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劇的なパー4イーグルが“決勝打”に 364日ぶりVの河本結が唯一“悔やんだこと”「美夢有ちゃんと…」

今季初優勝をつかみとった河本結の“心残り”って?

所属 ALBA Net編集部
高木 彩音 / Ayane Takagi

配信日時:2025年8月11日 07時37分

今季初優勝を挙げた河本結だが、ある心残りが…
今季初優勝を挙げた河本結だが、ある心残りが… (撮影:米山聡明)

<北海道meijiカップ 最終日◇10日◇札幌国際カントリークラブ 島松コース(北海道)◇6642ヤード・パー72>

26歳の河本結が、昨年の「NEC軽井沢72ゴルフ」以来となる364日ぶりの優勝でツアー通算3勝目を手にした。この勝利を河本は「“やったー!”という気持ちと、不思議な感じでした」と表現する。

【写真】河本結のドライバー痕はこうなっていた!

「バーディチャンスが少なかった。今季一番少なかったと思う」というのが、この日の感想。「今週よりいいゴルフをしていても勝てないこともありました。できる限りのことをやった、その結果で勝った。『あれ? 勝っちゃった…』という。これが“勝つ”ということなんだな、と…」。これまでにない感覚でつかんだ1勝だった。

決定打になったのが、後半15番パー4でギャラリーを沸かせた157ヤードの2打目だった。フェアウェイ左サイドから左風の左ピン(ピン位置は左から6ヤード)、さらに左の木がややかかる難しい状況。グリーンは右に傾斜しており、フェードヒッターの河本にとっては「頑張って左に出さないといけないショット」だった。

すると6番アイアンで「10ヤード近く左に打ち出した」という木すれすれを通る一打は、グリーン左手前のエッジに落ちると、傾斜を伝ってそのままカップイン。「勇気を持って打っていった“ご褒美”というか、すごいラッキーだった」。入った瞬間は見えなかったが、ギャラリーの大歓声で状況を把握。両手をあげて飛び跳ねながらよろこび、キャディの小藪誠人氏と握手して歓喜を分かち合った。

それまで13番で鶴岡果恋と首位に並ぶも、14番でボギーを叩いて後退。しかし、この劇的イーグルで単独首位に浮上した。「うれしかったです。でもすぐに“無”の状態に戻りました。とにかく『無、無、無』っていう状態でやっていた。何位になろうが、スコアがどうだろうが、相手は関係なく、1打1打に集中していました」と、気持ちを切り替えて次のホールに向かっていた

上がり3ホールをパーでまとめ、1イーグル・3バーディ・1ボギーの「68」でフィニッシュ。クラブハウスリーダーとして結果を待った。1打差で追っていた後続の鶴岡、最終組の森田遥はともに最終18番でバーディパットを外し、追いつけず、河本の優勝が決まった。

先週のオープンウィークは「プロ8年目にして、初めて5日間クラブを握らなかった」という。4試合前の「資生堂・JALレディス」は熱中症、続く「ミネベアミツミレディス」では腰痛で棄権が続いた。それでも直後の「明治安田レディス」で、最終日に「66」をマークするなど2位タイに。今季6度目のトップ3入りを果たしたが、優勝には届かなかった。「最近の試合では、もっと自分の思うようなゴルフができたなって。大東建託とか、棄権した試合もあった。『心に栄養を…』と思って」。トレーニングは続けながらも、ゴルフから完全に離れ、“夏休み”を満喫した。

その選択が“吉”と出たようだ。「初日のスタートホールでティショットを打つ前」から、勝利への確信があった。「リフレッシュしてきたし、最高に今を楽しんでいるし、準備もできていた。『どうしよう、今週、私勝っちゃうな』と」。コースに入れば「優勝よりも、このティショットを真っすぐ打つ、このセカンドショットをどう打つか」ということだけを考えた。イーグルを奪っても頭に浮かんだのは“優勝”ではなく、次の一打。無心でゴルフを楽しもうとする気持ちが、勝利を呼び込んだ。

河本が考えるゴルフは、単なるショットの技術だけではない。ショット、パッティング、アプローチなど、それぞれの「技術力」も必要だが、それ以上に「メンタルコントロールや時間の使い方、スコアを作るための技術」を重要視する。例えば、首位と4打差で迎えた最終日は、朝は強く雨が降り、ティグラウンドの位置も変わるという難しい状況だった。単にその状況を受け入れるだけでなく、「どう読むか」、「どう対応するか」、「4打しかない、と思うのか」という思考も求められる。「そういうメンタルもゴルフには必要」と話す。

そして最終日を迎える前の河本の気持ちは、差は“わずかに”4打…だった。「あしたは風が吹くし、雨も降る、セッティングも変わる。自分はついているなと思いました。このセッティングや天気ならチャンスしかない」。3年前からメンタルコーチをつけ、多くの本を読み、気になった言葉はノートに書き留め、特に心に響く言葉はスマートフォンのロック画面に設定することを、意識し続けている。こうした積み重ねを今季の好成績につなげている。

この優勝については「うれしい。そのひとことにつきます」と思うのはもちろんだ。ただ一方で、「悔いが残るとしたら…」と唯一の心残りを明かした。それは、先週の海外女子メジャー「AIG女子オープン」(全英女子)で米ツアー初優勝を果たし、今大会に“凱旋出場”していた山下美夢有と一緒に回れなかったこと。

大会前の河本は「優勝したい。あと美夢有ちゃんと最終日に同じ組で回ること」と目標を掲げていた。「初日はスコアが近かったので、2日目は一緒に回れるかなと思っていたんですけど…」と残念そうに振り返る。

そんな山下が今季日本ツアー初戦に選んだ大会で勝てたことに対し、河本は「疲れもあるだろうし、今は本気の実力がないと思うので、勝ってうれしいという気持ちは正直ありません」と率直な胸の内を明かす。「ただ、一緒に回りたかったし、ゴルフを見たかった」という思いが強い。

目標は「日本でまずは年間女王になること」。今回の1勝で200ポイントを獲得し、メルセデス・ランキングも4位まで浮上した。「意識しているのは平均ストロークを60台にして1位になることだけ。それが全てだと思っています」。ちなみに今大会終了時点の平均ストローク『70.2』は、ツアー1位の成績だ。

シーズン終了時に“女王”の椅子に座るため、ここからも技術のみならず、メンタルも磨き続ける。冷静かつ自信に満ちた精神状態を保ちながら、後半戦も戦い続ける。(文・高木彩音)

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