「追い込まれると強いタイプ。だから好き」。極力避けたいであろうプレーオフについては、こんな考えを持っている。ここまで挙げてきた国内ツアー7勝のうち、昨年の「スタンレーレディス」、今年の「明治安田生命レディス」、「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」が、延長戦での直接対決を制して手にしたもの。実に3戦3勝。その“不敗神話”は五輪という舞台でも崩れることがなかった。
朝、背中に痛みを感じ、1番ティに向かう直前まで練習グリーン上でトレーナーからケアを受けるシーンも見られた。呼吸がしづらい、と大きな不安を抱えたなかでのスタートだった。「この位置に来ることができるとは思ってなかった」。連日、猛暑のなかでのプレー。満身創痍ともいえるなかで、「五輪に出ている選手はかっこいい」と憧れてきた場所で最後の力を振り絞った。
112年ぶりにゴルフが五輪競技に復活した2016年リオ大会でも、そして今年もマスターズ王者の松山英樹でさえも届かなかった表彰台に、22歳の女子プロゴルファーが立った。「日本開催で日本人がメダルを獲ることができた。これからゴルフを始める、私もプロになりたいという子どもが増えてくれるとうれしいです」。自分の栄誉のみならず、ゴルフ界の未来につながる“価値ある2位”を稲見は誇った。(文・間宮輝憲)

