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ママさんプロがツアーの新勢力となる可能性は? 4人が出場した開幕戦は全員が予選通過【現地記者コラム】

現地で取材をした記者が目の当たりにしたママさんゴルファーの奮闘。そこで感じた、さらなる可能性とは?

所属 ライター
臼杵孝志 / Takashi Usuki

配信日時:2026年3月11日 07時30分

8日に終えた、2026年の国内女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」は昨季の年間女王・佐久間朱莉が制した。若手が主力となる最近のツアー代表格といえる若き女王だが、若い力の台頭は重しとなる中堅、ベテラン勢に元気があれば、さらに意義と意味のあるドラマになると思っている。

【写真】夫婦二人三脚で戦っています!

若手ばかりではジュニア選手権みたいだし、中堅、ベテランばかりだと華やかさに欠け、失礼ながら閉塞感も否めない。世代別の勢力が絶妙に配置されていれば、ツアー全体も盛り上がる。

その可能性を先週の開幕戦には感じた。産休・育休制度を利用し、しばらくツアーを離れていた33歳の福田真未、38歳のテレサ・ルー(台湾)が復帰し、昨年12月の最終QTを18位でクリアした40歳の横峯さくら、同33位で36歳の一ノ瀬優希という4人のママさんプレーヤーが出場し、全員が予選を通過した。大会期間中には発信することができなかったが、これはなかなかのエポックだった。

昨年7月に長男・蓮くんを出産したツアー通算2勝の福田は24年7月の「大東建託・いい部屋ネットレディス」以来、約1年8カ月ぶりの復帰戦で46位に入った。24年9月に長男・怜央くんを授った通算16勝のテレサは47位。21年2月に長男・桃琉くんを出産して同年6月に早期復帰した元賞金女王の横峯は42位、20年と24年に出産を経験して2人の子どもを育てる通算3勝の一ノ瀬はトータルイーブンパーの26位と奮闘した。

横峯はママとなってからツアーに帰ってきて6年目、一ノ瀬は最初の復帰から5年目のシーズンをそれぞれ迎えた。福田とテレサは新米ママ。3日目に一ノ瀬と同じ組で回ったテレサは「どういうふうにツアーに出ているのかとか、いろいろ教えてもらった」と子育て談議に花を咲かせたという。昨年は7月の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で優勝争いを演じて7位に入り、下部のステップ・アップ・ツアーでは初優勝も果たした一ノ瀬は「話し相手が増えてうれしい」と2人の復帰を喜んだ。

4人も利用した日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の産休・育休制度は、1974年に日本プロゴルフ協会(PGA)から独立した当時からあったという。JLPGAによるとトーナメント規定で出産日から起算しての育休期間が最大36カ月になったのは1995年の改定からで、94年の規定は「申し出た日から18カ月を限度とする」だった。子育ては1歳過ぎからが本番。台湾と日本を往復する生活のテレサは「出産前は体力的にツアーには戻れないかもと思ったけど、3年という期間はすごくありがたかった」と話した。

母親となった選手を迎える態勢も少しずつながら、整ってきた。JLPGAは23年から住友商事と共同プロジェクトでツアー会場に託児所を開設。「出産・育児期にある選手が安心して競技に臨める環境整備」を目的として、昨年は前年から2つ増えて、レギュラーツアー7、ステップ・アップ・ツアー3、QT4の計14会場に託児所を設けた。レギュラーツアーでは、「アース・モンダミンカップ」と「資生堂・JALレディス」が大会独自で設置している。だが、この2つを加えても託児所があるのはツアー全体の4分の1にとどまっている。

現状は夫のサポート、夫婦の互いの親などの協力がないと、本格的に復帰できない。今週は0歳児から受け入れ可能の保育園に預けて復帰した福田は「子育ては人任せ。ゴルフばっかりと思われているかもしれない。いいのかな…と思ったりもする。周囲の方にお世話になりながらだけど、子育てとゴルフを両立していきたい」と話した。復帰に向けて背中を押してくれたのは先輩のママさんプロたち。「横峯さんを見て、子どもを産んでもゴルフを続けていいんだと思った。結婚、出産を考えている選手のために私も頑張らないといけない」と意を強くしていた。

妊娠7カ月で出場した20年の「TOTOジャパンクラシック」で横峯は、「日本のツアー会場には託児所がない。ぜひ、用意してほしい」と訴えていた。15年から7年間、米ツアーに軸足を置いて戦った。米ツアーには託児所が日常にある。「向こうにはママさんゴルファーが普通にいる。結婚しても活躍している。考えが変わりました」。

桃琉くんは母に面倒を見てもらい、キャディを務めた夫の森川陽太郎さんとの開幕戦。「理解はしてもらえるようになった。でも、まだ全然足りない。実現するのは5年後、10年後かもしれないけど、今、声を大にして言わないと5年後も10年後もない。」。14年に結婚。14年を最後に優勝から遠ざかっている通算23勝の実力者は「声が届かないのは成績が悪いから。発信力を強くするためにも結果を出していきたい」と言葉を強めた。

ツアー会場に託児所があれば、大会期間中も子どもに会える。母である選手には家族の存在が力となり、子どもは寂しい思いをしなくて済む。昨年は延べ18選手が利用したという。託児所が増えて、利用者も増えていけば、ママさんプロが若手を脅かしていくかもしれない。

出産を経験した選手の優勝は過去6人いる。最後に勝ったママさんプロは21年の若林舞衣子だが、5人目から6人目となるまでに17年も要した。ダイキンに出場した4人のママたちは異口同音に「これからの選手のためにも頑張りたい」と話した。ロールモデルを目指す新しいシーズン。4人以外にも、24年に双子の男児のママとなった通算14勝の有村智恵は昨年4試合に出た。昨年10月に男児を出産した元女王の上田桃子も復帰を模索しているだろう。“大型ルーキー”も控えるママさんプロたち。託児所に代表される環境が整えば、ツアーの一大勢力となる可能性は十分に秘めている。(文・臼杵孝志)

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