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プロテスト前も不安、ツアー開幕前も不安… トップ合格の伊藤愛華は初年度Vが目標「言っただけでは終わらせたくない」【注目ルーキーインタビュー・前編】

昨年のプロテストに現役高校生でトップ合格を果たした伊藤愛華。今週の「ダイキンオーキッドレディス」がプロデビュー戦となるが、開幕前にインタビューを行った。

所属 ALBA Net編集部
小高 拓 / Hiromu Odaka

配信日時:2026年3月2日 12時15分

現役高校生でトップ合格を果たした伊藤愛華。ルーキーイヤー優勝を目指す
現役高校生でトップ合格を果たした伊藤愛華。ルーキーイヤー優勝を目指す (撮影:ALBA)

今週の「ダイキンオーキッドレディス」(沖縄県・琉球ゴルフ倶楽部)で国内女子ツアーが開幕する。注目選手のひとりは昨年のプロテストで、現役高校生ながらトップ合格を果たし、ファイナルQTでは16位に入った伊藤愛華。開幕前にインタビューを行い、今季の意気込みやここまでの道のりを聞いた。

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伊藤の母校・埼玉栄高では、3月5日に3年生の門出を祝う卒業式が行われる。ちょうどその日は国内女子ツアー開幕戦の初日。伊藤は卒業式ではなく、沖縄の地で新たなキャリアをスタートさせる。

今季の目標を聞くと「ルーキーイヤーで優勝することです」ときっぱり。「いろいろなメディアの方に言っているので、言っただけでは終わらせたくないと思っています」とも付け加えた。プロテスト合格後、注目を集めるようになり、多くのメディアの取材に同じように答えており、しっかりと目標を掲げている。

話しを聞いたのは2月上旬だが、開幕戦が近づくにつれて正直な気持ちも出てくる。「不安の方が大きいですね。自分が戦っていけるのか…。開幕からしっかり活躍していきたいと考えています。ただ、いまゴルフの調子が悪いというのもあって、自分の中で掲げている目標と実力が合っていなさすぎて、不安です」と吐露する。

昨年11月のプロテストでは、高校3年生がプロテストを受験できるようになった2019年以降、史上3人目の高校生トップ合格を果たした。強豪・埼玉栄高ゴルフ部の主将を務めていたが、ナショナルチームのメンバーでもなく、日本女子アマやジュニアの全国大会など大きなタイトルはない。すい星のごとく現れたと言っても過言ではない。

プロテスト後に行われた、今季前半戦の出場権をかけたファイナルQTは16位で出場権を獲得。98期生ナンバー1を決める「新人戦」は優勝争いに末、2位と順調に結果を残してきた。掲げた目標をクリアしてもおかしくない、ニューヒロインの誕生を予感させている。

昨年のプロテストは見事にトップ合格を果たした

昨年のプロテストは見事にトップ合格を果たした (撮影:福田文平)

■将来の夢はプロゴルファーだが「ゴルフは好きではなかった」


ゴルフを始めたのは4歳。父・政人さんの影響でクラブを握り、近所の練習場のプロに手ほどきを受けた。小学生の頃には「将来の夢はプロゴルファー」と口にしていたそうだが、内心は「ゴルフは好きではなかったですし、辞めたいと思うことは多かったです」と話す。

小学生の頃から競技に出場していたが、プロを目指して熱心に練習に取り組んでいたわけではない。それでも中学2年の頃からジュニアの全国大会に出場できるようになっていた。「全国大会に行くと同級生に負けたくないと思っていたので、『自分も練習しよう』と思うきっかけにななりました」。何の勝負にも負けたくないという「負けず嫌いの性格」が手伝って、徐々に気持ちを込めてボールを打つようになり、ゴルフを辞めたいという気持ちが無くなっていた。

中学を卒業すると多くのプロゴルファーを輩出する強豪・埼玉栄高に進学。「入学した時からキャプテンになりたいと思っていました。先輩にも負けたくないという気持ちもありましたし、最上級生になったら自分が先頭に立って引っ張りたいと思っていました」。

実際に3年生が引退した高校2年の9月から主将に就任。立場が変わり意識も変わった。「(来年は)自分がプロテストを受ける。キャプテンになったという二つの意識で練習量や内容も変わりましたね」。何ごとも自分がやることの意味を考えて行動するようになったという。その結果が「たくさんのことが一気に成長できた1年だったと思います」と25年シーズンを振り返った。

新人戦は惜しくも2位に終わったが1年の成長を存分に発揮した

新人戦は惜しくも2位に終わったが1年の成長を存分に発揮した (撮影:福田文平)

■パーオン率の向上とメンタルコントロールが奏功した

プロテストの前後に行われた「日本女子アマ」や「日本ジュニア」は思ったような結果を残せなかったが、プロテストの1次(3位タイ)、2次(10位タイ)は順当にクリアし、最終ではトップ通過を果たした。

多くの選手も同じだと思うが、プロテストは心中穏やかではなかった。「絶対に落ちたくない。落ちた姿を後輩とかに見せたくないと思っていました。同級生はうまい子が多い年代で、テストを受ける前は自分ひとりで落ちたくないなって。みんなが受かって私だけ落ちるのは絶対にいやだなと。自分の中では自信を持って受けていましたけど、本当に受かるのかなという不安の方が大きかったです」

25年の1年間のテーマは、パーオン率を上げることだった。「パーオン率が高ければ、スコアがいいと分かっていたので」。グリーンを狙うショットの考え方を変えてスコアもよくなった。「距離が近いときはピンを狙うこともありますが、基本はグリーンに乗せることを優先し、グリーンの広い方を狙う攻め方にしました。プラス、パターがよく入ってくれましたね」。パーオン率が高まる危なげないマネジメントに加えて、「パッティングのおかげでプロテストに合格できた」と話すほど、グリーン上での貢献度が好成績につながった。

技術だけでなく“心”も強くした。中学3年の頃、メンタルトレーナーのところに足を運び始めたが、しばらく間をあけて高校3年時から再び通うようになった。「プロテストの1次、2次の前の試合で結果が悪くて。『(プロテストに)受かる気がしません』っていうとその不安を取り除くために対処法や考え方を教えてもらいました」。プロテスト最終の前にも「なるようになる。受かる人は受かる」といった言葉をもらい、「おかしいかもしれないけど、じゃあ合格できるって思えました。そういうのが大事だと思いました」と前向きな気持ちで臨めていたという。

攻め方の変更やメンタルコントロールだけでなく、日頃の準備も大事にした。普段からゴルフノートをつけてラウンド後によかったところ悪かったところ、今後の課題などを記してきた。また各プロテスト会場のコースの特徴をつかみ、必要な技術を重点的に磨いてからコース入りしていた。

最終プロテスの会場となった瀬戸内海GC(岡山県)は、距離の長いパー3のホールが多い。「パー3でスコアを落とさないように、パーオン率を高くするためにユーティリティやロングアイアンのティアップをして打つ練習をたくさんしました」と先を見据えた準備でパー3を攻略した。こうした考えもキャプテンに就任してからの意識改革によるものが大きかった。

埼玉栄高校時代に主将となったことが一つの転機になった

埼玉栄高校時代に主将となったことが一つの転機になった (撮影:ALBA)

■平均飛距離250y+脱“バンザイ”で安定感もアップへ


プロテスト合格後は注目度が高まってメディアの取材も増え、所属先などのスポンサー、クラブやウェアの契約も決まった。取り巻く環境は激変。2月上旬は開幕戦に向けて冒頭に話していた「今は調子が悪い」とスイングの修正を急いでいた頃でもある。

ドライバーの平均飛距離は250ヤードで、ショット力には自信を持つ。中学生の頃から師事する重田栄作コーチとは、安定感を高めるために「フォローでバンザイしないこと」をこのオフのテーマにした。

“バンザイ”とは、ダウンスイングからフォローにかけて手首のローテーションが強くなり、手首がひっくり返った状態で手元が高くなる。後方から見るとバンザイしているように見えるからそう呼んでいる。

「フォロースルーで早めに左腕をたたみ、ヒジが耳より高く上がらないようにしています。アイアンとか短いクラブはできるのですが、ドライバーはまだ難しいです」。ただ、“バンザイ”をしているから調子が悪いわけではない。今よりも高いレベルの安定感を手にするための取り組みだ。沖縄でバンザイしていない伊藤がいたら、それはスキルアップした証拠である。

写真右のようにフォロースルーでヒジが耳より高く上がらない脱”バンザイ”が理想

写真右のようにフォロースルーでヒジが耳より高く上がらない脱”バンザイ”が理想 (撮影:ALBA)

■「うまくなりたい」18歳の将来の目標は五輪出場

はじめたころは「好きではなかった」というゴルフ。目標としていたプロゴルファーになった今はどうだろうか。「ゴルフはうまくいかないことの方が多いので、ずっと楽しいかって言われるとそうじゃない時間の方が多いかもしれない。ただ、うまくなりたいと思ってずっとやっている。そこに向けての練習なら苦にならない。うまくなるために、自分が納得いくプレーを出来るだけ多くしたい」。決して“好き”ではないが、うまくなりたいという感情が勝っているためボールを打ち続けている。

伊藤の言う納得いくプレーとは? 「ショットもアプローチも自分が打ちたいとイメージした通りに打てたら、やっぱり気持ちいいです。その回数が増えたら、自然といいゴルフにもつながってきます。やっぱり自分がやりたいゴルフができないと、なにもできないしスコアにもつながらない。納得のいくプレー=いいスコアだと思うので、それを多くしたいです」。結果的にベタピンに寄っていても、自分がイメージしたショットやアプローチでなければ納得できないという。

このオフにラウンドをともにしたツアー通算6勝で高校の大先輩でもある渡邉彩香の言葉に大きくうなずいた。「『自分のイメージ通りに打てないと、やっぱり成長できない。“あっ、寄っちゃった”だと進化しない。ミスしても自分が思った通りに打てていたら、ただ考えていたことが違ったんだと考えている』とおっしゃっていて、本当にそうだなと思いました。自分の思った通りのショットが打てないと、あまり気持ちよくないですから」。渡邉だけでなく第一線で活躍する選手がよく口にする言葉だ。1打1打のこだわりがここまでの伊藤を作り、これからも強くすることになる。

まもなく迎える開幕戦。不安を抱えながらのスタートになりそうだが、プロテストも不安を乗り越えて合格をつかんだ。QTの結果により6月の「ニチレイレディス」までの出場も約束されている。スイングは修正中だが、パーオン率を高くするマネジメントに関しては、25年通りやり続けるつもりだ。

プロとして歩む1年。これまでの自分をぶつけながらも「朝のルーティンであったり、午前午後スタートがあったり。自分の気持ちの作り方、攻め方、周りの先輩の中で自分がどうやっていったらいいのか。やりながら掴んでいきたい」と新たなステージに入り込む。

将来の目標の1つは「オリンピックで金メダルを獲得すること」という。「東京五輪の開会式を見て、華やかすごく感動しました。人に感動を与えられる舞台に立ちたいなと思いました」。日の丸を背負って人を感動させる。その目標に向かってこれから一歩を踏み出す。

■伊藤愛華
いとう・あいか/2007年9月26日生まれ、東京都出身。4歳でゴルフを始め、強豪の埼玉栄高校で腕を磨き、主将も務める。高校3年時に受けた25年のプロテストは、現役でトップ合格を果たす。ファイナルQTでは16位に入り、今季前半戦の出場権を獲得。開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」がプロデビュー戦となる。明治安田所属。

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