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ツアーデビュー戦の初日は苦い結果に 義足ゴルファー・吉田隼人は14オーバー発進「浮き足だっていました…」

今大会がプロデビュー戦となった義足ゴルファーの吉田隼人は、ツアーの雰囲気と雨でぬかるんだ地面に、いつもの力を発揮できず最下位発進となった。

所属 ALBA Net編集部
河合 昌浩 / Masahiro Kawai

配信日時:2023年6月9日 08時00分

最下位発進の吉田隼人は、2日目にパープレーを目指す
最下位発進の吉田隼人は、2日目にパープレーを目指す (撮影:米川昌俊)
吉田隼人のキャディを務めた有迫隆志さんも障がいを持つゴルファー(左上肢機能障害)。吉田とは長い付き合いでこの日のプレーを後押しした

吉田隼人のキャディを務めた有迫隆志さんも障がいを持つゴルファー(左上肢機能障害)。吉田とは長い付き合いでこの日のプレーを後押しした (撮影:米川昌俊)

<ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 初日◇8日◇麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県)◇6809ヤード・パー72>
 
「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」の大会名にある「チャレンジド」は障がい者のことを指し、挑戦する人を応援する意味があるという。そして今大会では「チャレンジドゴルフトーナメント」の名のとおり昨年の「日本障害者オープンゴルフ選手権成績」の優勝者に出場権が与えられた。

その権利でツアーに初挑戦したのは吉田隼人。1999年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足以降、日本ツアーの単独開催で障がいを持つ選手が参戦するのは史上初である。
 
「スコアの目標は昨年のカットラインの4アンダー。それを突破して予選通過を目指します」と前日に言っていた吉田だが、降り続く大粒の雨の中のラウンドは義足というハンデを背負った吉田を苦しめた。結果は14オーバーで最下位だった。
 
「足が重かったです。気をつけながら頑張ったのですが、力が入ってしまいました」と話したように、雨の悪条件に加え、憧れのツアー出場ということで、それが余計なリキミを呼んでしまったようだ。
 
「ちょっと浮き足立っていました。アマチュアになりすぎていたようです。WBC決勝戦のときの大谷翔平選手じゃありませんが、憧れを捨てて食いついていかなければいけませんでした。足が重くなったというのも、まだまだ未熟なところです」
 
吉田は右足を切断している。23歳のときに右足がつぶれる交通事故に遭い、接合手術をしたものの感染症を発症してしまい、太モモの半分から先を切断することになった。ゴルフは義足を装着してプレーするのだが、雨に濡れると装着部分が滑ってしまうという。またぬかるんだ地面は、踏ん張ることが難しいともいう。だが吉田は、そんな言い訳を自分からは口にしなかった。
 
ゴルフをやり始めたころは、子どものころにやっていた野球と同じようなものだろうと高をくくっていた。ところが「バットと違ってゴルフのクラブは先っぽで打つ」ためボールが遠い。最初は右プッシュの球ばかり出ていたという。そこで「アウトローに来た球を、3塁線に引っ張る感覚で打つ」ようにした。「ゴルフでいうなら、インサイドから下ろしてインサイドに振り抜いていく感覚」。これで上達していったという。
 
このときに大事なのは左サイドのカベと腰の回転だが、吉田は右太モモから下を切断しているため、体の回転に重要な役割を担う右ヒザがない。だから吉田は、独自に体の動かし方を考えた。
 
「正面に向かって左ヒザを出すようにしてバックスイングするんです。ダウンスイングからフォローでは、左ヒザを逆に後ろに引くようにして左足を伸ばしていきます。こうすることで自然に左腰が回ってくれます」
 
この下半身の使い方と筋力トレーニングにより、吉田のドライバー飛距離は300ヤードまで伸びた。だが、その磨き上げたスイングが、この日の雨の中ではできなかった。「冷静に考えれば打ちやすいところに打っていくマネジメントが足りなかった」と吉田は振り返るが、初めてのツアーで不安材料だらけの雨のラウンドでは、どうしようもないことが次々に立ちはだかってきたのだろう。
 
大会2日目は晴れ予報。この日の悔しさを一気に晴らして、300ヤードドライブを見せることができるか。「きょうは前半だけで10オーバー。悔しいのであすはパープレーで回りたいです」と意気込む。決して尻込みをしない、言い訳もしない吉田の姿勢は、この大会の「挑戦する」というテーマそのものだった。(文・河合昌浩)

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