ISPS HANDA・ワールド招待
男女共催、景色も風も異なる2コース、スリルあるカット方式… ISPSの北アイルランド大会で感じた“おもしろみ”
北アイルランドで行われた欧州男子×米国女子×欧州女子の共催大会「ISPS HANDA・ワールド招待」が面白かった!
配信日時:配信日時: 2023年8月21日 03時30分
Round 4 | ||
---|---|---|
順位 | Sc | PLAYER |
1 | -8 | アレクサ・パノ |
2 | -8 | エスター・ヘンセライト |
2 | -8 | ガブリエラ・カウリー |
4 | -7 | ライアン・オトゥール |
5 | -6 | オリビア・コワン |
6 | -5 | アサハラ・ムノス |
6 | -5 | ディクシャ・ダガー |
8 | -4 | チェン・ペイユン |
9 | -3 | キム・メトロー |
10 | -2 | ウィチャネ・メーチャイ |
17日~20日に北アイルランドで行われていた「ISPS HANDA・ワールド招待」の会場を取材すると、“予想がつかないこと”が多く待ち受けていた。DPワールド(欧州男子)ツアー、米国女子ツアー、欧州女子ツアーによる共催とあって、会場に入るとまず男女が同じ場所で練習していることが不思議な感覚。日本でもチャリティマッチなどで男女が一緒にプレーしたりもするが、それはあくまでもツアー外の話。3団体のロゴが入ったフラッグが並んでいる景色も圧巻だ。
ただ、これは海外、特に欧州でプレーしていると、そこまで珍しくもない風景だという。今季から欧州女子ツアーを主戦場にし、この大会にも出場した識西諭里は、「以前、男女同じ組でプレーする大会にも出ましたし、今回は別の組なので違和感とかはないですね」と涼しい表情を浮かべていた。
6月にスウェーデンで行われた「ボルボ・カー・スカンジナビアミックス」は、“ミックス”とあるように男女混合で優勝を争う大会だった。ちなみにISPS HANDA・ワールド招待のティオフは男子→女子→男子→女子…という形で、交互にプレーを開始するのだが、それも新鮮だった。もちろん、ほとんどのホールでティイングエリアの場所は男女で異なる。ただ、例えばガルゴルム・キャッスルGC(以下、ガルゴルム)の9番のように、同じティ(508ヤード)で男子がパー4、女子がパー5というパターンがあるのもおもしろい。
そして予選ラウンドは2つのコースを使用したのだが、そのギャップに何よりも驚かされることになる。2コースを使用する大会というのも海外では決して珍しいものではないが、今回使用されたのは林間コースのガルゴルムと、リンクスのキャッスルロックGC(以下、キャッスル)。雰囲気がまったくと言っていいほど違う。記者は大会2日目に午前はガルゴルム、午後はキャッスルに行ったのだが、その2コースの間は54キロほどあり、車で1時間はみないといけない。日本でいうとだいたい新宿から千葉市に向かうといった感じで、それだけ走ると、近隣の街並みからして変わってくる。
開幕前の選手の想定は、林間で伸ばし、リンクスで耐えるという声がほとんど。西村優菜も、「ガルゴルムの方がグリーンも軟らかいし、こちらが伸ばす方だと考えていました」と話していた。ただ、その後に「これだけ風が吹くと、そんなの関係なくなりますね」という言葉を続けることになる。練習日の天候は非常に穏やかだった2つのコースだが、本戦に入ると、それを見計らったかのように強い風が吹き始めた。こうなるとバーディ合戦が予想されたガルゴルムの“別の表情”が見えるようになる。
景観が大きく異なるだけでなく、その2コースは“風の吹き方”が大きく違う。ガルゴルムは、断続的に風が吹いては止み、方向も急に変わるきまぐれな風を相手にする必要があった。ティでは感じなかった風をセカンド地点では強く感じる、なんていう状況はザラ。それゆえ打ち出す方向や番手選びをよりシビアにさせた。また深いラフに入れると、グリーンを狙うのが急激に難しくなる箇所も多く、特に女子では、出すのが精いっぱいという状況を何度も見かけた。
一方、予選のみ使用されたキャッスルはリンクスらしく、一方向からの風の対応になる。ホールによってフォロー、アゲンストと変わるが、基本風に大きな違いはない。ただ、その強さが半端なものではなかった。歩くだけで精いっぱいという感じで、クラブハウスに戻った時にはヘトヘト。2日目に回った星野陸也が、強いフォローが吹く15番で「プロ最長距離」となる400ヤードを記録し、初めてパー5の2打目をSWで打つ、という出来事があったほどだ。西村は「未知の世界」、識西は「毎ショット涙が出てきた」とその激しさを表現している。ちなみに識西も、2日目の17番で自身最長不倒となる“330ヤードドライブ”を披露した。
この他、男女共催というのが、こんなスリルを生み出す。ガルゴルムのみで行われた決勝ラウンドの初日(3日目)は、男女合わせるので計124人の選手がプレー。それに伴い、3日目終了時点で35位タイまでに入ってない選手を対象にセカンドカットが実施されたのだが、それを突破する駆け引きも必要になる。星野は3日目のスタートから6連続ボギーを叩き、上位争いから一転、このセカンドカットを争う立場になったが、プレッシャーから解放されたラウンド後に「素直に4日目に行かせて欲しいっす(笑)」という“本音”もこぼしたほど。特に前述したような風を相手にするコースとあれば、なかなか“安全圏”を探るのも難しかった。
優勝スコアは男子のダニエル・ブラウン(イングランド)がトータル15アンダー、女子のアレクサ・パノ(米国)がトータル8アンダー。ブラウンは5打差の圧勝だったため、2位のアレックス・フィッツパトリック(イングランド)になるとトータル10アンダーにまで下がる。3日目のガルゴルムは、多くのホールでティが前方に出され、4日間のなかでは比較的イージーなセッティングになっていたが、そこが変わらなければ、さらにガマン合戦の様相を呈していたかもしれない。
ISPS(国際スポーツ振興協会)は、日本の男子ツアーでも4月に「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」という日欧ツアー共催の大会を開催している。この北アイルランドで行われた大会は何かと驚きを提供する同協会の工夫で、ゴルフが持つスリリングな魅力を改めて再確認できる大会といえた。なにより、ひとつの会場で男子と女子のプレーが見られるのは“お得感”も強く、さらに同一条件下で男女のプレーの違いが見られるのも大きな楽しみのひとつになっていたように思える。(文・間宮輝憲)
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