昨年、10月に発売された日本シャフトのUT用シャフト『N.S.PRO MODUS³ HYBRID』。スチールとカーボンを融合したという、全く新しい構造を持つこのシャフトの特性を検証。どんなゴルファーに向いているかをチェックしてみた。(text by Kazuhiro Koyama)
打ち出し角は高く、スピンを抑えたアスリートが求める弾道
高弾道で低スピン。短いパー4のレイアップにも活躍しそうな特性だ
筆者も実際に『
N.S.PRO MODUS³ HYBRID』を装着したUTをコースと練習場で試打してみた。ヘッドはウッド型UTのピン『G410ハイブリッド』。ロフト角は19度で、長さは40.25インチ。フレックスはSを選んだ。このスペックで、シャフト振動数は313cpm。Sシャフトとしては、かなりしっかりしている。
マットブラックのコスメティックは印象的だ。ヘッドのブラックと相まって、ストイックなアスリートの雰囲気を醸している。見た目はハードに、そして難しそうな印象を受けるが、持ったときに感じる適度な肉厚が、
重量級カーボンにない軽快さを感じさせる。
『N.S.PRO MODUS³ HYBRID』の弾道イメージ図。打ち出し角をしっかり確保して、落下角度を大きくしつつ、スピン過多による飛距離ロスを抑える
打ってみると、まず印象的なのが打ち出し角の高さだ。
打った瞬間から、打ち出しが高い。これはカーボンシャフト的な特徴だと言えるだろう。それでいて、スピンが増えすぎないのがいい。筆者のヘッドスピード42〜44m/s(※ドライバー換算)で打つと、先にいって伸びるような棒球になりやすく、飛距離も200y以上出ている。これなら短いパー4のティショットにも使えそうだ。
比較する意味で、同じヘッドに『
N.S.PRO 950GH NEO』を装着して打ってみた。フレックスSで、長さは39.75インチ。『
N.S.PRO MODUS³ HYBRID』装着時よりも半インチ短いが、シャフト振動数は302cpmと軟らかい。『
N.S.PRO MODUS³ HYBRID』の強靭さを裏づける数値だ。『NEO』装着の場合だと、よりスピンが入って、弾道の頂点からさらに吹け上がるような、アイアン的な弾道になった。飛距離は10y近く飛んでいなくて、シャフトの違いで弾道に明らかな差が生まれている。
全体的に剛性が高く、パワーヒッターでも当たり負けしない
スピンが入りすぎないのは、中間から先端にかけての剛性が強いためだろう。ウッド型UTを使うと、どうしてもスピン量が多くなりがちなハードヒッターでも、そのパワーを十分に受け止めて、前に飛ぶエネルギーに変換してくれそうだ。剛性が強い分、追随性が高くて操作がしやすいが、(重量級カーボンとは異なり)肉厚が薄いので、シャフトの適度なしなりやつぶれを感じやすく、スチールさながらの厚い打感になる。
UTのシャフト選びは難しいというが、筆者自身も色々試してみて、上手くいかない経験を数多くしている。アイアンと同じ重量のスチールシャフトでは明らかに重すぎて、インパクト前にヘッドが落ちてしまい、ダフリやひっかけなどのミスが出やすい。90g台の重量級カーボンを試したこともあるが、肉厚の厚さからくる手元寄りの硬さで、どうしても力みがちになるし、その割に先端部は動きやすいシャフトも多く、球筋が安定しなかった。
カーボンのような軽快な振り心地とスチールの程よいつぶれ感
筆者のような経験をしたアスリートゴルファーは多いのではないだろうか。『
N.S.PRO MODUS³ HYBRID』を装着したUTなら、そうしたデメリットを解消し、シャープに使える俊敏さと操作性に加えて、スチールのような方向安定性も併せ持っている。重量級カーボンのようなとっつきにくさや、スチールにありがちな鈍重さとも無縁だ。
ただ、重量と剛性がそれなりにあるので、一番軽くて軟らかいSシャフトであっても、ヘッドスピードは43m/s以上は必要だ。アイアンに『
N.S.PRO MODUS³』シリーズを装着して、苦もなく使えるくらいのヘッドスピードのゴルファーなら、ベストマッチするだろう。セッティングの流れから言えば、カーボン主体のウッド類とも、スチールを装着したアイアンセットとも自然とあわせやすくなり、同じタイミングで打ちやすい。逆にパワーのない人なら、同社の『
N.S.PRO 950GH NEO』や『
N.S.PRO ZELOS7 ハイブリッド』などが候補になる。
難しいとされるUTのシャフト選びを、複合シャフトという全く新しい発想で解決した『
N.S.PRO MODUS³ HYBRID』。PGAツアー選手も試しているというこのシャフトが、UTをアスリートゴルファーのさらに強い武器にしてくれそうだ。