大型ヘッドのドライバーを使わない戦略
典型的な例は、全英オープンに勝利し、リオ五輪で銀メダルに輝いたヘンリック・ステンソンだろう。ステンソンはバッグにドライバーを入れてはいるものの、ほとんど使うことはなく、ティショットでは3番ウッドを多用している。たまにドライバーを使うと、曲げていることが多いので、やはりドライバーに苦手意識があるのではないだろうか。
2013年に5勝をあげて、故障から復活の兆しを見せたタイガー・ウッズは、今のステンソンのように、その頃はフェアウェイウッドでのティショットを多用していた。タイガー自身が“大型ヘッドへの対応が遅れた”と認めているように、華々しくデビューした当時は200cc弱のドライバーで、キャリアを重ねる間に2倍以上もヘッドが大きくなっているので、いかにタイガーであっても対応するのは容易ではない。
こんな例もある。現在ステップ・アップ・ツアーを中心に戦っている足立由美佳は、今年、2003年発売のタイトリストのドライバー『983K』を試合で使用していた。ヘッド体積は365ccしかなく、現代の女子プロとしては異例の小型ヘッドだ。これもドライバーだけ突出して大きいことの振りにくさを軽減し、セット内での振りやすさを考慮したものではないだろうか。こういう選手が女子にも出てくるのは興味深い。
というのも現在、ドライバーの不調に苦しむプロが少なくないからだ。最近では、シードを復活させた比嘉真美子の例が記憶に新しい。シード落ちした昨年は、ドライバーの不調に苦しみ、ファイナルQTはティショットで3番ウッドを多用することで突破した。今年のシーズン終盤ではドライバーもまずまず復調し、シード復活を果たした。
セットの中で極端に大きなドライバーを使わないという戦略は、近年の飛び重視の3番ウッドの登場が後押ししている。『日本オープン』では、片山晋呉がドライバーを抜くセッティングで5位に入る好プレーを見せた。フェアウェイキープを重視した戦略だが、そこには飛距離が出るスプーンの存在は見逃せない。優勝した『マイナビABCチャンピオンシップ』では、ドライバーに比肩する飛距離をスプーンで叩き出していた。
