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「距離より精度」小平智、PGAツアー初勝利に繋がった【2つのギア調整】

小平智のPGAツアー初勝利は日本のゴルフ界に激震をもたらしました。そして、その裏に大きなギア変更があったと明かします。データからマニアックに彼の今後を占います…。

配信日時:2018年4月19日 13時24分

国内屈指のドライバー名人は、PGAツアーでも【効率】トップクラス

「デル・マッチプレー」時点では、まだまだ短尺ドライバーが馴染んでいなかったはず…(GettyImages)

「デル・マッチプレー」時点では、まだまだ短尺ドライバーが馴染んでいなかったはず…(GettyImages)

国内男子ツアーでは、屈指のドライバー名人である小平だが、PGAツアーのスタッツを細かく見ると、平均飛距離が289.3ヤード(147位)、ヘッドスピードは49.59m/s(152位)、フェアウェイキープ率が64.73%(50位)、トータルドライビング87位

一見すると、ランク的にかなり低い数字ばかりで、「PGAツアーで戦うには飛距離が足りないのでは?」と見るゴルファーも多いだろう。だが、この数字は一部でしか無く、小平のドライバーの巧さの本質はこの数字外のところに現れている。

筆者が注目するのは出場試合は少ないものの、現在「トータルディスタンス効率」はツアー1位だという事実。

この数字は、平均飛距離から平均ヘッドスピードを割ったもので、【自分のヘッドスピードをいかに効率よく飛距離に変えられているか?】の指標と言えるだろう。
なんと、【トータルディスタンス効率】がPGAツアー1位です!

なんと、【トータルディスタンス効率】がPGAツアー1位です!

よく日本ではドライバー名人のことを「ミート率が高い人」と表現するが、「ミート率」を英語に直訳すると「スマッシュファクター」となる。このランクでは小平は96位タイ(1.49496)に沈んで見えるが、実はこの数字もドライバーの巧さを表す一部分でしかない。

というのも、「スマッシュファクター」は、ボール初速からヘッドスピードを割ったもの。そして、スマッシュファクターのランクは平均数字が高いほど上位にくるが、あくまでもボール初速を軸にした、いち目安に過ぎない。

「トータルディスタンス効率」は、実際に出した距離への効率を示す数字であり、小平は並み居るPGAツアーの猛者を抑え、この効率ランクでトップなのだ。ボール初速に対する効率を表す「スマッシュファクター」が高くても、実際の距離につながらなければ意味がないことは言うまでもないだろう。
【キャリー効率】も7位と上位!ミケルソン、ラーム、ファウラーに少し効率で及びません…

【キャリー効率】も7位と上位!ミケルソン、ラーム、ファウラーに少し効率で及びません…

また、キャリー効率のランクが7位。こちらも、【自分のヘッドスピードをいかに効率よくキャリーに変えるか?】という指標だ。短尺化を図っても、この効率ランクでPGAツアートップクラスにいることがよく分かる。

飛距離は必要。でも、精度がなければ戦えない

ラームやファウラーを抑え、【効率】で言えば、トップクラスの小平智。まだ、短尺に馴染んだばかりなのに…

ラームやファウラーを抑え、【効率】で言えば、トップクラスの小平智。まだ、短尺に馴染んだばかりなのに…

過去にPGAツアーに参戦した日本人プレーヤーは、バケモノのように飛ぶ選手たちに影響され、「無意識のうちにドライバーを振り回すようになった」と筆者はいろんな国内名プレーヤーたちの例を聞いてきた。

しかも、「無理を重ねるうちに体の故障に悩まされた」とも…。「小柄な日本人の体格じゃPGAツアーはムリ」と、誰しも一度は聞いたことのあるフレーズだと思う。松山英樹のような立派な体格を持たない小平は、飛距離を捨て、精度で戦うしかないのか?

答えはYESでもあり、NOでもあると思う。飛距離は絶対に必要だろう。だが、飛距離を求めて精度を失えば、元も子もない。上記の小平のスタッツは、直近で短尺化をして精度アップをしたデータと、それ以前のものが合わさった数字。

すなわち、まだ小平は短尺化にアジャストしたばかりの状態で【PGAツアーで効率トップクラス】という事実がある。

しかも、ショットの精度アップで、わずか参戦15試合目でPGAツアーで勝利した。もちろん、ドライバーの飛距離はプレーの一部分でしかないが、今後やみくもに飛距離アップを求めなければ、PGAツアートップの効率を持つ男として戦う未来が見える。

信頼するクラブメーカーのサポートと、屈指のドライバー精度。短尺化は今だけで、長くすれば飛距離も伸びるはず。国内屈指ではなく、世界屈指のドライバー名人へ。小平智がそう羽ばたく未来しか見えないのは筆者だけだろうか?


Text/Mikiro Nagaoka

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