年明けからバハマ連戦、コロンビア、パナマなど、普段では行くことのない国々を転戦。「基本はキャディさんと二人での移動です。言葉の問題はありますが、特に大変というのはありません。ツアーのレベルも高いですし、日本でいえばレギュラーツアーと変わりないかもしれません。行って良かったと思います」と、下部ツアーチャレンジ初期段階を振り返る。その後3月からは相次ぐ中止もあって、一度帰国。昨年のQTで上位に入ったかいもあって、今季も日本ツアーの出場権を保有するが、その日本も6月いっぱいまで中止が決まり、国内で調整を続けた。
「国内でも外出はできなかったので、ほとんど家にいることが多かったですし、ジムもやっていなかったので、そういう点でも不安はありました。特にモチベーションが上がらなかったです」。渡米直前に所属する太平洋クラブでのミニ合宿を行ったとはいえ、技術、肉体、気持ちすべての面で100%に仕上げての渡米ではなかった。さらに14日間の待機という厳しい状況でも米下部ツアー参戦を継続するのはなぜか。
下部ツアーの出場権を持つとはいえ小斉平の優先順位は高くない。このままいけば、再開後の2試合目以降は出場も難しい状況だ。「2試合で稼がないと、そのあと出られないので、結果を出さないといけません」と小斉平。「日本の試合が始まれば出たいと思いますが、今の気持ちはアメリカで出続けたいので頑張るだけです」。年初の6試合では予選落ち4回で最高成績は66位タイと決して順調な滑り出しではなかったため、再開後の2試合で米残留を目指す。
スタートダッシュに失敗し、コロナ禍で翻弄されたシーズン序盤。それでも「昔からの夢でしたし、やっぱりPGAツアーでやりたいというのもありますので」と険しい道を進んでいく。「言葉や移動もあって、日本の倍は疲れますけど、日本でもシード権を持っていないので、そういうときだからこそ挑戦できることだと思っています。日本ツアーの上位の選手ならコーン・フェリーでも十分通用すると思いますけど、日本のシードがあるとなかなかそうもいかないでしょうし…」。
PGAツアーに出場するには1年間の下部ツアーを戦い抜いて上位に入り、入れ替え戦を勝ち抜いてようやく一部試合の出場権を得るという仕組み。長期スパンでの挑戦になるため、多くの日本人選手も二の足を踏むのが実情だ。そんななかでも夢を追いかける小斉平。コーン・フェリーと同じ6月11日に華々しく再開するPGAツアーでは、松山英樹や小平智が最高峰の戦いを続ける。その裏でひっそりと再開する下部ツアーで、一人の若者が挑戦の歩みを再び踏み出すことも忘れてはならない。
