電車で最寄りの駅まで行き、ゴルフ場のクラブバスに乗る。運転のストレスがなく利用する人も多い便利なシステムだ。しかし、そんな当たり前がなくなる可能性が浮上していると、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が語る。
高校の部活の生徒を乗せたマイクロバス事故のニュースが流れたのはGW中のこと。亡くなった生徒もいて、運転手が悪いのか、手配したバス運行会社に問題があったのか、学校の責任はないのか、と連日大きく報道されました。
そのニュースを読んだり見たりしながら、消えつつあるゴルファーファーストのサービスのことが僕の頭の中でリンクしたのです。
都会でも、地方でも、路線バスの廃線や夜間運行の減便がニュースとして年に何回も流れるようになりました。原因は、利用者の減少だけではありません。そもそも採算が合っていないバス路線のほうが多いわけで、それは近年に急増したわけではないからです。
最近になって廃線や減便が増えた原因の1つは、ズバリ運転手不足です。高齢化と定年による減少。長時間労働、低賃金、運転免許を所持しない若者が増えたことで、なり手がいない。都内のバス会社でも、運転手の日給は1万円程度で、勤務日は多くて20日とのことです。家族がいたとしたら、生活もままならない実態もあるようです。
この運転手不足問題、実はゴルフ業界にも大きく影響しています。昭和の終わりから平成が始まった頃、いわゆるバブル経済で浮かれていた日本では、ゴルフコースの最寄り駅周辺では、朝と夕方に渋滞が起きることが珍しくありませんでした。ほとんどのコースに送迎バスがあって、電車が駅に到着する時刻にお客様をピックアップするために送迎バスが駅に押し寄せたからです。
乗り遅れた人は、コースに電話をして、もう一度迎えに来てもらうか、タクシーでコースに向かいました(領収書を出せばコースがタクシー代を負担してくれるケースも当たり前にあったのです)。
お酒を飲むのが好きなゴルファーにとって、運転をせずに電車でゴルフに行けるのは理想的な手段です。行きも帰りも電車飲みができますし、ゴルフコースでも飲酒運転を気にせずにお酒が飲めるからです。
令和になって、以前40台以上のバスが押し寄せていた関東のJR線の駅で同伴者をピックアップしたことがあります。そこには土曜日なのにバスは2台しか送迎に来ていませんでした。1台はコース名がペイントされていましたが、もう1台は無地というか、普通のマイクロバスでした。興味が湧いて、どのコースのバスかを聞きに行き、びっくりしました。なんと、3つのコースが共同で使っていたのです。
運転手さんは、名前の書かれたリストを持っていて、予約した人だけを確認して乗せ、それぞれのコースに降ろして、帰りも逆に拾って駅まで送るということでした。
それから4年が経っています。このコラムを書くために、それぞれのコースに電話で確認しましたが、名前入りの送迎バスだったコース以外は、もう送迎バスはない、ということでした。どうやら乗り合いの送迎バスも維持できなかったようです。
ゴルフコースの場合は、運転手不足だけではなく、バスを維持する費用などを負担することが不可能な状況になっていることもトドメになった、と分析する賢者もいます。
ゴルフコースの送迎バスがなくなる日へ向かうカウントダウンは、止まりそうにありません。ニュースで、路線バスの廃線や減便の報道があるたびに、カウントは進むのです。
昭和からゴルフをしている人にとって、それはとても寂しいことですが、出来る限り語り継いで、送迎バスというすばらしいサービスがあったことを忘れないようにしたいと思うのです。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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