そうした状況は日に日に悪化し、ついに38歳のベテランは7月に大きな決断を下す。「持ち球であるドローのフックが強くなって、ランが出て飛び過ぎたりして同じ番手でも15ヤードくらい距離のばらつきが出てしまった(知姫)」と持ち球をドローからフェードに変更。それが奏功して本来のショットを取り戻し、今回の優勝へとつながった。この変更を辻村氏は「ドローからフックになったのをリセットするフェード」と表現する。
「知姫さんの真骨頂は精度の高いダウンスイングです。ヘッドが下から入ることだけは嫌がります。ですが、不調時はどうしてもヘッドが下がっていました。そこでフェードボールにすることで、クラブを一直線に振り下ろせるダウンスイングを取り戻しました。クラブが下から入っていては安定したフェードボールが打てません。だからフェーダーは否が応でもクラブを上から入れることとなる。その訓練を積んだことで本来のクラブを上から入れるスイングを取り戻しました。リズムの良さ、体重移動の上手さは折り紙付きですから、そこさえ間違えなければ、という感じ。しっかりとクラブが上から入ってくる知姫さんらしいスイングを取り戻し、ショットの調子は上を向きました」
「また、フェードにしたことで気持ちよく振れるようになったことも今大会に大いに奏功したと思います。プロゴルファーはグリーンをオーバーするような“飛び過ぎること”を恐れる。そこでグリーンでボールを止められて、縦の距離感が合いやすいフェードにしたことで自分のリズムで振れるようになり、タイミングも良い時に戻ってきた。難コンディションでも気持ちよく振れるから、ショットは曲がらないし、グリーンをキャッチできる。そしてフェードにしたことで、フェアウェイを外したときのラフからのショットでの精度が上がったことも勝因の1つです。どんなドローヒッターでも深いラフに入ったときは、フェードボールを打つときのように“上からカット目”にクラブをボールに入れますから、今大会の難しいラフにもしっかりと対応できていました。72ホール目のラフからのショットは完璧と言ってもいいくらいの内容でした」
■女子ゴルフの変化を感じたメジャー 「ボールを止められる技術」が必須に
そんな知姫に加えて2位のイ・ミニョン(韓国)、4位の比嘉真美子はフェードヒッター。また3位の東浩子、4位の川岸史果、そして連覇を狙った鈴木愛はドローとフェード(フェード系のストレート)を打ち分ける選手。トップ5に純粋なドローヒッターは4位の柏原明日架だけと言う結果に。辻村氏も「女子のゴルフが変わってきた」と話す。
「選手にパワーが付いたこと、そして道具の進化に伴い、コースセッティングにも変化が起きました。結果、ボールを止める技術が今まで以上に求められるようになってきています。ドローではボールコントロールが難しいセッティングも増えてきました。ドライバーは距離を出すためにランが出やすいドロー、2打目以降は止めるためにフェードと言った打ち分ける選手も以前よりも多くなってきたなぁと。今大会はそんな“女子ゴルフの変化”を感じたメジャーでもありました」