「ヘッドスピードはそんなに速くないですよね」(筆者)
筒 「長岡さん、トラックマンで平均52.6m/sって、自分に置き換えてみてくださいよ。出せます?」
筆者 「いや、ムリです。マン振りでも52m/sくらいかなぁ」
平田 「トーマス選手は、かなりドライバーの振りの強度が強いタイプだと思いますよ。少なくとも9割近いスイングで振っているだろうと推測します。ロングホールなどでは確実に9割以上ですかね。先週筒さんが言っていたとおり、ロングホールでは確実にイーグルを狙いに来ますから、ドライバーの振りの強度が上がるのは当然ですが、その割には曲がらない方だと思いますよ」
筆者 「ちょっと、トラックマンのツアースタッツが去年のものですが、見てみましょうか。ヘッドスピードが52.21m/s、ボール初速は77.7m/sですね、このショットに関しては。ツアー平均データでは176.73マイル、つまり79m/sでツアーでは上から23位ですね」
筆者 「それが、281.7ヤードでツアー60位なんですよ、このトラックマンのショットデータよりも平均は落ちるようです」
筒 「まぁ、計測ホールの全てでドライバーを打つわけじゃないですし、ショットの強度のメリハリが大きいのがトーマス選手の特徴だと言えるかと。バーディ以上を取りに来るときはマン振りに近いものを見せますが、それが必要ではないときには、スイングの強度を落としてきます。普通、スイングの強度を極端に変えると曲がるリスクになりがちなんですが、トーマス選手の場合はそれがあまり変化しないタイプに見えますね。そして、それがウェッジのフルショットの巧さにも繋がっている気がします」
筆者 「というと?」
「タテ振りだと速度を下げてもインパクトが狂わない」(筒)
平田 「なるほど、それはあるでしょうね。フラットに振る選手よりも、インパクトのズレは少ないでしょうね」
筒 「トーマス選手は、スイングの大きさは同じに見えて、スイングスピードをコントロールする技術に長けていますよ。基本【カーリング】も強めでダウンブローもキツめ。インパクトでロフトを立てて当てるタイプですが、スピードを変えても当て型が変わらないので、スピン量やインパクトの強弱を絶妙にコントロールしてきて、意外に器用なタイプだと言えます。チップショットが巧いとかじゃなくて、あくまでフルショットのフレームの中でのスイングスピードコントロールが巧いタイプだと言えますね。だからこそ、ドライバーとウェッジのフルショットが大の得意クラブだと言えるでしょう」
筆者 「スイングのフルショットのフレームワークの完成度が高いと。だから、その力感のコントロールも自在にできると。だから、球が飛びすぎやすい高地のメキシコ選手権でもタテ距離のコントロールが巧いのかなぁ、もしかして…。そう言えば、15番の2オンのシーンもセカンドショットで絶妙に振るスピードをコントロールして見えましたが…」
筒 「はい、それもあるでしょうね」
筆者 「それって、トーマスが最新の『ボーケイSM7』じゃなくて、ずっと『SM5』を使うのと少しは関連しますかね?」
筒 「あると思いますよ。微妙な差ですが、『ボーケイ』は代替わりするごとにやさしくなっていますから、『SM5』の方がフレームのしっかりした人にとって、自分の意図通りに扱いやすいはずです。アマチュアにとっては逆に『SM7』がミスしても助けてくれるのですが、トーマス選手にとっては意図が反映しづらいのかもしれません」
平田 「それはあるでしょうね。長岡さん、とにかくプレースタイルも飛距離もトーマス選手は最高レベルに近づいていますよ。昨季までのように、ムラっ気があって、調子が悪いとふてくされるような態度も今年はなくなっています。だから、今後はどんどん調子の波が減ってくると思います」
筆者 「マズイなぁ…。松山英樹のライバルが、そこまで行っちゃいますか、キケンだなぁ、奴は…」
筒 「今回は、別の意味でキケンな◯◯解説になっちゃいましたね!」
Text/Mikiro Nagaoka