「後方から見ると、切り返しではっきり【カーリング】が入る」(平田)
平田 「はい。トップで真っすぐな角度だった左手首が、切り返し以降にやや曲げて【カーリング】を入れてから振り下ろします。この動作が入ることによって、フェースを開かずに入射角も抑え、インパクトロフトを立ててスピン量を落とせる技術ともつながっているでしょうね。そして、この動作自体は下半身のジャンプアップよりも幾分真似やすい動きであると言えるでしょう」
筆者 「なるほど。平田さん、これって意識ですか?無意識ですか?」
平田 「もちろん、無意識でしょう。この最高峰のレベルでここを意識している人などいないはずです」
筆者 「平田さん、例えばここで【カーリング】が入れられないとどうなりますか?」
平田 「インパクトでフェースを開きやすく、ロフトがつきやすくなるので、右への吹け球が多発して弾道コントロールに難が出て来るはずです。早い段階で【カーリング】が完成していればいるほど、インパクトまでの動作がよりシンプルに、自動化されます。つまり、あとは体を回すだけで、余計な動作を入れる必要がなくなりますね。極端に言えば、高速で体を回転させてもスクエアヒットが保証されているとでも言いましょうか」
筆者 「なるほどね。それをバックスイングから作りはじめて打つのが世界ランク1位のダスティン・ジョンソンや、世界ランク2位のジョン・ラームということですね…。ちょっと、ジャスティン・トーマスの去年のスロー動画もありますので、見てみましょうか」
「アップライトに打てるほど曲がらない」(筒)
トラックマンのツアースタッツより転載
平田 「まぁ、PGAツアーのトップレベルになれば、【カーリング】しない人の方が少ないですから。特にここ数年はその傾向が顕著になってきましたね。もちろん、程度や入れるタイミングには差がありますけど」
筆者 「筒さん、かなり上げ方がアップライトに見えますが、こんなに高く上げるメリットってあるんですかね?」
筒 「今も昔も変わりません。アップライトなタテ振りの方がサイドスピンが入りづらいのは当然でしょう。しかも、特にボールに当たった後の抜け方がアップライトというかタテ振りであることが重要です。コレが球を曲げないコツで、慣性モーメントの大きなヘッドを【カーリング】でスクエアフェースを担保しつつ、振り抜きでロフトを立ててアップライトに振り抜く。ここはウェッジも同じことですが、曲がりが抑えられるから、スピードをいくらでも上げられるスイングメカニズムです」
平田 「トーマス選手は腕が長いこともありますが、胴体の回る方向を見てください。前傾に対して水平に近く、後ろから見ると地面の水平に対してはかなりタテに肩を捻転させるのが分かると思います。この方向に実際体を捻るとよく分かるのですが、コイルがかなり強くなって、左広背筋がパンパンにコイルした状態のまま、その捻りの力をそのままスイングエネルギーに変えることができます。単純な体の回った動作範囲というより、コイルの強さや捻りのエネルギーが一旦切れたりしていないか?この辺りは形は同じに見えてもアマチュアとは歴然の差ですよ。前傾の深さにもよりますが、肩がタテに回って見える人ほど、胴体のコイルが強くなります」
筒 「平田さんのおっしゃることもわかりますが、ボクは腕をアップライトに上げるには、右肩が低い方が左腕を高く上げやすいとは思いますが…」
筆者 「単純に手を高く上げてハイトップを作っているわけじゃないんですね…。ほら、昔から腕はタテ、体はヨコといった指導がよくあるじゃないですか。それとは違う?」
筒 「分けて考えて結果的にいい位置に上がればいいですが、コイルの強さという意味では、まったく別でしょうね」
平田 「はい。一流のPGAツアープレーヤーには、体はヨコ、腕はタテなど分けて考えることはないでしょう。シンプルで再現性が高く、強いコイルを作るなら、この方法しかないという一択の結果です。そういう意味では、トーマス選手のバックスイングはお手本とも言えるかもしれません」