完成された技術。違いが出るのは「ヘッド」とボール
「全米オープン」で待望のメジャー制覇をはたして世界ランク1位の座につくと、2022年の1月を終えた現在までずっと王座を維持。猛者たちひしめく世界最高峰の舞台で、このポジションを保つ難しさは誰もが知る所で、キャロウェイ契約は完全に【正解】だった。
ところで、彼のキャリアでずっと変わらないのが、そのシャフトである。特にウッドの『アルディラ ツアーグリーン』はアマ時代から使用しており、つまり2020年以前までと、21年以降とでは【ヘッドとボールが変わっただけ】。この違いが実に大きかった。
▶▶▶ラーム3試合で−61。笹生優花2試合で−21。【ボール変更】はリスクなのか?
飛びに7割も影響する「ボールスピード」は?
2018年/ 177.12mph(79.18m/s)24位
2019年/ 176.62mph(78.96m/s)33位
2020年/ 175.89mph(78.63m/s)35位
――――――キャロウェイ契約へ――――――
2021年/ 178.46mph(79.78m/s)23位
2022年/ 180.29mph(80.60m/s)17位
なんと、上記のように2020年と比べて、キャロウェイ契約後の21年は約1.15m/s上昇させていた。そして『ローグST◆◆◆』を投入した今年は大台の180mph台をマーク。契約以前の20年より約2m/sも平均ボールスピードを引き上げることに成功していた。
このデータを見れば、キャロウェイが「さぁ、ボールスピードゲームのはじまりだ!」と謳うのも納得である。2020年終了時点でも、世界ランク2位だったラームのこと。技術的に完成の域に近づく中、ヘッドとボールを替えることで自身の「進化」をしっかり見据え、しっかりと現実にしていた。
開幕戦で13人が変更、ドライバー使用率1位に
ボールスピードUPは、ラームだけではない。昨年『EPIC SPEED◆◆◆』や『MAVRIK Sub Zero』などを使用していた大会比較で、『ローグST』投入で上がっていたのが下記の選手。天候や気温、風の状況で総距離は変わるが、ボールスピードは余程の雨や気温が低気温でない限り、影響を受けにくいはずである。
●キム・シウー(+3.44mph 、22年第2戦)
●クリス・カーク(+1.77mph、22年第2戦)
●アダム・ハドウィン(+1.95mph、22年第3戦)
●フランチェスコ・モリナリ(+2.2mph、22年第4戦)
●マーク・リーシュマン(+1.16mph、22年第4戦)
ラームが『ローグST◆◆◆』を使い始めて3試合目で【+8.71mph(3.89m/s)】を記録したように、他の選手も慣れるほどにその振りが鋭くなり、ボールスピードUPは必至。加えて、もうひとつの慣れによる期待が【FWキープ率】の向上だ。
●アダム・ハドウィン(+5.36%、22年第3戦)
●フランチェスコ・モリナリ(+14.28%、22年第4戦)
●アレックス・ノレン(+16.07%、22年第4戦)
●ザンダー・シャウフェレ(+7.14%、22年第4戦)
●ジョン・ラーム(+5.36%、22年第4戦)
●マーク・リーシュマン(+5.36%、22年第4戦)
●テイラー・グーチ(+3.58%、22年第4戦)
もちろん、風向きや選手の調子にも左右されるが、同じコースでFWキープ率が高まる選手が増えたことは注目に値する。そして、ヘッドに慣れて「曲がらない」となれば、より鋭く振れてボールスピードUPに繋がるサイクルになるだろうか。
笹生優花のティショット指標も2位!
注目の飛距離は当たると270、80ヤードは当たり前だが、正確性も見逃せない。21年のFWキープ率が75.16%で、『ローグST◆◆◆』を投入した22年の2試合でも73.21%と高水準をキープ。シャフトは三菱ケミカル『テンセイProホワイト1K』を継続していた。
スコアへの貢献度を示す「ストローク・ゲインド」のティショット部門で21年6月からここまでネリー・コルダ(米国)に次ぐ2位の笹生。『ローグST◆◆◆』投入後もいきなり6位⇒3位。「素晴らしい年になると確信」と契約時に語った言葉通りだ。
2月に入ってトップ選手も動き出し、ますます競争激化を迎える海外男女ツアー。試合を重ねる度に『ローグST』シリーズがどう選手の手に馴染んでいくのか? ボールスピードが“ラーム化”していくのは誰なのか? 引き続き動向を追いかけていく。
Text/Mikiro Nagaoka