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【バケモノたちの使用ギア】本当に崖っぷちなのか? 石川遼がやろうとしていること

PGAツアーデータ・ドリブンシリーズとして、さまざまな公式データからギアとバケモノの相関関係をひも解いていく企画。今回は巷で崖っぷちだと言われる石川遼について。

配信日時:2017年6月28日 13時09分

石川遼はなぜ『GBBエピックスター』を使用するのか? 小ぶりな方が……

ミケルソン向けに作られた!?小ぶりな『GBB EPIC Subzero PM440』

ミケルソン向けに作られた!?小ぶりな『GBB EPIC Subzero PM440』

ギア的な観点で見るならば、フェースローテーションの大きい石川遼は、今季から使用する『GBBエピックスター』よりも、小ぶりで操作性のいいヘッドを使用した方が成績は安定するのでは? と筆者は思う。

キャロウェイは選手個々に合わせたプロトタイプを製作するし、小ぶりなヘッドが好みなフィル・ミケルソンには歴代モデルで小ぶりなものを提供してきた。石川遼が去年まで使ってた『XR 16サブゼロ』がまさにそれだし、『GBBエピック』も小ぶりなものを作ろうと思えば作れるはずだ。(実際、ミケルソン向けに『GBB EPIC Subzero PM440』というモデルがR&Aには登録されている)

また、石川遼の平均ヘッドスピードは117.01マイル(52.3m/s)で、松山英樹とさして変わらず、ツアー42位と決して遅いタイプではない。これが理由でスマッシュファクター値が低く出ている可能性もあり、以前に書いたとおり、石川も松山英樹と同様にボールを激しく潰すタイプのプレーヤーの可能性がある。さすれば、弾きがウリの『GBBエピックスター』よりも、ボールがくっついてコントロール性のいい他のモデルを使用したほうがいいのでは? と筆者は思う。

でも、石川遼はそういった選択をとらなかった。ここに筆者は彼のスイング改造に対する強い意思のようなものを感じてしまうのである。

石川遼が進んでいる方向は間違いないはず。ただし、時間が必要かもしれない。

直近の試合での振り抜き。これまでフェースが地面を向いていたが、フェースローテーションが抑えられつつあることが分かる(写真・Getty Images)

直近の試合での振り抜き。これまでフェースが地面を向いていたが、フェースローテーションが抑えられつつあることが分かる(写真・Getty Images)

石川が取り組むフェースローテーションを抑えたスイングというのは、間違いなく世の潮流だ。ドライバーヘッドの大型化の流れがもとに戻るわけがなく、これを使いこなすにはアームローテーションやフェースローテーションを抑える必要がある。弾道計測器のデータを日夜研究する谷口拓也プロはこう言う。

「いまのPGAツアーの選手って、みんなバカみたいに飛ばしますよね。低重心で重心距離の長いデカヘッドと低スピンになったボールで。ダスティン・ジョンソンなんて、左手甲を折ってフェースクローズにしたまま逃しながら打つでしょ? ファウラーだって、フラットな軌道だからフェース開閉が多そうに見えて、実はインパクトゾーンではヘッドは外からというか、かなり真っすぐな軌道が長くなっていて、フェース開閉も穏やかになっているんですよ。

もう、データで見ていてもみんなPGAツアーの選手はそうなっているんですよ。球を操る、曲げてFWキープするとかいうんじゃなくて、フェースが開かない状態で長いインパクトゾーンを作って、ドーンと真っすぐ飛ばしていく。昔はヘッドを遅らせてインサイドから入れてきてフェースターンしてって日本のプロは当たり前に言ってきましたけど、そんな時代じゃないんです。みんなトラックマンとかフライトスコープとか弾道計測器を持っていて、どうすれば最高の打ち出し条件を得られるか分かってます。

なんて説明すればいいのかな、インパクトゾーンのヘッド軌道がアップライトになってるんです、PGAツアーの選手はみんな。フェース向きが目標を向いた状態をできるだけ長くしているというか。だから、昔よりもはるかにヘッドが外から、フェースが閉じた状態で入れてくるんですよ。インサイドから入れるとかじゃなくて、手元よりも外にある状態で入れてくる技術が高まっているんです。弾道計測器をみんな見ていますから、クラブパスというヘッドのインパクトゾーンを可視化して、これを真っすぐするにはどうすればいいかをみんな考えているんですね」(谷口拓也プロ)
谷口拓也プロは、「ヘッドを手元よりも外側から下ろしてフェース開閉を抑える」のがPGAツアーの潮流だという(写真・岩本芳弘)

谷口拓也プロは、「ヘッドを手元よりも外側から下ろしてフェース開閉を抑える」のがPGAツアーの潮流だという(写真・岩本芳弘)

この話を聞く限り、長年石川が自然にやってきたスイングと、PGAツアーのスイング潮流が正反対だということが分かる。そして、それに石川が気づいて取り組み始めたのが今年の始めだということも。真逆の動きを体になじませながら、20試合と限られた試合の中で結果を出さなければならない。PGAツアーのバケモノたちと本気で戦うことを決意したからこそ、この難しいチャレンジに挑んでいるのではないだろうか。

筆者は勝手ながら、石川遼のことをスイングオタクであり、スイング修正マニアだと思っている。

これまでも、これからもそのスイング修正に終わりはないが、今までやってきたことと、これからやるべきことの情報量が随分と整理されてきているのではないだろうか。太い幹を見つけたが、正反対のことを自分のものにするにはあまりにも時間がかかるのだと思う。

「松山英樹と違ってPGAツアーでは通用しない」「PGAツアーを撤退して国内男子ツアーに戻るべき」など、外野が松山英樹と比べてやいやい言いたくなる気持ちも分かるが、石川遼には石川遼なりのスタイルがある。バケモノたちと本気で戦う石川遼のなりゆきを長い目で見守るべきではないだろうか。


Text/Mikiro Nagaoka

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