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通算29勝のレジェンドから授かった“心技” プロ3年目の仲村果乃が悲願の初V「先生越えの30勝が目標」

仲村果乃が逆転でツアー初優勝をつかんだ。

所属 ALBA Net編集部
小高 拓 / Hiromu Odaka

配信日時:2025年11月3日 08時30分

樋口久子(左)とカップを掲げる仲村果乃
樋口久子(左)とカップを掲げる仲村果乃 (撮影:米山聡明)

<樋口久子 三菱電機レディス 最終日◇2日◇武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)◇6690ヤード・パー72>

先週の「マスターズGCレディス」で予選落ちに終わったプロ3年目の仲村果乃は、オーバースイングすぎることが気になり、師匠の元を訪れた。ひと通りレッスンを受けたが不安を残したまま埼玉入り。「先生には『大丈夫』って言ってもらえました。先生の言葉が一番自信につながる」と背中を押す言葉を信じた。

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アドバイスは効果てきめんだった。首位と3打差の4位タイで予選通過すると、最終日は前半2つ伸ばすと上位陣が足踏み。11番、12番の連続バーディで首位に立ち、15番パー3では「優勝を確信できた」という9メートルのバーディパットをねじ込む。18番パー5は3打目を1メートルにつけて2位に2打差をつけてツアー初優勝を遂げた。

仲村の背中を押した“先生”は、1988年の賞金女王で、ツアー通算29勝の吉川なよ子である。京都府内の練習場が同じ縁で、仲村が懇願して高校1年生の時から師弟関係が始まった。

吉川の指導のもと力をつけて、高校時代には全国大会にも出場するなど成績が出るようになった。プロテスト挑戦2度目の2020年度は、2打差で不合格。「そのときは落ち込んで、ゴルフをやりたくないぐらい落ち込んで」。泣きじゃくる弟子に先生は「落ちたからといって死ぬわけじゃないんだから」と声をかけて、再起を促す。再出発から2年後の22年に、4度目の挑戦で合格をつかんだ。

もともと飛距離よりもショットの正確性で勝負するタイプ。ツアー2年目の今季はさらに精度に磨きをかけると、春先の「パナソニックオープン」で3位タイ、「ブリヂストンレディス」で5位タイと上位フィニッシュ。7月の「ミネベアミツミレディス」と「明治安田レディス」では優勝争いの末、2戦連続2位タイ。優勝まであと一歩の戦いを見せたが、早々の初シードを確定させていた。

初優勝が近い存在と目されていたが、9月以降、トップ10入りは一度もなかった。先週、レッスンを受けに行った際に先生からは「トップを変えるのはどうだろう」と難色を示された。それでも「私は妥協した感じで今シーズンを終えたくなかったので、どんな結果でもいいからやりたい」と直訴してスイングにメスを入れた。

仲村が気になっていたのは、「トップで左側からヘッドが見える」ほどのオーバースイングで右ワキ腹が伸びて、ダウンスイングでのクラブの入りに安定感がなく、持ち味の正確性が発揮できていなかった。

スイングを修正する際に先生からは「大げさにやらないとダメだよ」といわれており、今回も「ハーフショットぐらい」の極端なイメージでトップスイングの改善を行った。

初日はフェアウェイキープ率50%、パーオン率55.6%にとどまった。「不安感があったので、大げさにやり切れていなかった」と、2日目以降はさらに大げさにしてみた。「トップを小さくすることでリズムがあいやすくなりました」と悩みは改善されて、2日間でフェアウェイを外したのは2回、パーオンを逃したのは3回と持ち味を生かす形で優勝を手繰り寄せた。

先生は技術面だけのサポートではない。夏場に2戦連続で優勝を逃している。勝ち方を知る先生に、勝つための心得も聞いていた。「自分からつかみにいかないこと。前に前にいきすぎない。必ずチャンスはやってくるから」。自ら攻めに行って自滅するパターンはよくある。仲村は淡々と「自分のプレーを楽しむ」ことを心掛けて普段通りの攻めを貫いた。淡々とバーディを重ね、15番で長いパットが入ったのは、前に行きすぎないことの結果であった。

吉川は1973年に日本女子プロゴルフ協会へ入会し、プロ歴50年以上のレジェンド。大先輩でもある師匠について「29勝もされていてすごいプロだと思うんですけど、みんなと同じスタンスで物事を考えてくれる。謙虚でスゴイ。人間的に大好きです」。

優勝直後に電話で報告すると大喜びで涙を流していたそう。普段から「私(の勝利数)を超えて」と言われており「先生を超す30勝することが目標です」ときっぱりと言い切る。

ウィニングパットを沈めたパターは高校1年生の頃に「果乃のストロークをマネしたらこれが1番入った」と師匠がプレゼントしてくれたモノ。ほかのパターに替えることもあったが、「やっぱりこれに戻ってくる」とオデッセイ『オーワクス1W CS』は先生との絆であり、このパターで勝利を積み重ねていく。(文・小高拓)

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