溝設計を1/1000mm台まで追求
モータースポーツに詳しい人でなくても「無限」という名を知っている人は多いだろう。現在もレーシングカーやバイクの領域で存在感を発揮する「無限」は、限界走行で性能を発揮するパーツを生み出す精密な加工技術を持っている。
2015年に初めてのコラボウェッジ、『TOUR LIMITED無限』を発売。2018年には「BITING BUKO MILLED」と名付けられた新形状の溝を搭載した『TOUR B XW-B』ウェッジが登場し、現在もこれらの「無限」の名を冠したウェッジを多くの契約プロが使用している。
『BRMフルミルド』は、鍛造された軟鉄ヘッドを「無限」の精密機械加工によって、ヘッド全面を削り出して成型する。「フルミルド」とはこの製法のことを指すのだ。前作の『TOUR B XW-B』までは、フェースとバックフェースまでだったが、今回はソールまで機械加工の範囲を拡大して、ソールの形状精度も大きく向上している。この機械加工の工程によって、一般的な鋳造や鍛造製法では実現できない高精度な製品を作ることが可能になった。
現在、ウェッジの溝のルールは、フェースの溝幅が0.035インチ以下でなければならないと決められている。これは約0.9mmと言われているのだが、正確には0.889mmだ。したがって、0.9mmでは違反になってしまうが、0.8mmではルール限界まで近づけたとはいえない。『BRMフルミルド』は、フェース面の溝設計値を0.889mmのギリギリまで、1/1000mm台まで追求した。
さらに溝と溝のあいだに、μ(ミクロン)レベルの微細な凹凸をミーリング加工で施している。これは前作の『TOUR B XW-B』でも搭載されているが、ミーリングの角度をさらに尖った角度にして、ボールとフェースがより噛みつくようになった。これらの加工はもちろん「無限」の精密機械加工だからこそ実現できるものだ。特殊なエンドミル(切削工具)を用いることで、ミーリング断面を微細に削り出している。