アジア太平洋地域No.1アマチュアを決める「アジアパシフィックアマチュア選手権」。17回目を迎えた今年はニュージーランドのテ・アライリンクス・サウスコースが舞台となった。マスターズ、そして全英オープンへの出場権をかけ、アジア太平洋地域の若き才能たちが集結。日本からも7人が出場し、世界への扉を開くべく4日間の戦いに挑んだ。
7人の日本勢がそれぞれの目標を胸にテ・アライリンクスへ
歴代優勝者には松山英樹、金谷拓実、中島啓太が名を連ねるアジアアマ。日本勢にとっても、世界へと羽ばたくきっかけをつかめる特別な舞台だ。
今年は、佐藤快斗(東北福祉大)、本大志(アリゾナ大)、長﨑大星(勇志国際高)、長﨑煌心(東北福祉大)、片野貫一朗(エリム・クリスチャン・カレッジ高)、矢田賢司(有功中)、隅内雅人(日大)の7人が出場した。
昨年、長﨑大星はフィファ・ラオパックディとのプレーオフで敗れ、マスターズ出場まであと一歩に迫りながら涙をのんだ。雪辱を期す長﨑にとって、今年も大きな目標のひとつがアジアアマでの優勝だった。
一方、佐藤快斗は3度目の出場。本大志は米アリゾナ大で腕を磨き、片野はニュージーランド留学中という立場で大会に臨んだ。15歳の矢田賢司にとっては、初めての大きな国際大会。そして4度目の出場となった隅内雅人にとっては、今回が最後のアジアアマだった。
選手それぞれが異なる背景と目標を胸に、アジアの強豪が集う舞台に挑んだ。
佐藤快斗と本大志が存在感 日本勢がリンクスで突きつけられた課題
初日から日本勢の存在感はあった。佐藤が「68」をマークし、3アンダーの5位で発進。2日目には5位タイ、本大志も6位タイにつけ、日本勢6人が決勝ラウンドへと進んだ。
トータルアンダーパーが4人しかいない中で、3日目も佐藤は「70」でスコアをまとめ、トータル3アンダーの4位。首位と4打差で最終日を迎え、2021年の中島啓太以来となる日本勢の優勝にも期待が高まった。
しかし、テ・アライリンクスは選手たちに簡単な攻略を許さなかった。硬い地面、風によって変わる距離、止まりきらないボール、そして速く繊細なグリーン。日本でのプレーとは異なる判断を求められ、ショットの精度だけでなく、刻々と変わる風向きや突然の突風への対応もスコアを左右した。
佐藤も最終日に「77」と苦しみ、トータル3オーバーの9位でフィニッシュ。日本勢最上位という結果を残しながらも、優勝争いを演じるには至らなかった。
「そんなに悪いショットを打っている感じではなかったんですけど、それでもちょっとした1ヤード、2ヤードの違いがボギーにつながっちゃうことが多くて。すごく苦しい一日でした」
わずかな距離の違いがスコアを左右するリンクスの難しさ。最終日は短いパットもカップに嫌われ、風向きの変化にも苦しんだ。それでも、3日目まで優勝を狙える位置で戦えたことは収穫だった。
「何より、このリンクスコースで優勝争いできる位置で最終日を迎えられた。今年6月に行った全英アマの時と違うプレーができたので、そこは良かった」
佐藤は最後のアジアアマと位置づけて臨んだ大会。今回の経験と課題を、目標であるPGAツアーへの道につなげていく。
昨年の雪辱を期した長﨑大星もリンクスの適応に苦しむ
昨年のプレーオフ敗戦を経て、再び優勝を目指した長﨑大星。しかし、今年は得意のパッティングに苦しみ、思うように順位を上げられなかった。
初日からオーバーパーが続き、「自分はパッティングが得意なんですけど、本当に1メートルちょっとでも怪しいぐらいなので。もう少し入ってくれたら」と、なかなか突破口を見いだせずにいた。
昨年の悔しさを晴らすはずだった大会だけに、このままでは終われない。3日目を終え、「まずはアンダーパーで回れたらいい」と話していた長﨑は、最終日に向けてパターのウエイトを軽くし、速いグリーンへの対応を図った。
その調整もあってか、最終日はアンダーパーでプレー。「順位も下の方で、本当に悔しい3日間だったんですけど、今日はアンダーで回れて良かったんじゃないかな」と、最後に少し手応えをつかんだ。
一方で、海外のコースや風への対応が遅れたことも、敗因のひとつに挙げた。
「色々な国や地域で全然コースが違って、難しさも風も違って、そこにまず適応するのが遅かったのが敗因かなと思います」
昨年は優勝まであと一歩に迫った長﨑。今年はリンクスへの適応に苦しんだが、今大会で見つけた課題を糧に、さらに強くなってこの舞台に戻ってくるつもりだ。
最後のアジアアマで初の予選落ち 隅内雅人が味わったグリーン上の苦闘
4度目の出場となった隅内雅人にとって、今年は最後のアジアアマ。これまで2度のトップ5入りを経験してきたが、今回は初めて予選通過を逃した。
特に苦しんだのがグリーン上だった。風が吹くなか、ラインの読みやタッチが合わず、第1ラウンドでは39パット。後半だけで23パットを要した。「初めての20パット超えです」
自分が見たラインと実際のボールの転がりが一致せず、修正しようとしても思い通りにいかない。フラストレーションの溜まるパッティングに、「自分で勝手にやられていました」と、気持ちまで引っ張られてしまったという。
最後のアジアアマを予選落ちで終えた隅内。2022年の初出場から4度の挑戦で得た経験は大きい。
「いろんなところで、いろんな国のすごいコースで、すごくいい経験をさせてもらった。今後ゴルフをしていくうえで、その経験値になると思います」
プロ入りへのステージを見据える隅内にとって、テ・アライリンクスでの戦いもまた、これからのゴルフ人生につながる経験となった。
初めてのアジアアマで見えた課題 初出場組が持ち帰った経験
大会では、順位だけでは測れない経験も選手たちの胸に刻まれた。初出場の長﨑煌心は、日本勢トップとなった佐藤快斗の姿を見て、経験や技術の差を感じていた。
「やっぱり経験の数とか技術的な部分もそうなんですけど、そういうところが結構大きいかなと思います」
トータル25オーバーの56位タイ。悔しい結果に終わったなか、特に苦しんだのがリンクス特有の硬い地面への対応だった。アイアンショットが地面で跳ねるなど、クラブセッティングへの工夫も必要だと思い知らされた。
「これから海外にどんどん挑戦していきたいので、クラブのセッティングから、あとは球筋の面も見直していかないといけないなと思います」。これから海外に挑戦していくうえで、課題を知る貴重な機会となった。
初めて大きな国際大会を経験した矢田賢司も、周囲の選手のレベルの高さに刺激を受けた。「周りのみんながすごく上手いので、もういっぱい学ぶとこもあるしっていう意味で、すごく良かった」。
特に印象に残ったのは、選手たちが弾道計測器を使って自分のデータを確認していたこと。自身も数値を活用した練習を取り入れたいと考えている。来年の出場権獲得に向け、これからはマレーシアでの試合から結果を積み重ねていく。
初出場組にとって、この4日間は自分たちの現在地を知る機会となった。悔しさとともに持ち帰った課題を、次の海外挑戦につなげていく。
フィファ・ラオパックディが連覇 松山英樹に続く快挙「彼の足跡を追いかけたい」
そして、今大会も主役となったのがタイのフィファ・ラオパックディだ。昨年は長﨑大星とのプレーオフを制して優勝。「マスターズ」と「全英オープン」の出場権を手にしたフィファは、今年もその実力を発揮した。初日に「63」をマークして首位に立つと、2日目もトップをキープ。3日目にはザック・スワンウィック(ニュージーランド)に首位を譲ったものの、最終日に再び力を見せつけた。
最終日はスワンウィックを2打差で追う展開。後半の11番でスワンウィックがトリプルボギーを叩いた一方、フィファはバーディを奪って首位に浮上。形勢は逆転し、ここからさらに17番でもバーディを奪い、後続に3打差をつけて大会連覇を達成した。
アジアアマの連覇は、2010、2011年大会を制した松山英樹以来。大会史上2人目の快挙となった。
「松山選手とはまだ会ったことがない。メジャー大会で姿を見たことはあるけど、個人的に話したことはないんだ。彼は日本だけでなく、アジアのゴルフ界にとっても大きな役割を果たしてきた選手。彼と同じように連覇できたことは、本当に大きな名誉だ。素晴らしい選手だし、彼の足跡を追いかけていきたい」
松山への敬意を口にしたフィファ。今回の優勝には、昨年とはまた違った思いがあった。今季は3月以降、優勝から遠ざかり、自分の力に疑問を感じる時期もあったという。
「今年の方が自分を誇りに思う。苦しい1年だったけど、自分を信じることをやめなかった。まだ自分にはできると、ずっと言い聞かせてきた。この優勝で、自分にはまだ勝つ力があると証明できた」
昨年の勝利に続き、今年は苦しいシーズンを乗り越えてつかんだ連覇。アジア太平洋地域のトップアマとして、再びマスターズとセントアンドリュースで開催される全英オープンへ挑戦する。
ゴルフの未来を支えるロレックス 若き才能とともに刻む時間
ゴルフの発展を長年にわたり支えてきたロレックスは、トッププロや世界規模の大会だけではなく、未来を担う若手選手たちにも目を向けている。正確さ、熟達、忍耐力。ゴルフに求められる資質は、ロレックスが大切にしてきた価値観とも重なる。
アーノルド・パーマーとのパートナーシップを起点に、60年近くにわたりゴルフと深い関係を築いてきたロレックス。格式ある大会や伝説的な選手を支えるだけではなく、有望な若手選手たちの挑戦にも寄り添い続けている。
テ・アライリンクスでの4日間。連覇を果たしたフィファ、悔しさを胸に次の挑戦へ向かう日本勢、そして世界の頂点を目指すアジア太平洋地域の選手たち。彼らが歩む道のりは、これからも続いていく。
その挑戦を見守り、ゴルフの未来とともに時を刻むロレックス。若き才能が世界へ羽ばたく瞬間を支える存在として、これからもゴルフの歩みとともにある。(文・齊藤啓介)
