FWからUTにかけて顔の流れに統一感があり、組み合わせて使いやすいことも『RMX DD』シリーズのメリットだ

FWからUTにかけて顔の流れに統一感があり、組み合わせて使いやすいことも『RMX DD』シリーズのメリットだ

【重心角】も特徴的で、FWより小さい18度。ロフトが22度と寝ている分、打出角が出やすいため、余分なスピンで距離をロスしない設計意図にも感じます。打つと最高到達点が21.3メートルで、キャリー184.0ヤード、トータル203.8ヤード。コースで打ち込んで止める球も打ちやすそう」(筒)
 
『RMX DD』シリーズのFW・UTの分析を終えた筒は、アベレージゴルファーにとっての打ちやすさを徹底追求したクラブだと言う。

「FWやUTはちょっとした設計の違いで振り心地や弾道が変わるクラブ。そして、アベレージゴルファーにとって、長くてロフトが立っていて打ちこなすのが難しい面もあります。そんな中で『RMX DD』シリーズは、顔や内部構造で、とことん打ちやすさにこだわっています。
 
ボク自身、上がりにくさに悩んできて、何度も3Wを買い替え試してきましたが、『RMX DD FW』はかなり理想に近い性能でした。UTを含めて、セットで使いやすい工夫もされていますし、非力なゴルファーのロングショットで大きな武器になりそうです」(筒)

「飛ぶけど使い手を選ぶ」から、「誰でもやさしく飛ぶ」クラブへ。ヤマハのFW&UTは今作『RMX DD』シリーズで、確実にターニングポイントを迎えたと記憶されるだろう。
 
◉取材協力/インドアゴルフレンジKz亀戸店
◉選手写真/GettyImages
◉撮影・構成/田辺直喜


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