<ブリヂストンレディス 最終日◇24日◇袖ヶ浦カンツリークラブ 袖ヶ浦コース(千葉県)◇ 6732ヤード・パー72>
3打リードで迎えた17番パー3。1組前でプレーしていた吉田鈴がここでボギーを叩いて差が広がったが、同じ場所で入谷響にも最大のピンチが訪れた。5番アイアンで打ったティショットが、大きく右に曲がって木に直撃。林のなかからの2打目もグリーンには乗らず、そこから寄らず入らずのダブルボギーを叩いた。
「最初は“やってしまった”と思いました。最悪でもボギーでおさめないといけないところをダボにしてしまった。鈴ちゃんが1打差にいるのは間違いないと思っていた。まずいなと焦る気持ちはありました」
まるでデジャヴのように、嫌な記憶もよみがえってくる。ルーキーだった昨年6月に「ニチレイレディス」で初優勝を挙げた後、8月の「CAT Ladies」では2勝目に大きく近づいていた。首位と2打差で出た最終日は8番から5連続バーディを奪い、12番終了時点でトップに。しかし13番から連続ボギーを叩くと、15番パー5ではドライバーのティショットが大きく右に曲がった。ボールはフェンスを越え、結果ダブルボギーに。終盤6ホールで6打落とす“悪夢”を味わった。
「あのOBは精神的にショックだったし、自信もなくなった。それからは不安がある中でゴルフをしていました。初日にいいゴルフをしても、どうなるのかという不安があった。きょうも少なからずありました。前半に伸ばしていただけに、似たような点もありましたし」
そこを境に、調子が狂った。翌週の「ニトリレディス」から14試合で7度の予選落ち。決勝に進んでも思うような結果が出なくなった。「精神状態も安定しなかった。ティショットを打つたび『あっちにいったらどうしよう』と思って、振れなくなりました」。秋には積極的にシャフトのテストを行う姿も見かけたが、それも不安をかき消すための試行錯誤だった。
しかし、この日は違った。「とにかく18番のティショットはフェアウェイに打とうと思って、宣言通りできました」。オフには「来年につながるように」と気持ちを入れ替え練習に励んだ。開幕前にはウッドのシャフトを藤倉コンポジットの『ベンタスブルー』に替えるなど、その取り組みの跡はクラブ面にも見てとれる。「今年も初戦から結果が出ず、モヤモヤしてました。トップ10もここまで2回しかない」。今も“苦い記憶”を乗り越えている最中でもある。
どんな時も「笑顔」を意識したのは大きく変わった点。17番で大きなミスが出た時も、打った瞬間こそ焦りが出たが、「やっちゃったものは仕方ない」と、その後はキャディと笑いあった。18番で持ち直し、ファウェイをとらえたティショットには「成長」も感じとった。
今回と同じ袖ヶ浦で行われた2022年大会にアマチュアとして出場。入谷にとってはそれが初めてのプロトーナメントだった。その時は「“こんなに難しいコースがあるのか”と思いました」と予選落ち。まったく歯が立たなかった。ただ、今年は見える景色も変わった。さらに初優勝したニチレイレディスの会場は、袖ヶ浦カンツリークラブの新袖コースで、同クラブにある2つのコースを制覇。なにかと“縁深い”大会だ。
ここからも目標に掲げた「年間3勝」に向かって戦っていく。師匠の中嶋常幸からは『女王を狙わないとダメだ』と厳命されてもいる。さらには、米ツアー挑戦についても「きょう優勝できたことで少し兆しが見えてきた。挑戦してもいいかなと少し思えた」という心境を明かす。今大会前の世界ランクは118位。年末の最終予選会(Qシリーズ)から挑める同75位以内も、ここからのターゲットになる。
「最後はバーディを取りたかったけど、優勝できてホッとしました。早めに2勝目を挙げたい気持ちはあった。きょうの17番の後、18番で振り切れたことが自分の中で良かったです」。同期の吉田との優勝争いを制し、2024年プロテスト合格の97期生で一番最初に勝利を挙げた入谷が、2勝目にも一番乗りした。苦い夏の記憶を塗り替える、大事な1勝になるはずだ。(文・間宮輝憲)
