ツアーボールで不動の地位を築く、ブリヂストン『TOUR B X/XS』。タイガー・ウッズが「間違いなく初速も上がって風にも強くなり、グリーン周りでもスピンが増えた」と絶賛する新作が21日に発表された。契約プロたちが千鳥・ノブさんに漏らした「本音」や、開発者に聞いた話からその進化について深掘りしたい。
■「変えないでほしい」という称賛を裏切る進化
22年作のリアクティブiQ・ウレタンカバーで「乗り感」を高め、24年作で衝撃吸収材を加えたカバーで「アプローチのディープ感」をより追求した『TOUR B』は、プロの間で「完成形」と評されていた。事実、音にこだわるタイガーがややソフトになったXとXSを併用し、多くのプロが「これ以上変えないで」と声を揃えたそう。
だが、開発陣は歩みを止めなかった。「現状に不満はないが、強いて言えばこのアプローチ性能を維持したまま、フルショットでさらに風に強い強弾道が打てればもっとコントロールできる」との声から開発方針が具体化。これまでの「飛んで・止まる」の先を行く「運ぶ・寄せる」という感性領域に踏み込むことになった。
■「デュアルSTテクノロジー」でコアと2層目を刷新
核となるのが「デュアルST(Strong Trajectory=強弾道)テクノロジー」で、コアと2層目が激変しており、まず「ST・ハイドロコア」から見ていこう。フルショットでの高初速・低スピンを司るコアには、100種類以上の試作を経て辿り着いた「ゴム製品には通常使用されない新薬品を配合した」と開発担当者は語る。
「ゴムの強度を上げれば反発が落ち、反発を求めればスピンが増えて風に弱くなる。この二律背反を打破するために、材料メーカーとの共創で分子レベルの改良を行いました」。結果、ハイドロコアによる大きな変形を維持しつつ、その変形を瞬時に戻す“復元力”を得て強度アップした。
このコアの誕生で、2層目にも同社史上最高剛性の「ST・インナーカバー」を採用でき、より初速アップに繋がるうえで風に強い強弾道を実現。さらに、この2層目には高比重な「無機充填剤」を配合した。これが、もう一つの目玉である「高MOI化」にも繋がっている。
■前作からツアーボールで最も「高MOI」
ノブさんは「ボールにもMOIなんてあるんですか? クラブだけの話かと思ってた」と驚いていたが、同社の開発陣によれば「実は、前作の次点でも他社を含めたツアーボールの中で最も高MOIでした」とのこと。前作では「ディープ感」をアピールするために、敢えて高MOIな事実を伏せていたとか。
MOIが高くなるほど回転が解けづらく、風の中でも目標へ「運べる」直進性が増す。そして、驚くべきはグリーン上だ。「比較的速いグリーンの平らな5メートルで、他社と比較するとカップ1個分転がりが伸びる、あるいはラインがズレにくい検証データが出ました」(検証担当者)。
実際、2025年1月から「パターの感覚が一番大事だ」と同社とボール契約を結んだハリー・ホールは、昨季のPGAツアーのあらゆる「パッティング」スタッツで1位に。アマチュアでも、競技者なら「最後のひと転がり」で同社ボールの転がりの良さを実感する人もいるはずだ。
■BSのボールは「傷に強い」とプロも実感
発表会で伊藤愛花が驚きを持って伝えたのが「傷」の影響だ。「傷があるだけでロボットが打っても15ヤード曲がった」との実験結果を話すと、ノブさんは驚き「パター用にマジックで線を引いてるんですよ。これ、線を引いたら(飛行に)何か影響があるんですか?」と聞く。
開発陣は「指で触って凸凹を感じるほど厚塗りをしない限り、市販のマジック程度なら、距離が落ちたり弾道が曲がったりすることは一切ない」と回答。さらに聞くと、「5ミクロン以内の凹凸なら飛行には影響しない」と言い、カート道キックなどの深い傷は曲がりや距離が落ちるため「即替え」を推奨していた。
ただ、そもそも傷つきづらさで、他社を圧倒する同社。堀川未来夢は「他社の選手は3ホールに1回とか変えますけどブリヂストンなら1球で1ラウンド持ってしまう」と言う。メーカー的には「買い替え」してほしいはずが「丈夫に作りすぎじゃないです?」とノブさんや宮里聖志も心配していた。
■22年作より「ガツン」と来て、飛ぶし止まる
これら刷新内容を一切知らずに、昨年末にプロトタイプを記者も試してみた。『TOUR B X』を選んで打ったティショットの一発目から違いに気づいた。芯を喰ったが、他社品や前作より「重くて芯があり、球が速く、ずっと同じ高さを飛ぶ」。開発者に答え合わせで聞くと、これでも「コンプレッションは24年作と同じ」だとか。
22年作➡24年作でソフトになって感じた『X』の打感が、22年作より「ガツン」と手応えが来て、いつもより飛んで驚く。ただ、内心「こんなにしっかり系にすると、普通2打目は止めづらいはず…」と覚悟したが、ウェッジも球乗りがよく、鋭いスピンバックにさらに驚いた。練習不足の記者でコレなら、クリス・ゴッタラップだけでなく、今季のBS勢には俄然注目せざるを得ない。(編集部M・K)