米国ツアー参戦以来、ティショット部門2位
注目の飛距離は当たると270、80ヤードが当たり前。そして正確性も持ち合わせている。今季から新たに公表されたスコアへの貢献度を示す「ストロークス・ゲインド」のティショット部門で、21年6月からここまでネリー・コルダ(米国)に次いで2位につける。
「全米女子オープン」を制したのは『SIM2 MAX』ドライバー(シャフトはイミドアンドサンズ)だったが、昨年9月末からキャロウェイ『EPIC SPEED』への移行で三菱ケミカル『テンセイProホワイト1K』の50Sへとシャフトを替えた。
『テンセイProホワイト1K』は、ライアン・オトゥール(50S)やパク・ヒヨン(50S)、インビー・パーク(50R)も愛用しており、直近で発表された『テンセイProオレンジ1K』を含め、『テンセイ1K』シリーズの存在がにわかに気になるところ。
そこで、改めて『テンセイProホワイト1K』が、どんなシャフトか? 振り返っておこう。そもそも『1K』とはどういう意味なのか。三菱ケミカルの説明はこうだ。
手元の『1Kクロス』がしなやか!
先日発表された『テンセイProオレンジ1K』を打った時の筆者の感想ともピタリと符号する。いい意味で、なめらか。切り返しで手元が多少緩く感じた『テンセイCK Proオレンジ』より『テンセイProオレンジ1K』の方が、シャフト全長まで“1本が繋がった”感じがした。
『テンセイCK Proホワイト』は未経験だが、【1Kクロス】の効用を先日打った『オレンジ1K』の図式に当てはめると『ホワイト1K』が分かりやすい。たしかに同作は素振りから手元部の広範囲のしなやかさが体感でき、中間部から先端は “ホワイト系らしい”。 左へいきづらく強弾道フェードが打ちやすかった。
女子プロの“アスリート化”は使用シャフトを変える?
【2021年/2020年の平均飛距離】
・280ヤード以上―――2人/3人
・270ヤード以上―――13人/5人(+8人)
・260ヤード以上―――58人/32人(+26人)
・250ヤード以上―――119人/84人(+35人)
ちなみに、5年前の2015年と比較すると、どうなるか?
【2021年/2015年の平均飛距離】
・280ヤード以上―――2人/0人(+2人)
・270ヤード以上―――13人/1人(+12人)
・260ヤード以上―――58人/15人(+43人)
・250ヤード以上―――119人/65人(+54人)
そして、宮里藍が世界ランク1位になった2010年と比べると?
【2021年/2010年の平均飛距離】
・280ヤード以上―――2人/0人(+2人)
・270ヤード以上―――13人/1人(+12人)
・260ヤード以上―――58人/13人(+45人)
・250ヤード以上―――119人/54人(+65人)
というように、畑岡奈紗、渋野日向子、古江彩佳、そして笹生優花が挑む現代の米国女子ツアーの飛距離レベルは凄まじい高水準になっていた。では、国内女子ツアーはどうか?
日本の女子ツアーの状況は?
・280ヤード以上―――人/0人
・270ヤード以上―――人/0人
・260ヤード以上―――人/1人(−1人)
・250ヤード以上―――8人/7人(+1人)
・240ヤード以上―――22人/31人(−9人)
・230ヤード以上―――66人/83人(−17人)
昨年はコロナ禍で統合されて試合数が異なる影響か、平均飛距離を2019年と比べるとダウンが目立った。そこで、19年と18年を比較してみる。
【2019年/2018年の平均飛距離】
・280ヤード以上―――人
・270ヤード以上―――人
・260ヤード以上―――1人/0(+1人)
・250ヤード以上―――7人/7人(−)
・240ヤード以上―――31人/28人(+3人)
・230ヤード以上―――83人/71人(+12人)
と、若い選手の加入と共に、飛ぶ選手が増加傾向なのは分かる。そして、国内女子ツアーがドライビングディスタンスの計測を始めたのは2017年シーズンから。2015年以前の実態は不明だが、米国女子ツアーよりも飛ばし屋の増加は控えめに映る。
これらの結果から「日本と全く違う状況が今後の米国女子ツアーで起こりそう」と予想するのは筆者だけだろうか。そう、国内女子ツアーで圧倒的な使用率を誇るフジクラと、今後の米国女子ツアーの動向だ。
『ベンタス』旋風を三菱が巻き返し!?
また、出場選手が増えた「ゲインブリッジLPGA」でもフジクラに1人差の32人をカウントしており、1Wシャフト使用率26.7%で僅差の2位。FWシャフトをカウントしても33人おり、フジクラを巻き返す勢いを感じる。
元々『ベンタス』登場前まで、長きに渡ってPGAツアー使用率1位だった三菱のこと。選手のパワーアップに伴い、求められるのは左へ行きづらい元調子。そして、パワーロスのない先端しっかりのシャフトという歴史がつきものだ。
一概に調子でつかまりを判断するのはナンセンスなことは百も承知だが、国内女子ツアーから飛び出して「世界へ挑戦するパワフルな次代の選手たちが三菱を選ぶ」のは自然なことなのかもしれない。
Text/Mikiro Nagaoka